暑いといらいらする

地球温暖化で人間が攻撃的になる?
地球温暖化によって世界各地で暴力が増えるかもしれない。気温の上昇で人間は攻撃的になり、一触即発の状況が生まれるとする最新の研究が発表された。
この研究は、アメリカ政府が発表した1950〜2008年の年間平均気温のデータと凶悪犯罪件数の統計とを照らし合わせ、これを基に、アメリカでは平均気温が摂氏4.4度上がると殺人と暴行の件数が年間約10万件増えると推定している。
気候変動に関する政府間パネルIPCC)が作成した2007年の報告書では、温暖化対策を取らないと2100年までに地表の温度が摂氏1.1〜6.4度上昇すると予測されている。
アメリカにあるアイオワ州立大学の社会学者で研究の共著者のマシュー・デリシ氏によると、気温の上昇で人間の攻撃性が強まるのにはさまざまな理由があるという。
ミシガン大学で人間の攻撃性を専門に研究する心理学者ブラッド・ブッシュマン氏もこの研究に賛同する。「気温が高いと人間は不機嫌で短気になる。そういう人は攻撃的になりやすい」。同氏はこの研究に参加していない。
しかし、気温の上昇が人間の行動に直接影響を与えるだけではないとデリシ氏は指摘する。例えば、暖かくなると人は外出することが増え、人と接触する機会が増える。「外出することが多い夏は犯罪に巻き込まれる可能性も高くなる」。
さらに、地球温暖化が引き起こす気象パターンの変化によって、貧困、食糧不足、栄養不良が増加する可能性がある。これらはすべて、暴力的な傾向のある人間の攻撃性を強めるリスク要因だという。
地球温暖化はまた、環境の激変などによって移住を強いられる“エコ・マイグレーション”が増加することで、暴力を誘発する可能性もある。「住む場所を失った人々が国境を超えて移動すれば、人々の間で対立が増える可能性がある」とデリシ氏は話す。
例えば、ハリケーンカトリーナの被害を受けた多くの人々がニューオーリンズからヒューストンに移り住んだが、その直後にヒューストンでは殺人事件が急増した。デリシ氏によると、ヒューストンに移動したニューオーリンズのギャングと地元のギャングの衝突によるものがほとんどだと当局は見ているという。
この種の小競り合いが地球規模で多発すれば、社会不安が拡大するだけでなく、大量虐殺や戦争が起こる可能性もあると研究は指摘する。
カナダにあるサイモンフレーザー大学の犯罪心理学者エホール・ボヤノフスキー(Ehor Boyanowsky)氏はこの研究に参加していないが、地球温暖化が攻撃性を高める可能性があるという説は過去の研究でも裏付けられていると話す。「私自身の研究でも、気温が上昇すると脳の温度が上がり、認知機能障害や情緒的ストレスが起き、攻撃的になって、暴力犯罪の増加に繋がるという結果が出ている」。
また、熱は心拍数の上昇など生理的状態を高める一方、同時に気力の減退を感じさせるという奇妙な効果を持つとミシガン大学ブッシュマン氏は付け加える。「暑い時に興奮しているのに気力が減退していると感じていれば、挑発に過剰反応することになる」。
この研究は2010年3月15〜18日にオーストラリアで開催されたシドニー社会心理学シンポジウム (Sydney Symposium of Social Psychology)で発表された。
ナショナルジオグラフィック式日本語サイト - 3月26日(金)15時31分)

誰にでもわかりやすい研究結果の帰結かなぁ。