なかなか面白い見解

SMAPは友情と打算の二重構造」と感じる、これだけの理由
ITmedia ビジネスオンライン 1月26日(火)8時16分)


その象徴が、ダウンタウン松本人志さんが中居正広くんから相談を受けて、「解散したくないなら木村に謝れ」とアドバイスをしたという『女性セブン』の記事だ。松本さんご本人がすぐさま「100%ウソ!」と強く否定したことを受け、1月22日に『女性セブン』側が「関係者へ取材して書いたものですが、ご本人に確認せぬまま掲載しました」と謝罪した。
どういう意図でこの「関係者」が『女性セブン』に創作話を持ち込んだかは定かではないが、「大物芸能人たちはキムタク(事務所側)に理があると考えている」という方向へもっていきたかったのではないか。というのも、「周囲から謝罪を促される中居くん」というイメージは、『週刊新潮』で独占告白を行ったメリー喜多川副社長の「謝罪にくれば受け入れるつもりだったのに、いくら待っても中居ら4人が謝罪に来なかった」という主張と見事にシンクロするからだ。
こういう「印象操作」が芸能報道ではよく行われる、というのはもはや世の常識となっているが、実はもうひとつ日常的に行われているところがある。
それは政治報道だ。
●せっせと「中居おろし」ネタをリーク
当たり前の話だが、政治記者は国会に座って議論や法案をチェックしたり、首相や官房長官の周りでICレコーダーを差し出したりしているだけでは仕事にならない。派閥領袖(はばつりょうしゅう)など有力政治家の思惑を明らかにして「政局」を読み解くことができねばダメ記者の烙印を押されてしまう。
といっても、いくら記者といえど「政治家同士の会合」に立ち入ることはできないので、親しい政治家や高級官僚から会話の内容を又聞きをする。これが政治記事に登場する「関係者」だ。彼らからリークされたネタをもとにして政治報道というのは成り立っていると言っても過言ではない。
そういう構造なので、先の『女性セブン』のような報道がわりと頻繁にある。ご本人が言ってもいないことが、尾ひれが付いてあたかも事実のように流される。
例えば、史上最も短命だった宇野宗佑総理なんか分かりやすい。セックススキャンダルが発覚後、新聞に「辞意を表明した」「もう辞めたいとこぼした」という話がどんどんでてきた。ご本人がいくら「そんなアホな」「朝から同じことばかり釈明して疲れた」と全面否定をしても途切れることはなかった。
当時、1カ月先に参院選を控えていた。不人気総理を担いでも大敗を喫するのは目に見ている。そこで、選挙前になんとか自分から辞めると言い出すように仕向けるため党内の政治勢力が、政治記者へせっせっと「宇野おろし」ネタをリークしていたというのは誰でも分かる。
今回の解散騒動でもいちはやく、一部スポーツ紙を中心に、「関係者」の談話として中居くんが「とんでもない誤解をしていたことに気付いた」「すごく後悔している」(スポーツニッポン1月15日)なんて話やら「友人に後悔メールを送った」なんて報道がバンバン出た。
「後悔」という言葉は、「自身の過ちを認めた」というイメージをつくりだす。政治抗争における政治記者芸能記者の役割がほぼ同じという事実からも、中居くんたち4人に自発的に謝罪させるよう仕向けるための勢力が、せっせと「中居おろし」ネタをリークしていた可能性は否めない。
●芸能報道と政治報道が丸かぶり
このように芸能報道と政治報道が丸かぶりしているとなると、これからのSMAPの行方を占ううえで非常に興味深い事例がある。
加藤の乱」だ。
16年前、「首相候補最有力」とまで言われた加藤紘一氏が盟友・山崎拓氏とともに自身の派閥を率いて、森首相に辞任を迫る野党の不信任決議案に同調しようと働きかけた倒閣運動のことだ。
当時、「このままでは自民党どころか日本が壊れてしまう」と訴えた加藤氏は「政界のプリンス」なんてもてはやされていた。まだネットがここまで普及していないなかで加藤氏のWebサイトは1日に5万件のアクセスがあって、激励メールが多数寄せられたという。そんな国民的支持に加え、野党とも連携することで、「勝算あり」と見込んで決起したわけだ。
が、自民党執行部が除名処分をちらつかせて加藤派の切り崩しを行ったことでこの動きは頓挫。謀反の責任をとって加藤氏は、ひとり内閣不信任案に賛同しようと議場を目指すものの、側近だった谷垣禎一氏らから「大将がひとりで突撃なんてダメですよ」「死ぬも生きるも一緒だ」なんてたしなめられるという任侠映画さながらのやりとりが全国に中継された。
