無理もない

相次ぐ音楽番組終了で“新曲披露”の場が激減 プロモは完全にスマホに移行か?
オリコン 4月12日(火)8時40分)


これまでアーティストが新譜プロモーションの場として重要視されてきた『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)、『MUSIC JAPAN』(NHK総合)。日曜の24時台に放送されていた『MJ』がこの春で終了し、ライブ形式で複数のアーティストが“新曲”を歌うことができるレギュラー音楽番組は『Mステ』、さらにフジテレビ系で『水曜歌謡祭』をリニューアルし放送中の『Love music』のみとなった。しかし、各番組ともに1回に出演できるのは多くてもせいぜい5組程度。『NHK歌謡コンサート』(火曜20時〜)は『うたコン』(火曜19時30分〜)として再出発し、J-POPの歌手の出演も増えたものの、やはり演歌・歌謡曲歌手メイン。特に新人アーティストにおいては、音楽番組での新譜プロモーションが難しくなっている状況なのだ。
◆情報番組などに活路見出すも“パフォーマンス”を見せられないジレンマ
ザ・ヒットパレード』『夜のヒットスタジオ』『ザ・ベストテン』など、かつて音楽番組が絶大な影響力を持っていた時代があった。しかし、近年はインターネットを介して音楽情報が容易に入手できるようになったことや、CDマーケットの縮小などで視聴率が伸び悩んだこともあり、『うたばん』(TBS系)、『HEY! HEY! HEY! MUSIC CHAMP』(フジテレビ系)、『僕らの音楽』(フジテレビ系)など、若者に人気のあるレギュラー音楽番組が次々と終了。その後、TBSは『ザ・ミュージックアワー』『火曜曲』、フジテレビは『水曜歌謡祭』など各局、音楽バラエティ番組を打ち出したものの、いまいち数字が振るわず、ともに“後継”の音楽番組は23時以降の枠に移動するなどしている。
また、最近は複数のアーティストがライブ形式で出演するスタイルの番組よりも、少数のアーティストにフォーカスして掘り下げるスタイルの番組やカバーを披露するタイプの番組が増加。もちろん、こうした番組に出演できるのはすでにブレイク済のアーティストやベテランがメインで、これからの新人はなかなか出づらい。もちろん、音楽業界もただ嘆いていたわけではなく、『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)といったゴールデンタイムのバラエティやカラオケ番組、朝の情報番組に活路を見出すなど、試行錯誤を重ねてきたし、それをきっかけに成功したアーティストもいるが、やはりアーティストの本分は“パフォーマンス”。そのため、各レコード会社はライブ形式を保っている『MJ』『Mステ』出演を目指し、番組担当者に積極的に働きかけを行ってきた。しかし、その一角が崩れてしまったのだ。『うたコン』にJ-POP歌手の出演が増えたといっても、朝ドラをテーマにした第1回目のラインナップは演歌・歌謡曲歌手がメインで、J-POPはAKB48クリス・ハートなど。新人が出る隙は全くない。
スマホに特化した縦型MVも話題 従来にない発想が大事
とはいえ、音楽リスナーがコア化し、好きなアーティストの情報がネットで簡単に手に入れられるようになった今、音楽番組に頼ってばかりはいられないし、出演しなくても新人アーティストがプロモーションを仕掛けるツールはいくらでもある。例えば、ここ数年、急激に増えているのが、発売日に合わせて「ニコ生」を実施するアーティストだ。ぶっちゃけトークをしたり、定期的にMVを流したり、ユニークな企画に挑戦したりする発売日特番が当たり前となりつつあるのだ。とくに「24時間生放送」など、長時間にわたる放送はTwitterトレンドなどネットで話題になりやすく、アーティストに興味がない人も視聴・購買につなげられる可能性もある。
また、スマートフォンを使った新たなプロモーション手法も注目を集めている。女性6人組アイドルユニット・lyrical schoolは、27日発売のメジャーデビューシングル「RUN and RUN」の“縦型動画”MVを発表。名前の通り、従来のテレビやPC画面で観るための“横型”の映像ではなく、スマホで観ることに特化したもので、単純に縦の映像というだけなく、撮影自体をスマホで行い、カメラやTwitterVineなど、メンバーがあらゆるアプリを行き来しながら歌って踊る。HKT48指原莉乃スガシカオいとうせいこうなど著名人が反応したことで、大きな話題となった。今後はこうしたスマホならではの話題作りが増えていくことだろう。
勢いがなくなったといっても、テレビの影響力は絶大。アーティストがパフォーマンスを見せられる音楽番組が相次いで終了している今、音楽業界は模索を続けている。しかし、従来にない発想で仕掛けたことで、むしろ思わぬところからヒットが生まれる土壌はできているのかもしれない。

音楽自体が聴かれなくなっている、なんて話題も目にする。
売る手法も大事だが、心に響くものは生まれているのだろうか。