ブームは去った

バルス祭り”はなぜコケた? ツイッター民がシラけた理由〈dot.〉
(dot. 1月22日(金)16時8分)


“滅びの呪文”が崩れ落ちてしまった――アニメ『天空の城ラピュタ』が1月15日、約2年半ぶりに、映画番組「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)で放送された。作中で登場する滅びの呪文「バルス」を、放送中のセリフに合わせて一斉にツイッター上でつぶやく“バルス祭り”が話題となった。
番組の公式サイトでは何時何分に「バルス」が唱えられるか、その予想を呼びかけたり、作品とは全く関係ない企業が自社の宣伝に“便乗”したりしていた。前回の“バルス祭り”は、秒間のツイート数が10万6338件となり世界記録を達成したが、蓋を開けてみれば今回、秒間のツイート数は前回の半分近い約5万5000ツイートだった。“お祭り”に便乗した側にしてみれば、肩すかしを食った形ともいえる。
どうして、ツイートは減ってしまったのか。SNSと消費者の動向に詳しい、第一生命経済研究所の宮木由貴子・上席主任研究員にその理由を聞いてみた。
「今回、いくつかの企業がこうした“お祭り”に乗っかりました。例えば、体重計などを販売するタニタは、当日『バルス』ではなく『タニタ』とつぶやいて欲しい、もし『タニタ』が上回ったら『ラピュタ』の関連製品を販売するとツイッターで呼びかけました。もちろん、最初から勝ち目がないことはわかっていたはず。ですが、『バルス』を通じて社名の知名度をアップさせる点ではうまくいったと言えるでしょう」
こうした注目度の高さから、今回は企業のツイッターアカウントが『ラピュタ』の放送中に自社製品と合わせてつぶやいていた。
「しかし、このようなステルスマーケティングは消費者の嫌うところです。そもそも『バルス』自体、個人が好きに発信しているものなのに、なぜ、呼びかけられてつぶやかないといけないのか。まして、『ラピュタ』と全く関係のない企業のキャンペーンに協力しなければならないのか、と考えてしまうわけです」(宮木氏)
また、日本テレビが、番組で“公式”に「バルス」を取り上げたことも、“バルス離れ”に拍車をかけたという。今回、『ラピュタ』の放映中には、「dボタン」という番組の詳細を伝える機能を使えば、「バルス」までのカウントダウンが表示されていた。
「そもそも、“バルス祭り”は、ある特定の人たちだけで楽しむニッチさが面白かった。しかし、今や番組内でも呼びかけるオープンなものになってしまった。このため、“お祭り”を楽しんでいた人からすれば、『もういいや』と冷めてしまった」(同)
一方、放送する時期が悪かったとの指摘もある。前回は2013年8月2日。夏休みまっただ中だったが、今回は、放送日の翌日に大学入試センター試験が控えていた。そのせいだろうか、視聴率をみると、平均17.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で高視聴率をマークしたものの、前回の18.5%に及ばなかった。
では、次回以降、“バルス祭り”はどうなってしまうのだろうか。
「ピークは過ぎたとみていいでしょう。次回はより多くの企業が便乗するかもしれませんが、消費者(ユーザー)がさらに白けてしまう恐れもあります」(同)
企業が盛り上げて、ツイッター民はシラける……なんとも皮肉な話である。

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