静かなるゴジラ

松井氏、心境語る「名将ばかりに導かれ幸運」
巨人、米大リーグ・ヤンキースなどで活躍し、昨年末に現役を引退した松井秀喜氏(38)が、引退会見後初めて心境を語った。3カ月が経過し、「引退という言葉は使いたくない」とした上で“延長戦”として今後も野球界に携わることを明言。指導を仰いできた各監督への感謝の意を改めて口にした。


昨季限りで選手生活に区切りをつけた。昨年12月の記者会見から3カ月、常に野球を第一に考えていた生活が終わり、ほっとした気持ちも、物足りなさもある。ただ引退という言葉は使いたくない。これまでと同じ緊張感と、少し広い視野を持って、野球に向き合いたい。僕がこれから臨むエキストライニングズ(延長戦)に、お付き合いいただければと思う。
会見では、長嶋監督との出会いがなかったら今の僕はなかったという思いを話した。一方でその後お世話になった監督に触れられなかったのは残念だった。名監督ばかりに導かれた選手生活だった。感謝を込め、まずは監督について話したい。
巨人の原監督の下でのプレーは2002年だけだったが、日本一となることができた。原監督は注目を受け止めることが自然とできる人。高校1年時からスターで、常に第三者の目を気にしなければいけない立場だったはず。注目を避けようとする人もいるが、そういうところが一切ない。
巨人で特別な地位を築く人はこうでなくてはいけないと思った。監督と選手としてだけでなく3年間同僚としてプレーし、主力選手のあるべき姿を間近に見られたことも、すごく勉強になった。
ヤンキーストーリ監督からは何かを押しつけられたことがない。ありのままの自分を受け入れてくれた。
忘れられないのは不振だった1年目の03年6月初め。「結果は出ていないけど、働きには満足している」と言ってくれた。そのうえで「少しベースに近づいてみたらどうだ」と。その日僕は言われた通りにし、二塁打3本に本塁打。厳しいが、深い愛情があり、言うことを聞きたくなる。
トーリ監督を含め、ヤンキースのジラルディ監督、エンゼルスのソーシア監督、アスレチックスのメルビン監督、レイズのマドン監督は最優秀監督賞を受賞している。所属した全チームで名将に出会えたのだから幸運としか言いようがない。
僕がどのような道に進むかは分からない。ただ一流の指導者から得たことは必ず役立つはずだ。“延長戦”の途中で、監督一人一人の顔を何度も思い浮かべることになると思う。 (元野球選手)
サンケイスポーツ 3月28日(木)5時04分)

引退試合がなかったのは、「引退じゃない」からか。
彼らしい。