さあ、思い出していただきましょう

【日本代表】デンマークを一蹴! 日本代表は短期間で“確変的”成長を遂げた!
ワールドカップに限らず、こうした国際大会を取材していると、最初はまるで冴えなかったチームが、不思議とどんどん強くなっていくことがある。
とはいえ、それがまさか、今回の日本代表に起ころうとは考えてもみなかった――。


立ち上がり、日本はデンマークにおもしろいようにパスをつながれた。
しかも、オランダ戦のような無為な横パスではなく、クサビの縦パスあり、サイドへ展開するワンタッチパスありと、効果的なパスをつながれまくったのである。
まして、そこからクロスを入れる展開までをきっちり作られては、失点するのは時間の問題に見えた。
ところが、終わってみれば、日本が試合のペースをデンマークに明け渡したのは、この試合開始早々わずか10分程度の時間だけだった。
FK2発で効率よくゴールを重ね、失点はPKによる1点のみ。1点差に迫られても、危うさはまったく感じられず、ダメ押しの3点目まで奪って突き放した。
立ち上がりの悪い流れをシステム変更によって乗り切ると、日本はほとんど危なげなく1試合を戦い抜いたのである。
勝たなければならないデンマークに対し、日本は引き分けでもいいというアドバンテージは大きかった。
それにより前がかりになったデンマークは、DFラインと中盤との間に広大なスペースを作った。日本がそこを利用し、カウンターで攻め返すことのできた要因である。
また、2点のリードから1点を返されても慌てずに済んだことは、このアドバンテージゆえであろう。
「正直、簡単に崩されて失点するイメージがない」
キャプテンの長谷部誠が、自信に満ちた表情でそう話すのも当然の内容だった。
思えば、カメルーン戦はまったく見どころがなかった。勝つためだけの試合。勝たなければ、何も残らない試合だった。
オランダ戦にしても、どこまで行っても善戦止まりといった試合であり、勝つ可能性がどれほどあったかは疑わしい。
だが、デンマーク戦は違った。
高い位置でボールを奪い、しかも、奪ったボールをつなぎながらサイドを変える。過去2戦では見られなかった、そんな落ち着いたプレイまで出てくるようになった。
驚くべきことに、日本代表は短期間で“確変的”に成長し、強くなっている。
だが、長谷部は過熱気味の報道陣に、こんな言葉で釘を刺した。
「今日はデンマークが前がかりになっていたので、スペースがあった。だからいい形が作れたけど、もうちょっとレベルが上がってくるとフリーでやらせてもらえない。今日できたから、次もできるわけじゃない」
今、目の前で戦っている日本代表は、決して岡田武史監督が2年半をかけて作り上げた完成形ではない。いわば、大会直前に突貫工事で作り上げたチームである。
それを知っているからこそ、正直、今の日本代表をどこまで信じていいのかわからない。
だが、わずか1カ月前、まるで信じることのできなかったチームが、こうして決勝トーナメント進出を果たした。
それは紛れもない事実である。
浅田真樹●文 text by Asada Masaki
スポルティーバ - 6月25日(金)18時37分)

当日の記事や、手のひら返したような評価はいまさらと思ったので、こういうのを載せました。
思うに、日本代表の快進撃の最大要因は「弱さの自覚」にあると思うので・・・