「振り向けば、テレ東」→「抜き去ったテレ東」

テレ東が、ついに民放の「勝ち組」になった! 
民放キー局5社の2014年4〜9月期(上期)決算の数字が出そろった。本業の儲けを表す営業利益は3社が減益となる厳しい環境の中、通期の業績予想を上方修正したのがテレビ東京ホールディングス(HD)だ。同社の期初予想は減益だったが、上期は前年同期比11.6%増の26億円で着地。通期でも11.4%増の53億円となる見通しだ。
テレ東HDが好調な理由は2つある。1つは「アイカツ! 」を中心に、アニメ番組のグッズ販売が伸びたこと。もう一つは、広告収入のベースとなる視聴率が引き続き上昇しているからだ。
「YOUは何しに日本へ? 」「世界ナゼそこに? 日本人」などのバラエティ番組が牽引し、ゴールデンタイム(19〜22時)の視聴率は7.1%と前年同期比0.2ポイント上昇した。上期のゴールデンの視聴率が上がったのは、キー局で日本テレビ放送網とテレ東の2局だけだ。
また全日(6〜24時)についても0.3ポイント上昇した。「過去のハリウッド映画を放送する13時台の『午後のロードショー』などの視聴率がじわじわと上がっており、16時台の情報番組『L4YOU! 』も制作費をかけたら数字に表われた。手を入れたら視聴率が上がるという手応えを感じている。広告収入をさらに伸ばすには全日を上げていかなければならない」とテレ東の�・橋雄一社長は意気込む。
■ 本業が一番伸びたのは日テレ
ただし各社の本業である放送事業を見ると、テレ東の独り勝ちというわけではない。視聴率で断トツのトップなのは日テレだ。ゴールデンの視聴率は12.3%と前年同期比0.7ポイント上昇し、伸び率ではテレ東を上回っている。2位であるテレビ朝日のゴールデン視聴率は10.1%。前期は僅差の接戦を繰り広げたが、今期は大きく差を広げた。
プライムタイム(19〜23時)や全日の視聴率も上昇した。「月曜から夜ふかし」、「ナカイの窓」などのレギュラー番組や「ZIP! 」「情報ライブミヤネ屋」など平日の帯番組が高視聴率を維持。10月開始のドラマ「きょうは会社休みます。」も5回の放送平均で16.3%と、高視聴率の目安とされる15%を超えている。
本業は絶好調。にもかかわらず、日本テレビHDの営業利益は162億円と前年同期から3.9%減少した。なぜなのか。
そもそも日テレは今期業績について、期初から減益を見込んでいた。今年2月に買収した定額制の動画配信サービス「Hulu(フールー)」の番組調達費や広告宣伝費など先行投資がかさむためで、同事業で30億円の赤字になる見通しだ。テレビ事業を手掛ける日本テレビ放送網単独では前年同期比14.4%の2ケタ増益を確保。他のキー局に先駆けてインターネットの分野に大きな投資ができるのは、頭打ちになっているテレビ広告市場への危機感がある一方で、本業で安定的に稼いでいることから余裕もあるのだろう。
日テレやテレ東とは対照的に、元気がないのはテレビ朝日ホールディングスフジ・メディア・ホールディングスだ。
テレ朝HDの営業利益は73億円で前年同期比23.9%減少。ブラジルW杯の放送などの影響で番組制作費が膨らんだ。視聴率はゴールデン、プライム、全日とも2位だが、前年同期比では軒並み下落している。10月の番組改編で看板ドラマシリーズ「相棒」「ドクターX」「科捜研の女」を一気に投入し日本テレビを猛追するが、3〜10月の平均視聴率はゴールデン10.4%、プライム11%、全日7.1%。ゴールデンで2.0ポイント、プライムで1.4ポイント、全日で1.2ポイントと、日テレとはまだ差がある。
かつての視聴率トップ、フジも冴えない。営業利益は95億円と前期比33.9%減少。視聴率の低下が止まっておらず、ゴールデンの視聴率は9.7%で3位だが、テレ朝の背中は遠い。
■ 個人視聴率でも3冠陥落か
フジにとって頭痛の種になっているのは個人視聴率の低下だ。前出のゴールデン、プライム、全日が指すのは世帯視聴率。関東地区のテレビ所有世帯のうち何パーセントがテレビをつけていたかを表す推定値だ。それに対して、個人視聴率はどのような人がどれくらいテレビを視聴したかを示す。
実は、フジは世帯視聴率こそ低下していたが、個人視聴率では広告主のターゲット層である20〜34歳女性(F1層)、20〜34歳男性(M1層)の視聴率でキー局トップを維持。広告の単価も高い。だが今上期は日本テレビが、F1層、M1層視聴率のゴールデン、プライム、全日でトップ。世帯視聴率3冠に加えて、個人視聴率のF1層、M1層でも初の3冠を狙っている。若年層に強いのがフジテレビの売りだったが、その地位も危うくなってきた。
上期に増益を達成したもう1社であるTBSホールディングスも本業は厳しい。営業利益は10.1%増の48億円。その増加分の大半は、赤坂サカスをはじめとした不動産事業によるものだ。視聴率はゴールデン、プライム、全日とも4位と低迷。放送収入も減少している。
視聴率好調な日テレとテレ東、苦戦するテレ朝、フジ、TBS。上期は明暗が分かれたが、下期は人気ドラマを一気に投入したテレ朝が独走する日テレにどこまで迫れるのか。またテレ東の勢いはどこまで続くのか。各社とも気が抜けない戦いが続く。
東洋経済オンライン 11月18日(火)5時30分)

テレ朝もちょっと前までよかったのにねー。