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ソニースマホ事業、新トップの課題とは? 
スマートフォンの責任者が交代──。ソニーが10月31日の2014年度中間期(4〜9月期)決算前日に発表した人事は、市場にサプライズを与えた。
11月16日、新たにスマホ子会社ソニーモバイルコミュニケーションズ(SOMC)社長に就くのは、現業執行役員の十時(ととき)裕樹氏。入社以来、財務畑を経て、ソニー銀行設立を主導した人物だ。同代表を経て、吉田憲一郎CFO(最高財務責任者)が社長を務めたグループ会社、ソネットでの副社長などを歴任。13年12月、吉田氏とともに“再建請負人”として本社に呼び戻された経緯がある。
銀行設立の経緯を知るOBは「ソニーからの出向者も多くいたが、ネット銀行設立の必要性を説いて、まとめていた。組織を率いる力は大したもの」と太鼓判を押す。
■ 新トップの任務
十時氏に課せられるのは、スマホ事業の“止血”だ。
スマホは、平井一夫社長がゲーム、イメージング(デジカメなど)とともに、コア3事業の一つと位置づける重要事業。ところが、主戦場である中国では、小米(シャオミー)など格安メーカーが台頭。今期の販売計画は4100万台と、期初から900万台の下方修正を強いられた。
中間期には、12年の旧ソニー・エリクソンを完全子会社化した際の収益見通しとの乖離が要因となり、1760億円もの巨額減損が発生。中間期のスマホ事業の営業損失は1747億円と、前年同期(214億円の黒字)から暗転した。15年3月期の営業損失も2040億円となる公算だ。
牽引役のはずが、業績の足かせとなった背景には、中国市場急変のほかに、SOMC現社長の鈴木国正氏による拡大戦略の責任を問う声も多い。「スマホは今の競争環境では、差異化して勝てる見込みは少ない。が、鈴木氏はシェア3位目標を公言し、拡大戦略を推進した」(UBS証券の桂竜輔アナリスト)。
ソニー最大の問題点はマネジメントの方向の不一致にあったとも桂氏は指摘する。「(CFOの)吉田氏と十時氏は赤字縮小へ向け、ブレーキを踏もうとしたが、鈴木氏はなおアクセルを踏んでいた。これでは傷が深くなる」。
■ 再建に立ちはだかる高い壁
大戦略の見直しは、7月時点ですでに公言されており、十時氏就任であらためて方向が定まったといえる。同氏は会見で「売れる前提で数は追わない。合理的にどれだけ売れるか、丁寧に追いかけたい」と強調。中国事業は大幅縮小される見通しだ。
ただ再建のハードルは高い。十時氏は新規事業で実績を上げているが、モバイル事業の経験は乏しい。自身も「ソネットではプロバイダとして通信事業には接していた。ただし、これは主に国内で、今後はグローバルでマネジメントする必要がある」と気を引き締める。
またソニーは伝統的に事業部の声が強く、「本社から落下傘で(スマホの)事業部に来て、従業員と関係を構築できるか」と懸念する声もある。
11月25日、ソニーは各事業の戦略説明会を開き、十時氏も詳細を語る見通し。再建の本丸、スマホ止血をどう果たすのか。十時氏にかかる責任は重い。
(「週刊東洋経済」2014年11月15日号<10日発売>の「核心リポート05」を転載)
東洋経済オンライン 11月16日(日)5時0分)

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