本業回帰

サマンサタバサが快進撃を続ける理由
日本発のバッグブランド「サマンサタバサ」が快進撃を続けている。第1四半期で早くも2015年2月期の業績予想を上方修正。さらに10月15日にも上方修正を発表し、売上高は前年比約2割増の388億円、営業利益が約8割増の32億円と過去最高益を大幅に更新する見込みだ。
「前回の消費増税では痛い目に遭った。今回は徹底的に対策をした」(寺田和正社長)と言うように、「アゼル」など人気バッグに10色を追加。店頭の約75%の商品を新作に切り替えた。小売り各社が反動減に見舞われた4月、同社は既存店売上高で前年比3割増を達成している。
■ 空港内の店舗も拡大
サマンサは国内外のセレブや人気モデルを起用したバッグを企画販売。華やかな広告宣伝で、若い女性を中心に1990年代後半から急成長を遂げてきた。直近では、訪日外国人観光客増加の追い風も吹く。
中国、韓国などアジアにも出店しており、海外客からの人気も高い。免税売上高比率は今上期に10%を突破。5月以降も既存店の2ケタ成長が続く。10月には成田国際空港内に10店目の空港内店舗を出店するなど、出店要請の引き合いは依然強い。
今でこそ上り調子だが、リーマンショックではどん底を味わった。主力のバッグ事業は伸び悩み、同時期に買収したネット通販会社やアパレル子会社ののれん代の減損を強いられ、ブランド改廃に伴う特別損失も計上。08年度は約23億円の最終赤字に沈んだ。アナリストからは「過去のブランド」とまでささやかれた。
ここに来て再成長を遂げている背景には、本業への経営資源集中がある。12年には、年間約6億円の赤字を出していた高級セレクトショップを閉鎖したほか、同じく赤字が続いていたネット通販会社も楽天に売却。不採算事業をことごとく整理した。
一方で、本業のバッグ事業では合成皮革製の3万円のバッグに替えて、国産で本革製の4万5000円のバッグを拡充するなど、ブランドの上質化を進めた。現在は店頭の約6割まで本革製バッグの割合を増やしたことで単価が上昇。前期は粗利率が前期比で約2%向上した。「経営の重しとなっていた事業から撤退し、バッグのブランド力を高めてきたことが現在の好調の下地にある」(菅原隆司常務)。
■ 今後の成長に課題も
バッグ事業ではさらなる拡大にも布石を打つ。昨年末に立ち上げた新業態「サマンサ&シュエット」では、これまで未開拓だった郊外型ショッピングセンター向けに、1万円を切る低価格帯のバッグを投入。イオンモールを中心に9月末時点ですでに11店舗と積極出店をしている。この10月からは三越伊勢丹グループと連携し6万〜10万円台の高級バッグブランド「ラプリュム」を立ち上げ、10代〜50代まで顧客層の裾野拡大を狙っている。
ただ、今後の成長には課題も残る。子会社のバーンデストは既存店の減収が続くほか、昨年買収したばかりの若い女性向けの国内ブランド「レストローズ」も上半期は赤字の見込みと、アパレル事業は苦戦を強いられている。バッグ事業で絶好調が続く今こそ、「総合ファッションブランド」に化けるための、一段の改革が求められる。


週刊東洋経済」2014年10月18日号(14日発売)、「核心リポート05」に一部加筆
東洋経済オンライン 10月19日(日)6時0分)

「つまづいたら、基本に還れ」を地でいくような戦略ですな。