落城寸前

業績悪化イオンが捻り出した“薄氷”最終黒字の正体
(ダイヤモンド・オンライン 3月22日(火)8時0分)


流通大手のイオンは2月12日、2016年2月期の連結最終利益の予想を、それまでの425億円から50億円へと下方修正した。
前期比88%減という大幅な引き下げだが、それさえも「“お化粧”して、強引に作った決算なのでは」との見方が市場関係者の間で広がっている。
きっかけは、下方修正から11日後の23日に、イオンと子会社のダイエーとが発表した3枚のプレスリリースだった。これらのリリースが意味することは何なのか。テクニカルになるが簡単に説明する。
まず、退職金や年金を支払うための積立金が不足していたダイエーは、その解消を目的とし、240億円を拠出して年金基金を設立。この基金に対しイオンは、保有していたクスリのアオキ株などを売却し、188億円の売却益を得た。
一方、イオンの100%子会社であるイオンリテールは、年金資産の積み立てが退職給付債務を上回っていたため、超過分の277億円を解約。イオンは、前払い年金費用を差し引いた136億円を返還益として得た。
その結果イオンは、連結ベースで見ると、税金の支払いなどを考慮しない単純計算で324億円もの特別利益を手にしたことになるのだ。
つまり、この特別利益がなかりせば、274億円の最終赤字に転落していた可能性が高く、「最終黒字にするために考え出した、苦肉の策だったのではないか。まさに薄氷の決算といえる」(流通関係者)との見方がもっぱらだ。
● 違法ではないが“禁じ手”
もちろん、こうしたスキームはルールにのっとっており、決して違法ではない。しかし、「いくら積み立て超過だとはいえ、安全運用すべき年金や退職金の原資に手を付けるのは“禁じ手”。運用が好調な間はいいが、ひとたび悪化したらどうするのか」(市場関係者)といった批判は根強い。
これに対しイオンは、「いずれも期初から検討していたことで、たまたま業績下方修正のタイミングと重なっただけ。直接リンクしているわけではない」とするが、「結果的にそうみられても仕方がない面はある」と認める。
ここまでイオンが苦しいのは、総合スーパーを手掛けるイオンリテールが大幅な営業赤字に陥っているから。既存店をスクラップ・アンド・ビルドしているほか、「イオンスタイル」と名付けた店舗へ改装するなど改革を進めているものの、業績悪化のスピードに追い付いていない。
また、好調な上場子会社があるものの、出資比率が50%程度のため、「最終利益として取り込めていない」(流通企業幹部)といった事情もある。
今回、イオンが使った手法は一度きりで二度目はない。本業の業績を回復させなければ、今度こそ大幅な最終赤字に転落しかねないといえる。

岡田さんも政治家やってる場合じゃないんじゃ。