おいおい、脂ギッシュな政治家の権力闘争と今回の騒動を重ねるな、とSMAPファンからお叱り声をいただきそうだが、国民的支持を得た「人気者」たちが自分たちでイニシアチブをとろうとしたところ、巨大勢力から「クーデター」として鎮圧されるという結末もさることながら、そこでかわされた「メディア戦」という点では両者は驚くほど似ている。
まず、分かりやすい共通点としては、勝敗が決した後も謀反を起こした首謀者に対して執拗(しつよう)なまでにマイナスのイメージ付けが行われる点だろう。
例えば、1月22日(金)に発売された『FRIDAY』が、騒動後初の番組収録に現われた4人が「憔悴しきっており」と報じ、なかでも特に痛々しいのが中居くんだった、と「テレビ局関係者」が述べている。
「生気がまったくなく、目はうつろ。まるで敗残兵のようでした……。全員無言で、すぐ局から出て行きました」
この「テレビ局関係者」にそのように映ったとしたらしょうがないのだが、「敗残兵」というのは加藤・山崎両氏を評する報道でもよく用いられたように、政治抗争の文脈に登場する表現だ。つまり、今回の騒動を「中居の乱」だったということを強く印象付けたいという思惑が感じられるのだ。
●「中居の乱」と「加藤の乱」の共通点
また、首謀者をより明確にするため、その人物が「敗れてからも頑なに謝罪を拒否している」という話が触れまわれる点も同じだ。
SMAP×SMAPの「公開謝罪」で草なぎくんが、「ジャニーさんに謝る機会を木村くんが作ってくれた」というコメントを述べたが、翌日の『サンケイスポーツ』に登場した「複数の関係者」によると、これは当初、中居くんが述べるはずの言葉だったが難色を示したため、その場の空気を読んで草なぎくんが「代弁」したという。
このような「謝罪拒否」ネタは加藤氏にももちあがった。騒動後、加藤派と反加藤派と真っ二つに割れた派閥の関係修復がなかなか進まない原因を、「肝心の加藤氏が反加藤グループへの謝罪を拒否している」と報じられたのだ。
さらに特筆すべきは、このように「反省の色のない首謀者」に対しても、勝者は「お咎(とが)めなし」という寛大の処置をした姿勢がアピールされるのも丸かぶりだ。
『日刊スポーツ』は21日、これまた「関係者」が「4人がさらし者にされたことが、騒動を引き起こしたことに関する最大のペナルティーとなった」と語り、事務所側が「手打ち」にしたと大きく報じている。
そんな「国民の前でさらし者になる=禊(みそぎ)」というのは、「加藤の乱」でも確認できる。クーデターを鎮圧した野中広務幹事長は、「造反組」に対して「お咎めなし」という寛大な処置をするとアピールするととともに、このように述べた。
苦渋の中から、目に涙をためて、同志に語っている加藤氏を見て、心の痛みを感じた。これからもお互い、この傷をなめ合って、党の発展、改革に生かしていかなくてはならない。(東京新聞2000年11月21日)
つまり、話をまとめると「中居の乱」と「加藤の乱」は、ともにメディアを使って、「人気を誇るリーダーに、『往生際の悪い敗軍の将』という執拗なイメージ付けを行いながら、勝者側は懐の深さをアピールする」という共通点があるのだ。
●クーデターを鎮圧した者が権力を握る
ただ、このような類似点もさることながら、二つが重なって見えるのは、「クーデターを鎮圧した者が権力の階段をかけあがる」という点だ。
先の草なぎくんの謝罪にもあったように、今回の「解散騒動」をおさめたのは、4人とメリー副社長の間をとりもった木村拓哉さんだとされている。確かに「公開謝罪」でも木村さんはセンターに立ち、詫びを述べる4人とは対照的に、「まあオレの顔に免じて許してやってください」と言わんばかりの堂々とした態度に、少なからず違和感を覚えた視聴者も少なくないはずだ。
「木村さんがクーデターを鎮圧した」というイメージをさらに補強するのが、『週刊新潮』のメリー副社長インタビューだ。このなかで、副社長は、木村さんの奥様である工藤静香さんと頻繁に食事を行う間柄であることを明かし、「マッチ(近藤真彦)のところだって、ヒガシ(東山紀之)のとこだって、他のタレントだって同じようにしていますよ」とことも無げに言い放っている。これはつまり、メリー副社長が「ジャニーズのトップ」と太鼓判を押す近藤さんや、「大幹部」と目される東山さんと、木村さんが肩を並べる「出世ライン」にのっているということを意味しているともとれなくもない。
