テクノ!

おばさん、おじさん踊る…村の廃校がテクノ基地
京都府南部の山あいにある人口約3000人の南山城村が、欧州生まれのテクノポップバンドの発信基地になっている。
テレビ番組にも音楽を提供し、地元のライブは世代を超えて盛り上がる。村おこしも後押しする勢いだ。
昨年12月、村内の廃校・旧田山小の木造の講堂に、キーボードの無機質な音が響いた。村の若者と移住者が企画した「ホット・ビレッジ・フェスティバル」だ。
村内外から約100人が集まり、テクノバンド「Apotheke(アポテケ)」のメンバーが作り出すリズムで踊った。近所のおばさん、おじさんも踊る。三重県名張市の会社員女性(30)は、「田舎の村とテクノの組み合わせが面白い」と、毎週のように村に来るという。
◆ファン駆けつけ 
宇治茶の畑が広がる少子化の村がこうなったのは、3年前、アポテケの作曲担当・里(さと)ロビンさん(30)が拠点を村に移してからだ。
アポテケはドイツ語で「薬局」。人を癒やす場所を意味する。里さんがベルリンに住んでいた2007年、日本人ボーカルの牧野慎吾さん(30)やドイツ人作曲家ら約20人で作った多国籍の音楽集団だ。欧州各地でライブを行うほか、日本の女性ユニット「Perfume(パフューム)」のライブ音源も担当した。
里さんの日本人の父とイギリス人の母は芸術家で同村にアトリエがある。里さんは3年前に帰国して村を訪ね、「のびのびと音楽を作れそうだ」と、移住を決めた。音楽レーベルの運営会社も起こし、昨年6月には、活動をサポートする日本人メンバー2人も村に移住。NHK・Eテレの番組「ハートネットTV」に提供したテーマソングも村でレコーディングした。
旧田山小の校舎を利用したカフェで月1回ライブを始め、神戸や大阪からファンが集まるようになった。村の人たちは当初、いぶかしげに見ていたが、里さんらが、イベントで地元産品を売る場所を作るなど、地元の若者らと積極的に関わる姿を見て、活動を好意的に受け入れ始めた。
1993年に約4200人だった村の人口は3047人(昨年12月末現在)に減り、2003年まで4校あった小学校は一つに統合された。その村を選んで、外国で活動する里さんたちが来たことは、地元の人たちの刺激にもなった。
◆村おこし 
村の産品を使った商品開発に取り組む主婦(64)は時々ライブを見に行く。「彼らのおかげで村のよさを再発見できた」という。森本健次・村魅力ある村づくり推進室長(46)も、「村民に魅力を発信しようという意識が高まった」と言う。
里さんらは、16年度に村内に完成する「道の駅」の整備内容を話し合うワークショップにも参加している。「村の人たちと関わることで生まれた気持ちの変化も音楽に反映されていく。村の内外をつなぐ懸け橋になりたい」と話す。
(読売新聞 1月24日(金)7時53分)

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