どんな番組を作っても

「ライブ志向」で真っ向勝負、4月スタート音楽番組の特徴
大宮エリーが単独司会&構成を務める『アーティスト』(TBS系)。「カラオケアテブリ禁止のガチ生演奏」としてスタジオにアーティストを招く
トークバラエティの要素を大きく打ち出した音楽番組はすっかり浸透していたが、ここに来て生歌・生演奏にこだわった音楽番組が増えている。生活スタイルや時代の空気の変化とともに、制作側も「この時間、このチャンネルでしか観ることができない貴重な瞬間」の提供を強く意識するようになったのだろうか。原点回帰する音楽番組の今を追った。
■原点回帰する音楽番組。4月新番組の主流はライブ
40年以上続くフジテレビの老舗音楽番組『MUSIC FAIR』が口パクを受け入れないとした決定がネットを賑わせた。これは同番組プロデューサーを務めるきくち伸氏が自身のブログ「きくちPの音組収録日記」で発言したもので、「2月6日の会議・全会一致で決めました」と報告している。
僕らの音楽』や『堂本兄弟』など息の長い音楽番組を多数手がけるきくち氏は、本誌3月4日号でもアーティストの生歌・生演奏を良質なクオリティで届ける番組作りやスタジオワークのこだわりについてを語っている。
音楽番組のトークバラエティ化のトレンドが長らく続いたが、昨年末その象徴的な番組である『HEY!HEY!HEY!』が18年の歴史に終止符を打ち、潮流は確実に変わり目を迎えている模様だ。この4月にスタートした新番組には、音楽番組の原点とも言えるライブで直球勝負する番組が目立っている。
日本テレビの『LIVE MONSTER』は、「ライブでしか味わえないMONSTER達による極上のパフォーマンスをお届け」を番組コンセプトに、毎週1組のミュージシャンがライブを披露。ライブハウスほどの距離感で熱く盛り上がる観覧客も、ライブ感を演出している。
同じく日本テレビで始まった『ミュージックドラゴン』も、タカアンドトシを司会にバラエティ要素は盛り込まれているが、番組の中核となるのは複数アーティストによるスタジオライブである。アイドル、バンド、ソロシンガーとジャンルをまたいで共演させるブッキングも特徴だ。
■生歌・生演奏のアピールで次世代アーティストを応援
テレビ東京の『ザ・ミュージック』は、毎週1組のアーティストに密着したドキュメンタリー風の音楽番組で、これまでに広瀬香美ムッシュかまやつ尾崎亜美ら、ベテランを取り上げている。一方で若手を紹介するコーナーも常設しており、毎週1組の「上質な音楽性」を持った次世代アーティストがスタジオライブを披露する。
同じくテレビ東京で始まった『超流派』はより次世代に寄った番組で、クラブ系ミュージシャンやボカロPや踊り手などを紹介。主にネットで活動するアーティストのリアルなライブの模様も取り上げ、ライブならではの魅力を伝えている。
また、脚本家や映画監督、コピーライターなど幅広く活躍する大宮エリーが単独司会と構成を務めるTBSの『アーティスト』は、「カラオケアテブリ禁止」というコンセプトで注目が集まっている。
フジテレビでスタートした『ASIAVERSUS』は台湾、韓国、インドネシアのテレビ局と協力し、アジアの新たな楽曲やクリエイターを発掘するオーディション番組。応募こそYouTubeなどへの投稿でできるが、ファイナリスト2組はスタジオライブで一騎打ちする。
『LIVE MONSTER』や『ミュージックドラゴン』などを担当する前田直敬プロデューサーは、昨年のインタビューで「震災以降、視聴者から音楽の真価を改めて実感したという投稿が増えました」(12年3月5日号)と、視聴者の音楽との向き合い方が変わっていることを指摘し、「だからこそ今、音楽番組は舵の取り方を間違ってはいけない」と音楽番組が原点回帰をする意義を語っている。
アーティストの真髄をリスナーの心に深く届けるのは、音楽にほかならない。この音楽番組のライブ回帰の流れが、音楽業界全体にどのような効果をもたらすのか、注目を続けたい。
(オリジナル コンフィデンス 4月28日(日)7時0分)

楽曲次第ですよ。
曲がつまらなかったら、ライブもへったくれもないんだし。