そんな立場の人が、事務所のガバナンスを揺るがす「有力グループの独立」を阻止する。一般企業の感覚でも二階級特進、一気に経営幹部へと引き立てられるのは間違いない。
実は「加藤の乱」でも、木村さんと同じような立ち振る舞いをしたことで権力にぐんと近づいた政治家がいた。
小泉純一郎氏である。
●中居くんたち4人の先行きはかなり危うい
当時、加藤氏、山崎氏とともに「YKK」なんて呼ばれていた小泉氏だったが、加藤氏から内閣不信任案の話を聞かされるやすぐさま議場を駆け巡って、党執行部に「加藤は本気だ」とふれまわった。清和会(森派)の会長を務めていた立場もあり、「クーデター鎮圧側」にまわったのだ。
それから半年後、小泉氏は「自民党をぶっ壊す」という例のフレーズで、最高権力者の椅子に座っている。半年前までは、永田町で「ポスト森」といえば加藤氏であって、小泉氏の名前などまったくでなかった。
これまで芸能報道では、木村さんは他のSMAPメンバーとともに飯島マネージャー派ということで、事務所内では傍流とされていた。それがここにきてマッチ、ヒガシと並ぶ大幹部の一員として躍り出たというのは、「加藤の乱」後に急速に永田町で存在感を増した小泉氏の姿と丸かぶりである。
「中居の乱」と「加藤の乱」の構造が同じだとすれば、中居くんたち4人の先行きはかなり危うい。
党執行部から、お咎めなしとなった加藤氏だったが、「クーデター首謀者」のイメージ付けが執拗に行なわれた結果、少しでも調子にのった発言をすると即座に叩かれるという状況がしばらく続いた。例えば、加藤氏が支援者に「加藤の乱」の正当性を訴えたなんて情報が少しでも流れると、野中氏が「加藤紘一は甘えすぎ」「子供っぽい」「育ててくれたみなさんにおわびをすべき」(産経新聞2001年1月16日)という談話を発して灸をすえたものだ。
中居くんたちも同様に事務所からは「お咎めなし」ということになっているが、忠誠心が足りないとみなされれば、スポーツ紙などを用いた激しい「中居おろし」が再び行なわれる可能性は否めない。ただ、それよりも用心しなくてはいけないのは、スキャンダルだろう。
ジャニーズ事務所の厳しい情報統制
ジャニーズタレントのスキャンダルが一部週刊誌のみしか扱わないことからも分かるように、ジャニーズ事務所は業界きっての厳しい情報統制で知られている。その「抑止力」が、中居くんたち4人の「クーデター組」にこれまで同様に適用されるというのは疑わしい。事務所の威光が消えた人気者は芸能マスコミの格好の餌食だ。ベッキー的な致命的スキャンダルが発覚して、ファン離れという最悪のシナリオもなくはない。
事実、加藤氏がそうだった。「加藤の乱」から1年ほどが経過してから、大手芸能事務所の脱税事件にからみ金庫番だった秘書が逮捕され、議員辞職へと追い込まれた。その後、政界復帰を果たすも「堕ちたプリンス」のイメージを拭うことができず、支援者の心が離れて2012年に落選。政界を去っている。
そんな加藤氏とともに「敗残兵」のそしりを受けた山崎氏は、『日本経済新聞』(2015年9月13日)のインタビューで当時を振り返り、「一番おそろしいのは小泉氏だ」と述べた。
加藤の乱」からおよそ20日後、山崎氏の誕生パーティが催されたが当然、政治家はほとんど来なかった。そこへ小泉氏が乗り込んで来たのであいさつをさせたところ、こんな言葉を口走ったという。
YKKは友情と打算の二重構造だ。みなさんは私が友情でこの場に来たと思うでしょう。そうじゃありません。私は打算で来ました」
山崎氏は「あれは次は自分が(首相に)なるという意味だった」とみている。要は、ポスト森に最も近いといわれた加藤氏が失脚したので、次はこの自分を応援しろと言いたかったのではないのか、というわけだ。
小泉氏と木村拓哉さんが妙にオーバラップする今、個人的には「SMAPも友情と打算の二重構造」だったのではないかと感じてしまう。
もしそうだとすれば、草なぎくんの「木村くんのおかげでここに立てています」というのも全く違う意味をもつ。もしやあれは、「敗残兵」にしたてあげられた4人の精一杯の反抗ではなかったか。「一番おそろしいのは木村くんだ」というメッセージの裏返しではなかったのか――。
中居くんたち4人が加藤氏たちと同じ道を辿(たど)らないことを、心から祈りたい。


※草なぎのなぎは弓ヘンに前の旧字の下に刀

読み物として面白いな、と思いましたのでとりあげましたが、正直よくわかりません。