主夫の友

秘密結社「主夫の友」! 野望は「2020年までに主夫を30%に」
□「主夫」は人生いろいろ
女子学生たちに「専業主婦になろうなんて、甘い考えではあかん」と叱咤しったし、拙著「専業主婦になりたい女たち」(ポプラ新書)で専業主婦のリスクを説く私が、なんと「主夫」の団体の顧問に就任させていただきました。
ひょんなご縁は「子育て主夫青春物語 『東大卒』より家族が大事」(言視舎)の著者、堀込泰三さんから始まりました。彼は「2020年までに責任ある地位の女性を30%にするなら、主夫も30%に」という“謎の野望”を抱く、秘密結社「主夫の友」のCEOなのです。「いずれ主夫になりたい男性と主夫と結婚したい女性たちの婚活パーティーもやりたい」とおっしゃる。
しかしそれってどーなんだろうか?
果たしてどれだけ需要があるのか、知人の30代、40代の高学歴、高収入女性たちに聞いてみたところ、「専業主夫? 男が働かないというと、なぜこんなに怒りを覚えるんでしょう」と大ブーイング。「例えば、あなたの好きなタレントのA君でもダメ?」と更に聞いたら、「それでもダメです。タレントは現実じゃないからいいんです!」と怒られてしまいました。
これは大変。「主夫だと女性たちから受けがよくないから、『仕事よりあなたと家族が大事』とか、何か別のコピーを考えたら……」などとアドバイスしているうちに顧問にさせていただいた次第。そして先日に行われたキックオフイベントにも登壇させていただきました。
そのイベントには、「専業主夫」から「兼業主夫」まで7人のリアル主夫さんが参加。トークバラエティーの芸人さんさながら、ひな壇に座っていただき、私と堀込さんからいろいろと質問させていただきました。回答はフリップに書いてもらい、2人で突っ込む――とても楽しいイベントでした。
印象的だったのは、「なぜ主夫になったのか?」という問いへの回答。あまりに様々なドラマが秘められていて、「人生いろいろ〜♪」という歌が思わず脳内をぐるぐるしてしまいました。
思えば主夫というのは「自覚」の問題で、7人のうち、「奥様の扶養家族になっている」という人は2人。専業主婦のように財布を握っている人も2人ぐらい。なったきっかけも病気や海外転勤などさまざまで、最初から主夫だったという人は本当に少ないです。「学生結婚して、そのまま専業主夫になり、大学院を出ているけれど働いたことがない」という、まるで“箱入りお嬢様”のような方もいました。妻より収入が上の人は1人でした。
つまり収入がなく専業主夫に徹している人から、大黒柱が妻でゆるい働き方の人、妻より年収は上でも家事はほとんどやっている人など、7人だけでも、かなりのグラデーションがありました。
男性の働き方の多様化を促し、性別役割分担の意識を壊すには、主夫は素晴らしい存在。でも、「子育て後はどうするの?」「働き手が交代する可能性も考えていますか?」など、心配でいろいろと質問してしまいました。
おもしろかったのは「主婦の愚痴」と「主夫の愚痴」はほぼ一緒ということ。「聖域であるキッチンには入られたくない」「誰が稼いでるんだと言われたことがある」などなど。一番ウケたのは「専業主夫あるある」で、「ミョウガを夫婦どちらも買ってくると余って困る」というものでした。
そんな感じで、全体的にはのほほんとして楽しい雰囲気。「再就職したい主婦イベント」に比べると、あまりガツガツしていないのが印象的です。
主夫にニーズはあるのか?
それでは主夫になりたい男性と、主夫を婿にほしいという女性はどのぐらいいるでしょうか? ありましたよ。小町にもトピが。
「主夫希望です!」というトピ主さま。


「僕は主夫希望です! スペックは
・20代前半
・高卒
・フリーター(社会人経験あり)
・顔はいい方(女性からはよく若手俳優に似てると言われます。ちなみにカラコンや化粧等一切なし)
・家事は全般できます
・お酒は苦手、ギャンブルはしません
・育児に関しては子供は好きなので頑張ります」


