中国の暴走を止めろ

中国完敗、強気崩さず 南シナ海緊張激化も 仲裁裁判所 主権否定
西日本新聞 7月13日(水)12時5分)


6カ国・地域が領有権を主張する南シナ海を巡る初の国際司法判断は、実効支配を強める中国の主張を真っ向から否定する内容となった。中国政府は無視する構えだが、国際社会の批判は避けられず、周辺国や米国との軍事的緊張も高まりかねない。中国の海洋進出戦略は窮地に立たされた。
■崩れた根幹
「(国際仲裁裁判所の)判断は無効で拘束力はない。判断に基づく一切の主張と行動を受け入れない」。中国外務省は12日夕、仲裁判断を受けて声明を発表。同日午後の記者会見で、中国外務省の陸慷報道局長は「徒労だ。いかなる効力もない」と切り捨てた。
仲裁判断を「紙くず」と呼び、あくまで強気の姿勢を貫く中国政府だが、内心の衝撃は計り知れない。
中国は近年、南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島のファイアリクロス(中国名・永暑)礁など3カ所で3千メートル級の滑走路を建設するなど、人工島建設を加速してきた。中国メディアは11日、ミスチーフ(美済)礁の灯台が完成し、近く運用を開始すると報道。中国が南シナ海で運用する灯台は五つ目だ。
こうした実効支配を支える根拠は、南シナ海全域をすっぽりと囲うように中国が独自に設定した境界線「九段線」。1953年から「歴史的権利」と主張してきた。これに対し、仲裁判断の結論は「歴史的権利を主張する法的根拠はない」。つまり、中国の主張の根幹が崩れたことになる。
「仲裁判断を受け入れるわけにはいかないが、無視するリスクも大きい。『国際法を守らない国』というイメージが広がる」と中国メディア関係者。フィリピンの申し立てに触発され、同様の仲裁申し立てが連鎖反応のように続くことを懸念する向きもある。
■対米も悪化
中国外務省の陸氏は12日の会見で、米国がアジア重視戦略「リバランス」を打ち出す前は「南シナ海は極めて平和だった」と述べ、米国を非難した。とはいえ、対米関係のさらなる悪化は「新たな形の大国関係」構築を唱えてきた習近平指導部にとって失点だ。
米国は仲裁判断を受け、南シナ海で「航行の自由」作戦を継続するとみられる。中国も12日、南沙諸島で民間軽飛行機を使った試験飛行を実施。今後、偶発的衝突の危険性も高まる。
最高指導部の大幅交代が予想される共産党大会を来年秋に控え、「ポスト習近平」をにらんだ権力闘争が水面下で始まっている。北京の外交筋は指摘した。「対応を誤れば、習政権の土台が揺らぎかねない」 


=2016/07/13付 西日本新聞朝刊=

日本には朗報だが、実際の拘束力はない。
さて、どう出るか。