そのうち服屋は消滅する

池袋パルコに現れた、「服の自販機」の驚愕
池袋パルコ本館の地下1階に、これまで見たことのない一風変わった衣料品店がオープンしていた。目の前にあるのは、大型の液晶モニターのみ。聞けば、「商品がないのに、試着と買い物ができる」のだという。
60型の大型液晶画面に写った自身の全身映像に、特別な処理を施したスカートやワンピースなどの商品画像が重なって写る。飛び跳ねても洋服がピタリと追随する高い再現性や布の質感は、通行人も思わず目を留めるほどだ。実物の商品や接客なしに、まるで試着しているかのように買い物ができる。
これは、中堅セレクトショップのアーバンリサーチが開発したバーチャル試着端末「ウェアラブルクロージング」だ。端末で写真撮影をして、SNSなどで共有することができる。
気に入ったコーディネートがあれば、そのまま液晶上でカートに入れ、発行されたQRコードスマホなどで読み込めば、連動するアーバンリサーチのEC(ネット通販)サイトで購入することも可能。この間の時間はわずか数分だ。
「変な表現だが、リアルでネット通販体験ができることを目指した。リアルとネットの中間点、O2Oの“2”の部分」と、同端末を開発したアーバンリサーチの齊藤悟氏は説明する。6月末までの期間限定の展開のため、現在はレディスの40〜50型のみだが、将来的には全商品の試着・購入を可能にしていく。
大阪・アメリカ村ジーンズカジュアル店からスタートした、セレクトショップのアーバンリサーチ。同社の2014年1月期の売上高は355億円。そのうち、EC売上高が70億円を占める。同社は2000年代初頭からECサイトを展開。EC比率10%でも先端企業といわれるアパレル業界において、異例の約20%を達成し、高成長を続けてきた。全店規模でのスタイリング提案のブログもいち早く始めるなど、業界ではECの最先端企業として知られる。
しかし、ここに来て、大手ECサイトの中には徐々に頭打ちになるところも現れ始めた。「自社ECをさらに伸ばすために、リアル店舗を活用しようと考えた」(齊藤氏)。
ウェアラブルクロージング開発のきっかけは、2012年に東京メトロ表参道駅の構内に出店した、わずか7坪ほどのポップアップストアだったという。通行量の多い駅ナカ立地を生かそうと、当初は雑貨を中心に置いたが、売り上げはイマイチ。試しに衣料品を投入してみたところ、飛ぶように売れ出した。
売り場1坪当たりの売上高は、通常の店舗の3倍以上。「どこで服を買うかというのはルールがないと気がついた」(齊藤氏)。しかし、7坪の狭小な売り場では、陳列できる商品はせいぜい50着程度。「1000着のデータが入った端末を置けば解決するのでは」という発想の転換に至った。
■ メーカーや卸への端末販売も狙う
同社の竹村幸造社長はつねづね、社員に「洋服でなくてもいいから、新しいことを考えろ」と語っている。ウェアラブルクロージングは2台で2000万円の開発費用がかかったが、経営陣からは即「ゴーサイン」が出た。
1年半前から開発を始め、先端的な取り組みに積極的なパルコからの協力も受け、今回の端末設置にこぎ着けた。
「英語や中国語の表示が可能なので、海外での設置や訪日観光客の買い物にも対応できる。端末の盗難防止などセキュリティー上の課題はあるが、将来的には無人店舗として設置を進める」(齊藤氏)
現在2台の端末は、今年中に6台まで増やす。池袋パルコでの期間限定設置が終わる7月以降は、宣伝を狙ってイベントなどに活用するほか、昨年進出したばかりの台北ショールームや、旗艦店のある東京スカイツリータウンソラマチ店やラゾーナ川崎プラザ店、ルクア大阪店にも順次設置していく。実店舗を持たない衣料品メーカーや卸に、端末自体を販売する計画も練る。
■ 売り上げは実店舗のものとして計上
これまでにも、似たようなシステムはあった。ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイが開発したアプリ「WEAR」。欲しい商品のバーコードを実店舗で撮影すれば、簡単にネット通販で購入できるというものだ。しかし、「店舗をショールーム代わりに使われては商売あがったり」と、多くの商業施設から反発を受けた。
これに対し、「アーバンリサーチは実店舗を持つ強みを生かしていく」(齊藤氏)という。ウェアラブルクロージングの場合、端末を通じてECで購入した商品は実店舗の売り上げに計上される。そのため、各店舗の売り上げに連動する商業施設側の賃料収入は、実店舗で販売した時と何ら変わらない。
池袋パルコのようにアーバンリサーチの実店舗がない商業施設に設置する際は、スペース料という名目で固定賃料を払う仕組みだ。
今後は、自動車など異業種とのコラボレーションも進める。表参道、新宿など、好立地に出店する店舗資産を活用し、モニターで宣伝を行いながら、ドライブに合う商品を提案することなどを検討中だ。
さらには、「お客様のWebカメラを使って、自宅でウェアラブルクロージングと同じサービスを提供するという案も出てきている」(齊藤氏)。同社は東京オリンピックのある2020年までに、売上高1000億円、EC比率30%の目標を掲げる。無人店舗が普及する未来は、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。
東洋経済オンライン 6月22日(日)6時0分)

クロージングは、手に取った質感も大事だと思うので、オンライン通販を利用しない理由はそこだったりしますが。
こういうのが普及すると、個人的にはうれしくないなぁ。