吉か、凶か

ネスレ日本、コーヒー業界団体脱退の真相
「テクノロジーの分類から言うと、これはもうインスタントではない」――。昨年9月、「脱インスタントコーヒー」を掲げて新たに投入した商品の表記をめぐって、コーヒー業界が二分している。
ネスレは7月24日、全日本コーヒー公正取引協議会全日本コーヒー協会日本インスタントコーヒー協会日本珈琲輸入協会の4団体を退会することを発表した。ネスレは昨年9月、主力商品の「ネスカフェ ゴールドブレンド」で新製法を採用、これに伴って表記も53年間使ってきた「インスタントコーヒー」から「レギュラーソリュブル(可溶性)コーヒー」に変更した。ところが、業界団体がこの表記を認めないだけでなく、この6月、広告上でも利用できないよう公正競争規約(業界の自主ルール)を改めたことにネスレが反発した格好だ。
■  紛らわしい表記にクレームも
インスタントがコーヒーの抽出液を乾燥させて作っているのに対して、ネスレによると、レギュラーソリュブルは微粉砕した焙煎コーヒー豆を、ネスレ独自のコーヒー抽出液と混ぜ合わせて乾燥して作る。抽出液にコーヒー豆を混ぜている点で、「インスタントというよりもレギュラーに近い」(ネスレ日本渡辺正人常務)としている。ただ、レギュラーコーヒーとも違うため、「レギュラーソリュブル」という新たなジャンルを設けたのだ。
53年ぶりの全面刷新は大きな話題となり、同社の"インスタントコーヒー市場"におけるシェアは、刷新前から1%上昇した(同社はシェア自体公開していないが、推定6〜7割程度とみられる)。
しかし、業界団体はこの新ジャンルに対して当初から難色を示していた。全日本コーヒー協会の西野豊秀専務理事は、「自治体の消費生活センターや当協会に『レギュラーコーヒーと間違えて買ってしまった』というクレームが寄せられている。ソリュブルの意味がわかる人でも、レギュラーコーヒーがさっと(お湯に)溶けるものと思ってしまう」と話す。
これについてネスレ日本・高岡浩三社長兼CEOは、昨年9月の「週刊東洋経済」のインタビューで、「インスタントという名称ではニセモノっぽく聞こえる。インスタントは定義としてお湯で完全に溶けるものをいうが、われわれはレギュラーコーヒーの豆を入れ込むなど技術革新している。単にレギュラーとインスタントの粒を混ぜ合わせたのではない」と反論していいた。
ただ、「レギュラーソリュブルコーヒーの成分の9割以上はインスタント。レギュラーコーヒーが多ければもっと粉末が残るはず」(業界団体関係者)という声もあり、名称の妥当性の議論が紛糾していた。
■ 「レギュラーソリュブル」の使用やめない
ネスレが4団体の退会に踏み切るきっかけとなったのは6月、全日本コーヒー公正取引協議会が「一般消費者が誤認するような表示は不当表示に当たる」旨を盛り込んだ公正競争規約改訂案を採択したことだ。
改訂案では、「インスタントコーヒー(レギュラーコーヒー入り)」というように、使用量の多い方の名称にするように定めた。また、「レギュラーソリュブルコーヒー」は不当表示に当たり、名称だけでなく広告表現としても使用を認めない見解を示した。これを受けネスレは「独自路線を歩む方が新しいテクノロジーをより幅広く訴えられる」(渡辺常務)と、退会を決めた。
ネスレは今後、法的拘束力のない業界自主ルールではなく、JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)を順守した表示を行うとしている。JAS法は加工食品の表示方法について、「その内容を表す一般的な名称を記載すること」と規定している。「レギュラーソリュブル」が「一般的な名称」に該当するかについて、「消費者庁に問い合わせたが答えがない」(全日本コーヒー協会の西野専務)ため、議論の決着は得られていない。
ネスレがここまで名称にこだわる背景には、インスタント市場の縮小がある。2001年の国内におけるインスタントの生産量は9.6万トンだったが、13年には9.2万トンに減少。コーヒーの飲用機会が多様化していることが原因だ。こうした中、ネスレは近年、専用什器をオフィスに広げる取り組み「ネスカフェアンバサダー」や、喫茶店に業務用マシンを提供する「カフェネスカフェサテライト」を推進、家庭外需要を広げている。「脱インスタント」も環境変化への対応の一環とみられる。
業界から孤立してでも守りたかった「レギュラーソリュブルコーヒー」という表記でシェアを伸ばせるのか。ネスレの正念場は続く。
東洋経済オンライン 7月27日(日)6時0分)

どれほど技術が上がろうとも、インスタントであることに変わりはないじゃん・・・というのが正直な感想で、かつ、インスタントであることはそんなに悪いのか?とも思ってしまう。
うまけりゃ何だっていいわけだから。