進化を拒否したもの

ザトウムシ、3億年前からほぼ進化せず
ザトウムシ、別名「あしながおじさん」と呼ばれるクモに似た生物は、3億500万年前から現在と同じ不気味な姿をしていたという。最新のコンピューターモデルにより、ザトウムシは早くから現在の姿に落ち着いていたことが明らかになった。
研究チームは、フランスの鉱床から20年以上前に見つかった化石を基に、古代のザトウムシ2種の3Dモデルを作成した。それぞれ、カイキザトウムシ亜目とヘイキザトウムシ亜目というグループに属する種だ。
チームの一員でロンドン自然史博物館の古生物学者ラッセル・ガーウッド(Russell Garwood)氏は、これらの化石は「炭酸鉄の塊である菱鉄鉱の中に保存されていた」ものだと電子メールでの取材で述べている。今回の研究は、ガーウッド氏がイギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンに在籍していたときに行われた。
この鉱物は「岩石の生成初期に沈殿するもので、ときとして生物の死骸の周囲に沈殿し、(死骸が)押しつぶされるのを防ぐ。その後、死骸は朽ち果て、生物の形をした空洞が残る」。
今回の3Dモデルによる再現は、ザトウムシが古代から驚くほど変わっていないとする仮説を裏付けるものだ。これに対し、同じクモ綱に属するクモやサソリの仲間は、当時まだ現在の姿に進化する途上にあった。
ガーウッド氏によると、例えば3億年前に生きていたクモ類には、まだ背半部に体節の名残があったが、現在のクモ類にこの特徴はみられないという。
同じく3億年前に生きていたサソリ類も、どちらかといえばまだ原始的だったとガーウッド氏は述べている。
現在の種と異なり、古代のサソリは「複眼の側眼を持ち、中眼は甲殻の中央ではなく前方に近いところにあった。また、肺の開口部の位置も異なっていた」という。
◆古代のザトウムシは森に生息?
今回の3Dモデルによって、化石で見つかった古代のザトウムシ2種は、いずれも森に生息していた可能性が高いことが明らかになった。
例えば、カイキザトウムシ亜目に属する化石のモデルは、長い肢が末端部で曲線を描いている。この特徴は、現在のザトウムシの一部が、葉から葉へ乗り移る際に植物をつかむために有するものだ。
一方、ヘイキザトウムシ亜目の化石は、背中にトゲを持っていた。これは、捕食者をおどかすのに用いられた可能性がある。
現在のザトウムシも、林床の湿った木屑の中に生息する種に似たようなトゲがあり、古代のヘイキザトウムシ亜目も同様の生活をしていたのではないかと研究チームは考えている。
2つの異なる系統のザトウムシが3億500万年前から存在していたという事実は、クモ綱の仲間のうちで、ザトウムシは最も早く進化上の大きな変化を迎えた生物に属するとの見解を裏付けるものだと研究チームは指摘している。
「これらの研究成果は、クモ綱の生物のうち、ザトウムシは最も初期に枝分かれして独自のグループを形成した部類に入ることを示している」とガーウッド氏は述べている。
ザトウムシの化石に関する今回の研究は、オンラインジャーナル「Nature Communications」誌に8月23日付で発表された。
Ker Than for National Geographic News
ナショナルジオグラフィック式日本語サイト - 8月29日(月)14時32分)

進化しなかった理由に興味はありますね。