はやぶさは北へ飛ぶ

北海道新幹線・上り一番列車ルポ 「北の大地を駆け抜けて」粋な車内アナウンス
産経新聞 3月26日(土)20時35分)


北海道・函館と東京を直結する北海道新幹線が26日、道民らの熱い期待を乗せて走り出した。新函館北斗駅(北海道北斗市)を出発した上り一番列車「はやぶさ10号」では、車掌がアナウンスで青函トンネルの歴史を解説するなどした。
午前5時、新函館北斗駅の温度計はマイナス2・3度。吐く息が白い。午前6時35分、発車ベルが鳴り、新型車両H5系がゆっくり滑り出すように出発した。
まぶしい朝日を浴びた函館山が左手に見え始め、窓の外にはどこまでも続く大地が広がる。「函館山を眺めながら北の大地を駆け抜けております」とアナウンスが入る。道民の期待を示すように、沿線では多くの人が手を振っていた。畑の真ん中で農作業の手を止めて手を振る人もいた。
13分後、木古内駅木古内町)を出発し、列車はいよいよ青函トンネルへ。そこで車掌が青函トンネルの歴史を語り始めた。
「昭和63年の開通までに多くの苦労がありました。海面下という特殊な環境の中で世界に誇る技術を生み出し、困難に打ち勝ってきました」
トンネル開通時にも一番列車に乗った経験があるという北斗市の会社員、山本博幸さん(45)はアナウンスを聞き、「あれから30年。まさかこの日が来るとは」と話し、真っ暗な車窓を見つめた。解説は開通工事で34人が亡くなったことにも及んだ。岡山市の公務員、森寄幸さん(56)は「きっと亡くなった方も新幹線を見て喜んでいるはず」とそっと手を合わせた。
トンネル内で新青森新函館北斗行き下り一番列車「はやて91号」とすれ違ったが、気付かない乗客がいたほど車内は静か。北海道名寄市の公務員、村田貴久さん(38)は「在来線の特急列車と違ってゴーという音がしない」と乗り心地に満足していた。
午前7時21分、本州へ上陸。新青森駅から先はJR東日本が管轄する東北新幹線区間のため、乗務員は交代する。1時間6分の初任務を終え、新青森駅のホームに降りたJR北海道の運転士を、にぎやかな祭(まつり)囃子(ばやし)が出迎えた。

それでも悲願には違いない、ってことか。