氷水さわぎ、その後

ALS支援「アイスバケツチャレンジ」の寄付金はどうなったの?
昨年ブームとなった「アイスバケツチャレンジ」。バケツに入った氷水をかぶるこの取り組みには批判の声もあったが、ある難病の研究を支援する目的だったことは意外に知られていない。その難病とはALS(筋萎縮性側索硬化症)だ。6月21日は「世界ALSデー」。同チャレンジでは、多くの寄付金が寄せられたが、その寄付金はどうなったのだろうか。
□「20年分の半分」が1年で集まる
同チャレンジには、国内外の著名人をはじめとして多くの人が参加し、注目を集めた。しかし、NHKのホームページによると、アイスバケツチャレンジのことは62%が知っているのに対し、ALSについて知っている人は22%と、ALS自体の認知度は思うように上がっていない。
日本には約300の国指定の難病があるが、ALSもその一つ。別名ルー・ゲーリック病ともいわれ、身体の感覚や知能、視力や聴力、内臓機能は健全のまま、手足、喉などの身体中の筋肉などが徐々に衰えていく病気だ。最終的には目しか動かなくなることが多いが、中には目まで動かなくなる「完全な閉じ込め状態」(TLS=Totally Locked-in State)に陥ることもある。日本には約9200人のALS患者がいる。
日本ALS協会によると、同チャレンジによって集まった寄付金の総額は、約3793万円だったという。同協会がこれまで20年ほどかけて集めた寄付金は約7688万円といい、実にたった1年で20年分の半分の金額が集まった計算になる。
こうなると気になるのは使い道だ。同協会の常務理事、金澤公明さんは「せっかく寄付していただいたので有効に使わせていただきたいということで、時間はかかってしまったが協会で検討してきた」と話す。使途は、具体的には以下の2つが柱になる。

(1)治療薬や福祉機器の研究開発補助(1件300万円×年間3件、3年間継続)
(2)患者のQOL向上へ介護者の育成など(1件30万円×年間5件、5年間継続)

□(1)治療法がない難病
ALSは、最初の患者が見つかってから約140年経つが、いまだに原因不明で治療法がない。治療薬の開発は患者や家族らの悲願だ。唯一「リルゾール」という薬が1999年から日本でも使用を認められた。しかし、これは病状を改善したり、回復させるものではない。ALSはいったん診断されると、人工呼吸器をつけるなどしない場合、余命は平均3年半ほどされる。リルゾールはその3年半のうちの2、3か月ほど延命する効果しかないという。
一般的に、一つの薬をつくるには研究費が何十億円とかかる。また、マウス実験などを経て、いざ人にも効果があるのか、という段階までに十数年かかる。ALSの治療薬については、最終的に人には効果がなかった、という状態が「10〜20年と続いてきた」(金澤さん)という。
薬の研究開発には今回の300万円でも足りないのが現状だが、自らも遺族である金澤さんは、治療薬への期待は非常に強いと語る。「患者はいつ治療薬ができるか、ということに希望を持って生きている。家族や遺族も早く薬をという気持ちが強い」。
□(2)体が動かなくなる病気
たとえ治療薬ができなくても患者は生きていかなければならない。そのため、ALS患者の療養生活の質を良くするための支援活動にも使われるという。
ALSは病状が進行すると、多くの場合、自力での呼吸ができなくなり、人工呼吸器をつけることになる。そうして気管切開をした患者は、痰がつまると窒息してしまうので、頻繁に痰の吸引が必要になる。しかし、この痰の吸引の「担い手」が少ないのだという。法改正によって、介護職員でも対応が可能になったが、現状は家族が対応する場合がほとんど。そこで介護ヘルパーら人材の育成をするのが目的だ。そのほか「現場で患者が困っていること。研究すれば改善できることに使わせていただければ」(金澤さん)という。
これらは公募で決められる。具体的には、7月から1件目の募集を始め、9月〜10月に選考、10月に交付、というスケジュールの予定。公募された中から選考するのは、(1)については神経内科などの医師や専門家、(2)については協会役員や他の難病団体の人も入れて判断するという。
(THE PAGE 6月21日(日)16時0分)

とにかく有効に使っていただきたいなあ、と思います。