未来をつむげない

ギリシャ再選挙、町の落書きが映し出す市民の絶望感
「首相はIMFの操り人形だ。ユーロ圏残留は死刑宣告だ。投票するな」───。国の運命を左右する再選挙を17日に控え、ギリシャの首都アテネの壁には、そんな過激な落書きがあふれている。
アテネ大学のセオドシス・ペレグリニス教授は「絶望感が背景にある。未来に希望を持てなければ、何もかも壊したくなる」と語った。
5月の選挙では、1974年の軍事政権崩壊後、実質的な二大政党制を担ってきた全ギリシャ社会主義運動党(PASOK)と新民主主義党(ND)に国民の鉄槌が下された。アテネにあふれる落書きには既成政党への嫌悪感があふれている。
白と黄色に彩られた貨幣博物館の壁には、黒字で「投票所に火を点けろ」という落書きが踊り、「議会を燃やせ」という文字も見える。また、無政府主義運動のシンボルである円で囲んだAというマークも、町の至る所で見られる。
警察はより深刻な犯罪の増加に追われ、そうした落書きの多くは見て見ぬふりをしている。しかし過激な落書きは、ギリシャ社会が破綻に向かい始めている象徴にも映る。落書きがツタのように「増殖」した場所では、野良犬がたむろし、麻薬常習者が大っぴらに薬物を使っている。
洗練された落書きも一部にはあるが、ほとんどは口汚く下品な言葉だ。そして、観光客にとっては残念なことだが、歴史的建築物も例外ではない。
オーストラリアからアテネを訪れたデビッド・グローブさんは「どこもかしこも落書きだらけだ」と嘆く。目抜き通りに立つ教会を写真に収めながら、「不愉快だ。悪意に満ちた心ない破壊行為に過ぎない」と語った。
多くのギリシャ人も落書きには嫌悪感を示すが、同時に、現在国が抱える苦痛を映し出しているという意見も少なくない。ホテル受付係のカタリナ・アダムさんは「私たちが生きているのは攻撃的な時代だ。アートは人生を表すというのなら、落書きが攻撃的になるのも無理はない」と理解を示す。
アテネにあふれる落書きに1つの共通したテーマがあるとすれば、それは絶望だ。
市の中心部にある市役所庁舎の外には、ギリシャ神話で知恵を象徴する女神で、アテネの守護神でもあるアテナの像が立っている。この像の目の部分がペンキで黒く塗り潰されているのが、現在のアテネ市民の心境を象徴しているのかもしれない。
(ロイター - 6月15日(金)18時12分)

未来を信じなければ、耐えることもできない。
終わってるよね。