悪しき自民党と同じ

<民主代表選>前原氏、追い込まれ出馬へ
前原誠司前外相(49)が菅直人首相の後継を選ぶ民主党代表選に立候補する意向を固めたのは、事前に準備した政権獲得戦略に基づくというより、出馬せざるを得ない状況に追い込まれ、カジを切ったというのが実態だ。周囲やグループ幹部にはぎりぎりまで「準備が整っていない」という慎重論もあった。ただ、経歴、知名度などから、党内には前原氏を本命視する見方が強い。これで代表選の構図は変化することになり、他候補は戦略練り直しも迫られそうだ。
◇「1年後に選挙の顔」戦略崩され
前原氏は周辺に「今回は静観する」と繰り返してきた。今月下旬に訪韓、来月上旬に訪米の計画を組んでいたことからもそれが本心だったことがうかがえる。今月2日には、党内中間派の若手十数人に招かれた会合で「次の次の代表選が大事だ」と語っていた。
前原氏の政権獲得戦略は、今回は野田佳彦財務相(54)を支援、来年9月の代表選に勝利するというものだった。増税と大連立という選挙向けではない課題を「野田政権」に託し、一定のメドが付いた段階で「選挙の顔」として無傷で登場する思惑もあった。大連立に関して「1年限定」と繰り返し主張したのもこのためだ。
前原グループ幹部も「次期首相はセットアッパー(中継ぎ)で、抑えの切り札は前原氏だ」と解説していた。
ところが、この路線は早々につまずく。増税への党内の反発が強いだけでなく、大連立への自民、公明両党の対応も芳しくない。新首相が来年9月まで持たずに衆院解散・総選挙に追い込まれ、民主党が政権から転落する可能性も十分あるという分析が浮かんだ。
「次の次を目指したら民主党政権で4人目の首相になる。我々が批判してきた自民党と同じになる」
18日の前原グループ会合では、新人衆院議員からこんな「正論」に合わせて前原氏に出馬を求める意見が陳述された。選挙基盤の弱い若手議員を中心に党内で野田氏への懸念が広がるのと並行して、前原氏への期待が高まったことが背景にあった。
先週末には前原、野田両グループの新人衆院議員数人が、共同で前原氏に出馬要請をする場面を作る方向で動き始めた。前原氏は親しいグループ幹部に「引くも地獄、進むも地獄だ」と漏らした。
一方、前原氏が出馬に慎重だったのは、外相辞任(3月)につながった外国人献金問題が再燃しかねないという懸念もあった。前原氏出馬に対し、閣僚の一人は「国会がメタメタになる。新しい問題が出てきたら予算委員会がもたない」と顔を曇らせた。
実際、自民党は手ぐすねを引く。山本一太参院政審会長は22日の記者会見で批判した。「外国人献金問題で十二分な答弁ができずに半年前に外相を辞めた方が、代表選挙に出るのはおかしい」
◇「反小沢」VS「親小沢」浮上
「甘い代表選じゃなくなった。反小沢と親小沢の血みどろの争いになる。我々のような中間派なんて吹っ飛んでしまう」。樽床伸二国対委員長(52)に近い若手議員は前原氏出馬をこう評した。
代表選はこれまで、現執行部路線を引き継いで増税、大連立を主張する野田氏と、その他候補という構図とみられていた。ところが、前原氏は「円高が進み、電力供給も厳しい時に復興増税ができるわけがない」と主張、大連立についても「争点にすると自民党を利する」という立場だ。社会保障政策でも海江田万里経済産業相(62)、鹿野道彦農相(69)との違いは少なく、政策的な対立点は薄まっていきそうだ。
それに代わる形で浮上したのが小沢一郎元代表の処分問題。海江田氏、馬淵澄夫国土交通相(50)らが処分見直しに言及した。これに対し、前原氏は18日、グループ会合で「カネで子分を集める政治手法は許してはいけない」と表明。元代表が念頭にあるとみられ、21日には処分維持の考えを示した。
政策面の争点がぼやける「反小沢対親小沢」の戦いは、菅首相元代表が争った昨年9月の代表選の再来だ。しかし、東日本大震災の復旧・復興、エネルギー問題など課題山積の中、政策よりも党内の主導権争いを優先させるようなことになれば、民主党に批判が集まるのは必至だ。
このためか、前原氏と元代表の接点を探るかのような動きも出始めた。前原グループ幹部の仙谷由人官房副長官は22日、国会内で元代表と近い輿石東参院議員会長と会談。輿石氏を通じて元代表との会談を探っているとの見方も出ている。「小沢さんは19日に『鹿野はだめだ。海江田はタイミングを逸した』と言っていた。処分解除など、どうでもいい。前原氏と会談することもあり得る」。小沢グループ幹部は語った。
毎日新聞 - 8月22日(月)22時10分)

抑えの切り札のつもりが、滅多打ちに遭ったりして・・・