DON’T TRUST CHINA

中国、安全を“輸入”する「食の国」
日本貿易振興機構(JETRO)がタスクチームを作って、中国の今後10年のリスクとそのインパクトをさまざまなデータを駆使して推測したところ、環境汚染による危機が最も可能性が高く、その影響は計り知れないという結論になった。
「中国−21のリスク」(ユーラシア・グループ編著)によると、環境危機というのは水不足、大気、水質、土壌汚染などを指しており、具体的には工場から有毒物質が流れ出し、風下や川下の数百万人に被害が生じるといった危機のことだ。
この中で土壌汚染はいま、話題の中国食品の安全問題に直結するものだが、中国科学院によると、工場廃水に含まれる重金属に汚染された耕地は2000万ヘクタールにも及び、これは中国の耕地総面積の何と5分の1にもなっている。さらに農薬の使いすぎによってほぼ回復不能な耕地は1300万ヘクタールから1600万ヘクタールにもなっている。
これは「食の国・中国」にとってまさに死活問題だ。例えば上海の市場に出回る揚子江デルタ周辺で栽培されるコメは「有毒米」という異名をもらってしまった。理由は国際基準の15倍に達するカドミウムが検出されたからだ。
まだ、ある。日系食品検査会社が上海周辺で取れる野菜の残留農薬検査を無作為抽出で行ったところ、最低でも日本の基準の6倍に達していた。
もちろん残留農薬野菜を食べてすぐ体調を崩すわけではないので、即座に危機的状況にあるのではないが、1980年代後半には上海周辺の農家が農薬の使用方法を知らず、1000倍に薄めなければならないところをそのまま使用して300人以上が死亡する事故が起きている。
それ以降、上海市の住民は残留農薬を薄めるために野菜を水に30分から1時間漬けることが“常識”になっている。だが、最近になってそれでは効果がないとの意見が出され、市民の間にとまどいが生じている。
地元テレビが2時間説を唱え始めたほか、高級ホテルの料理場から「長時間水に漬けておくと農薬がむしろ野菜のしんにまで浸透する心配がある」との見方が出され始めたからだ。
いずれにせよ残留農薬や重金属から中国の食材を守る決定的な方法がないことが問題なのだ。
こうしてみると、日本産米の中国向け輸出解禁とは、日本発の「安全の輸出」という文脈で理解した方が分かりやすいような気がする。今月26日に北京と上海で同時販売される安全米の値段は2キロで3000円前後と中国米の20倍にもなる。
これが高すぎるのか、それとも身の安全を考えればむしろ安いのか。
中国では日本向け野菜やコメはすでに外資系企業経営の農場で栽培されるようになっている。例えば中国東北3省で作られるアキタコマチは生産量が年間12万トンにもなっているが、うち2万トンが中国国内で消費されるようになっている。もちろん大都市の日本レストランなどで使われるものもあるだろうが、少々高くてもと購入する中国人家庭が確実に増えているのは確かだ。
野菜についても元日系商社員が始めた有機野菜の栽培が年々、人気を集め、高価なのに安全意識の高い家庭で受け入れられるようになっていることもそうした現状を裏付けている。
要は中国の「食の安全」が破綻(はたん)していることを住民は十分に承知している。そして「メード・イン・チャイナ」への不信感を強めているということではないか。
産経新聞 - 7月24日15時35分)

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