小骨

マック赤坂さん>エリート商社マンから転身、10戦全敗
東京都知事選は舛添要一氏(65)の大勝で終わった。連日メディアに取り上げられたのは「主要候補」だったが、候補者は16人いた。主要候補以外は「泡沫(ほうまつ)」とも皮肉られるが、それでも挑み続ける男がいる。マック赤坂さん(65)。「俺は泡じゃない。人間だ」。なぜ負けても負けても戦うのか−−。
都知事選が10回目の選挙だった。得票数1万5070。当選した舛添氏の140分の1しか獲得できなかった。これで10戦全敗。一夜明けた10日、マックさんは不機嫌だった。「10万票はいくと思っていたから、話にならない」
毎回、政見放送が話題を呼ぶ。時にはスーパーマン、時にはガンジーをまねた姿で登場する。今回はエンゼル(天使)。5分30秒の持ち時間の大半は、自身が考案した、笑顔を美容や健康に役立てる「スマイルセラピー」のPRに費やす。「スマイル!」と叫び、踊る。政見というよりコントだ。
選挙中の「遊説」に密着した。両手に赤色の誘導灯を持って立ち、笑顔をふりまくだけでほとんど口を開かない。政見放送の影響か、すぐに人だかりができたが、冷たい目で「絶対投票しねえ」と立ち去る若者もいた。
本名、戸並誠。愛知県の進学校から京都大、卒業後は伊藤忠商事へ。「優秀な営業マンだった」(元同僚)が、48歳で退社した。「会社の権威を使わずに一人で前進する」と1998年に貿易会社を設立し、6年後には売上高20億円に成長させた。
経歴と対照的な異色の選挙活動を展開するが、こんな公約も掲げる。<被爆国だからこそ、軍隊の無い完全永世中立国宣言する><投票を教育・勤労・納税に次ぐ国民の義務にする>……。
しかし、街頭で「まじめ」に訴えても、誰も立ち止まらない。結局、選挙の勝敗を左右するのは組織であり、知名度という現実。「多数派に立ち向かうには、目立つしかない」。奇矯なパフォーマンスはそんな不条理への抵抗でもあるのだ。
「あの人は今の政治や政治家にも不満があるんだと思う」。マックさんら泡沫候補の姿を追った映画「立候補」で、2013年の毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞を受賞した藤岡利充監督(37)は言う。
政治に不満がある時、人はどうするか。藤岡さんによると、家でぐちる▽外でがなる▽投票へ行く−−などのほかに「立候補」がある。それには供託金が必要だ。都知事選は300万円。得票数が有効票数の10分の1未満だと都に没収される。没収され続けているマックさんは「(没収は)痛い。それでも、その価値はありますよ。立候補者として堂々と突っ込んでいける」。
12年の衆院選。「少数派の声も聞いてくれ」。マックさんは、東京・秋葉原で演説をした安倍晋三自民党総裁に直訴しようと現場に乗り込んだ。待っていたのは「帰れ」「邪魔だ」のヤジや怒号。同作で撮影を担当した木野内哲也さん(42)はカメラ越しに怖くなったという。「政治に限らず、自ら率先して参加する人を見下すのでなく、サポートする世の中にしなくちゃいけないと感じました」
マックさんの目はすでに次の戦いに向いている。「俺は出るよ」。関西のある二つの首長選の名前を告げた。
毎日新聞 2月14日(金)10時9分)

正直、今後も苦しいでしょうね。
だって、誰もそんな全うな政治、望んでないでしょ?