楽園なんて存在しない

スラム化に苦しむ「楽園」=人口過密で失業、薬物横行―モルディブ
身を寄せ合うように林立するコンクリートの建物、狭い路地を駆け抜ける無数のバイク。「インド洋の楽園」と称されるモルディブだが、首都マレはそのイメージからほど遠い。観光に代わる産業が育たない中、都会に押し寄せた若者は職にあぶれ、違法薬物に走る。「楽園とスラム。モルディブには二つの国が存在する」と住民は語る。
アミナト・リシュファさん(29)は8月、政府官舎の清掃作業員の仕事に応募したが、断られた。3〜13歳の子供3人と母親を抱え、収入は月3000ルフィア(約2万円)の生活保護手当だけ。食料の大半を輸入に頼るモルディブの物価は高く、隣人が分けてくれた1匹の魚でカレーを作り、水を足しながら週の半分をしのぐ。
「子供らに満足に食べさせてあげられない」とリシュファさん。平屋建ての住宅に祖母ら親戚10人と同居し、所狭しと洗濯物が干された6畳ほどの部屋には8人が寝起きする。ベニヤ板を張り合わせた壁は薄く、隙間だらけのトタン屋根から雨が吹き込む。
面積約1.9平方キロに10万人が住むマレは、世界一人口密度が高いとされる。ほかの島から教育や仕事を求めて「上京」する若者は後を絶たず、人口は増えるばかり。失業率は3割近く、国内の違法薬物の使用者は2万〜3万人と推定される。
モルディブ人権委員会は8月の報告書で、マレ住民の7割は過密住居で生活していると指摘。「こうした環境下では換気や衛生、プライバシーが不十分で、国連が定義する『スラム』に容易に当てはまる」と発表した。
開発コンサルタントのシマド・サイード氏は「1島1リゾート政策では観光地が隔絶され、旅行者の落とす金が国民に還元されない」と批判。地元民が住む島に旅行者を呼び込む必要があると語る。
地元住民は「楽園」モルディブをどのように見ているのか。リシュファさんに尋ねた。「もしそんな所があるのなら行ってみたい」。リゾート島で見た、透き通る海に似つかわしくない苦い笑みが返ってきた。
時事通信 9月16日(月)15時44分)

しょうがない。
金持ちしか見えないイリュージョンだから。