火星の湖

火星のクレーターに湖、鉱物から確認
火星にはかつてミシガン湖(約5万8000平方キロ)ほどの大きさの湖が存在していたかもしれない。その証拠となる鉱物が、火星の南半球にある衝突クレーターの内側に“バスタブリング(浴槽の水際にに残る湯垢の輪)”状に残っているのが発見されたのだ。“化石湖”の化学構造を研究する場所として、このコロンブスクレーターが最適であることになる。
研究を率いたコーネル大学のジェームズ・レイ氏によると、水路の跡と思われる地形の存在や、三角州だったことをうかがわせる堆積物などを手掛かりに、これまでに数百個のクレーターが化石湖の候補として挙げられている。
しかし、NASAの火星探査機マーズ・リコナイサンス・オービタ(MRO)から新たに送られてきた画像から、水がないと形成されない含水鉱物である粘土と硫酸塩が交互に重なった地層がコロンブスクレーターにあることが明らかになった。
「オーストラリア西部にある、酸性度が比較的高く塩分が濃い湖の中にも、コロンブスクレーターと同様の鉱物が見られるものがいくつかある」とレイ氏は語る。さらに、このクレーターは、地下水だけを水源としていたと考えられる数少ない化石湖の候補のひとつだという。「雨が流れ込んでいたとしたら水路があるはずだが、コロンブスには無い」。
コロンブスクレーターができたのは、約46億年前から35億年前まで続いたノアキアン期という温暖湿潤な時代である。
これまでは、付近の水路や何層にも重なった岩石の露出部などから、ノアキアン期に隕石の衝突でできたグセフクレーターが化石湖の湖底部分の典型と考えられていた。
しかしレイ氏によると、2004年に火星探査車スピリットがグセフクレーターを調査したところ、火山性の玄武岩しか見つからず、含水鉱物は発見されなかった。含水鉱物が無ければクレーターに水があった確証が得られないため、グセフやほかの同様のクレーターが化石湖であることを疑う意見も出始めた。
レイ氏の研究チームは、鉱物が吸収・放射する光の波長から鉱物の種類を判別する近赤外分光計を使って、コロンブスクレーターに粘土と硫酸塩の層がそれぞれはっきりと形成されていることを突き止めた。これこそ大きな湖がゆっくりと蒸発した証拠である。
コロンブスクレーターの湖は、現在は休火山となっている、近くのタルシス台地の火山が大量の溶岩を噴出していた時期にできたのではないかとレイ氏らは推測する。蓄積した溶岩の重量で火星の地表が湾曲し、これにより地下水の経路が曲げられ、その一部が地上に押し出されて、そこにあったコロンブスクレーターを水で満たしたと考えられる。
コロンブスクレーターの内側から発見された鉱物の種類から見て、少なくとも湖ができた当初の水は、生物が住みやすいものだった可能性がある。例えばレイ氏によると、このクレーターの地層には淡水に比較的近い水で形成される石膏が大量に含まれているという。「つまりこの湖は、初めはあまり塩分が濃くなかったのだ」。塩分が多過ぎると生命にとって有毒であることを考えると、「生命が住みやすい環境だったはずだ」。
しかし、生命が誕生し進化するのに十分な期間、湖水が液体のままだったのか、すぐに凍ってしまったのかは、今回送信された画像だけでは判断できない。
ノアキアン期の火星は大気が厚く、大きな湖を液体に保つのに十分な熱を閉じ込めていたが、太陽放射によって火星の大気は次第に剥ぎ取られ、現在のような冷たく乾いた惑星になったと考えられている。
コロンブスクレーターの湖が液体だろうと氷だろうと、それが消えたあとには同じ種類の鉱物が残っただろうとレイ氏は指摘する。湖が氷だったとしたら、地熱で氷の下の湖底に沿って液体の水のポケットができなければ生命は誕生しなかっただろう。「湖が凍っていたとしたら氷が長期間存在しただろうから、湖底にできた水たまりは、たとえ小さいものでも、生命が進化できる程度の期間残っていたかもしれない。もっとも、かなり冷たくて塩辛い水たまりだったはずだが」。
ナショナルジオグラフィック式日本語サイト - 11月27日(金)11時27分)

ホントにいろんなことがわかってきて、すげえな・・・