気持ちよく寝たいだけなんだ

低周波音で「不眠」「食欲低下」…健康被害の相談、年200件超
(読売新聞(ヨミドクター  2月28日(日)21時20分)


機械などから出る低周波音への苦情が増えている。不眠や食欲低下などの健康被害を受けたとして、全国の自治体に寄せられる相談は年200件を超え、20年前の5倍以上になった。この間、省エネ対策で急速に普及した家庭用発電装置や給湯機器が発生源の一つとされ、隣人間のトラブルが裁判に発展するケースも出てきた。国は、こうした低周波音が不快感を生じさせることがあると認め、健康被害との関連を調べている。
◆静かな騒音
神戸市内の一戸建てに住んでいた女性(61)は2010年12月、夜明け前に「ブーン」という耳慣れない音で目覚めた。室内の電化製品に異常はなく、窓を開けると、前日に引っ越してきた隣家の家庭用燃料電池エネファーム」から聞こえる音とわかった。一定の低い音が24時間途切れず、それから3日間眠れなかった。食欲が落ち、胸に痛みなども感じて11年3月、近くのマンションに転居した。
女性はインターネットなどで原因を調べて低周波音の影響と考え、14年2月、被害防止に取り組むNPOを設立。相談があった約160人の8割超が睡眠障害を訴え、5割近くが胸の圧迫や痛みを感じていた。ただ、低周波音は人によっては聞こえず、被害が理解されにくいのが実情という。
女性は一戸建ての自宅を残しており、15年6月、隣人やメーカーにエネファームの撤去などを求め、大阪地裁に提訴。「静かな騒音の存在を知ってほしい」と訴えるが、被告側は訴訟で、「健康被害との因果関係は不明。撤去義務はない」と反論、全面的に争っている。
◆20年で5倍
環境省によると、全国の自治体に寄せられる低周波音への苦情は1980〜90年代に年20〜40件程度だったが、2000年代に急増。08年度には200件を超えた。中でも「家庭生活」を発生源とする苦情が増えており、省エネ用機器もこの中に含まれるという。
この傾向は、家庭への省エネ用機器普及の動きと重なる。業界団体によると、例えば家庭用ヒートポンプ給湯機「エコキュート」の出荷台数は累計で04年に10万台、07年に100万台を突破し、現在では約480万台に上っている。
環境省は、こうした省エネ用機器が低周波音を発することを確認。エアコンの室外機なども同様の低周波音を出すが、夜間に長時間稼働する省エネ用機器は、苦情につながりやすいとみられる。
◆因果関係
環境省は07年に作成した市民向けパンフレットで、低周波音について「不快感を抱く人もいる」としたうえで、「寝室を変える」「窓の揺れを抑える」などの対策を呼びかけたが、健康被害との因果関係については、今も「調査中」(担当者)と慎重な姿勢だ。
一方で、低周波音が健康に影響を与えていることをうかがわせる事例もある。
消費者庁消費者安全調査委員会(消費者事故調)は14年12月、隣家のエコキュートで不眠や頭痛などを発症したとする群馬県高崎市の夫妻の訴えに対し、「低周波音が関与している可能性がある」との報告書を公表。15年11月には、同様に苦情が相次ぐエネファームや家庭用ガス発電・給湯暖房システム「エコウィル」に関しても健康被害との関係を調べることを決めた。
エコキュートの普及に取り組む一般社団法人・日本冷凍空調工業会(東京)は設置業者向けのガイドブックで、周辺の住宅に配慮するため▽寝室のそばへの設置を避ける▽稼働音の反響を軽減するため壁から距離をとる▽隣家の窓と向き合わないように設置する――などの対策を促している。担当者は「健康被害との関連が不明でも苦情が出ている以上、注意喚起に努める」と話す。
低周波
1秒間に空気が振動する回数(単位はヘルツ)を周波数といい、回数が少ないほど低い音として聞こえる。バスやトラックのエンジン、変圧器、ボイラーなどから発生し、環境省によると、おおむね1〜100ヘルツの範囲。音が小さい場合、人によって不快感や圧迫感を覚えたり、あるいは何も感じなかったりと、聞こえ方が異なるという。

難しいなあ。。