水毒?

<梅雨時に要注意>むくみの原因にもなる「水毒」
日本列島は続々と梅雨入りし、じめじめとした日が続くようになりました。この時期から初夏にかけての日本は、気温の高さと雨の冷たさが入り混じった独特の気候で、例えるならミストサウナの中のような環境です。このような状態に置かれると、人体には余分な水分がたまりやすくなります。野木病院(栃木県)の加藤士郎副院長に、体に及ぼす影響について聞きました。
◇たまった体内の水分が明け方冷える
日中はエアコンが必要な暑い日がある一方、明け方は意外なほど気温が低くなります。高温多湿の日中にたまった体内の水分は、明け方になると冷やされ、体全体が冷えてしまいます。これが漢方でいう「水毒(すいどく)」という状態で、冷え症の原因の一つです。冷え症というと、女性特有の症状のように思われてきましたが、最近は男性にもこのタイプの冷え症が増えてきています。
漢方では、「気血水(きけつすい)」の三つの要素によって人体の健康はつかさどられていると考えます。西洋医学の「神経・免疫・内分泌」にほぼ相当するもので、体が健康なときはこの3要素がうまく体内を巡っています。しかし、気血水のいずれかが不足したり、巡りが滞ったりすると不調が起こります。水毒も、気血水のバランスの乱れの一例です。
◇むくみや水太り、めまいや頭痛まで
水毒の状態になると、体内の水分の流れが滞り、うまく排せつされなくなります。結果、むくみや水太り、鼻水や痰(たん)、多汗やめまいなどの症状が出やすくなり、頭痛や肩こり、腰痛、気管支ぜんそく、関節リウマチなどの疾患が悪化しやすくなります。おなかに水分がたまり、胃腸障害を起こす方もいます。思い当たる方も多いのではないでしょうか。
◇アイスコーヒーのがぶ飲みは禁物
水毒に至る原因は、食事の偏りや運動不足にあるとされています。対策としてはまず、体を冷やす飲み物を避けること。それは物理的に温度の低い氷水やアイスコーヒーなどを避ける、という意味だけではありません。
漢方ではすべての食べ物を、体を温めるものと冷やすものに分類しています。例えば緑茶やコーヒー、ジャスミンティーなどは体を冷やす飲み物です。いずれも暑い国由来のもので発汗作用があり、体温を下げます。
一方、体を温める作用が強い飲み物には、紅茶、番茶、ほうじ茶などがあります。英国、日本など比較的寒い国で生まれた飲み物であることからもわかりますね。つまり暑いからといってアイスコーヒーをがぶ飲みするのは、二重の意味で体を冷やすことになり、禁物なのです。食材では大根、ニンジン、ゴボウ、レンコンなどの根菜類、白菜やネギなどに体を温める作用があります。これらを温野菜として食べると水毒の対策としてよいでしょう。
◇運動でポカポカ、冷えにくい体に
また運動は体内の熱を上昇させ、冷えにくい体質を作る効果があります。どんな運動にも一定の効果がありますが、中高年に取り入れやすいのは柔軟運動でしょう。肩甲骨をぐるぐると前後にまわしたり、首や股関節をゆっくり動かしたりと、普段使っていない関節を動かしてみましょう。柔軟運動は筋肉を柔らかくし、関節の可動範囲を広げるのでけがをしにくく、さらに自律神経の働きをよくして、新陳代謝を高める効果があります。続けていくと、体の奥からポカポカ温まってくるのがわかるでしょう。
明け方の冷えを防ぐため、眠るときにもちょっとした工夫をしてください。冷えやすいおなかを温める腹巻きやステテコのようなものを履くとよいと思います。梅雨は不快な季節の代名詞です。不快さはなかなか解消できませんが、それが現実の体調悪化につながらないよう、まずは体の冷え対策に取り組みましょう。
毎日新聞 6月21日(日)10時0分)