これに対して、女性たちの反応はというと、「主婦を甘く見過ぎている」というものから、「需要あるんじゃない」「ぜひ5年前に出会いたかった。もう結婚しちゃった…」などなど、様々なレスがありました。「男女関係無く、今は『外で働かない』という選択肢を『一番』にしている人は、警戒されますよ」という厳しいレスも。
トピ主さま本人は、「働くより家事や育児の方が自分に向いているとおもうからです(完全な専業というわけではなく、家事がきちんとできる程度には働きたいと思っています。正直子供も絶対欲しいというわけではありません)。厚かましい話ですが、希望としては50歳くらいまで(もちろん愛せる自信があるのでこの年齢までにしました)。年収は自分の父親が、年収300万以下(母はパート)で僕ら兄弟2人を育ててくれたので、子供が欲しい場合は年収300万くらいほしいです。子供がいらないのであれば年収250万くらいですと嬉うれしいです」と希望をつづっています。
そして「よくこの話を男友達にすると、『まーお前ならいけるんじゃね?』とは言われますが、女性にはこの話をしたことはありません」とのことでした。
□主夫の道にリスクは?
それでは女性サイドの需要はどうか? 逆に「主夫希望の方とはどこで出会えますか?」というトピも立っています。「『主夫希望の人はたくさんいるよ〜』と周りの人は言うのですけど、実際にお目にかかったことがありません。どういった場所が彼らの行動範囲なんでしょうか? どんな職業の方に主夫希望の方は多いのでしょうか?」という女性からの投稿です。
彼女は「40代前半 離婚2回 子供はいません 年収600万円 家事は一通りできます(好きではないだけです)」で、「仕事が好きすぎるので、日常生活をサポートしてくれる方と出会いたいんです」と書いています。
やっぱり需要はあるのですね。主夫になりたい男性はどこにいるのでしょうか? このトピには、「IT業界で、『本音は主夫になりたい』という声、かなり聞きます。仕事に向いてない人や、激務で心を病みかけている人が多い業界だから」というレスがありました。あとは重労働、低収入で不満を持つ「介護職の男子」も挙がっていました。
「ヒモでない専業主夫希望の男性とはどこで出会えるのでしょうか? 」というトピ
「ヒモでない専業主夫希望の男性とはどこで出会えるのでしょうか? 」というトピもありました。「私の出会う『専業主夫希望の男性』が、ことごとくヒモのような依存する気満々の人や、頼りがいのない人ばかりなのですが……」と悩めるトピ主さんに対して、「デザイナーやライターなどのクリエイター、在宅の個人事業主としての仕事をしている・またはしていた男性。学歴は比較的高く、頭が良い。わりとマイペース、一匹狼おおかみ的な性格(群れない、比べないため、かえって女性たちのなかで一人でいても平気)なので、個人事業主や、フリーのクリエイター系の集まりを狙うといいと思います」というアドバイスがありました。ちなみに彼らは「安定していない仕事なので余っている」そうですよ。
ただし、前のトピにはこんな忠告も。「婚活はいいと思うのですが、単に眼前の仕事から逃避したいだけの人を排除するテクニックが要りそうですね」
「働きたくない」=家でも外でも働きたくない……こういう人は、「ヒモ」という別のカテゴリーで生きるべく、ある種高度なテクニックが必要です。しかし「会社、男性社会で競争するよりも、家で子育てしたい」という気持ちの男性もいると思います。とにかく「『主夫=仕事しない』というイメージはちょっと違う」ということが、今回のイベントでよくわかりました。
最後に専業主婦または主夫のリスクについて。「専業主夫について、どう思いますか? 」というトピにこんな提言がありました。
「現状の中高年の再就職の難しさを考えると、夫になる人に、無職になるというリスクをおかさせるのは怖いです。これが、中高年も再就職がしやすい社会なら、お互いの状況に応じて、専業主夫の期間、パート主夫の期間などがあってもいい、と思えるかもしれません」
全くその通りですね。とにかく男女ともに働き方の多様化の表れとして、「主夫」を名乗る男性たちは、ぜひ応援していきたいです。
子育て家庭で、専業主婦やパート主婦を養えるような男性はごく少数。女性ともなるともっと少ない。わずかなニーズですが、マッチングしたら「働きたい女性」にとって幸せな結婚が増えるかも。ちなみに私の知っている限り最初から「夫が専業主夫になりそう」という見込みで結婚したのは自分でリスクをとれる女性=創業者である社長のみでした。
「主夫」を応援したい方、興味ある方はぜひ「秘密結社 主夫の友」のフェイスブックページをチェックしてみてください。
(読売新聞(ヨミウリオンライン) 7月1日(水)10時13分)

いろんな方がいらっしゃるようで。