遺伝子操作の末

マラリア遺伝子持つ媒介蚊、繁殖成功 米研究
(AFP=時事 11月25日(水)12時46分)

マラリア媒介蚊の遺伝子を「編集」して、発病の原因となる寄生虫を阻止する遺伝子を媒介蚊の子孫に持たせる実験に成功したと、米国の研究チームが発表した。マラリア蚊の撲滅に道を開く成果だという。
蚊の遺伝子を組み換えて、マラリアを引き起こす「熱帯熱マラリア原虫(学名:Plasmodium falciparum)」と呼ばれる寄生虫を無害化できることは、ここ数年の研究ですでに判明していた。
23日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に論文が掲載された今回の最新研究は、「クリスパー(Crispr)」と呼ばれる遺伝子編集技術の進歩を示すものだ。
今回の遺伝子編集では、寄生虫を阻止する遺伝子をハマダラカ(学名:Anopheles stephensi)のDNAに挿入、蚊の子孫にこの遺伝子が確実に受け継がれるようにした。ハマダラカは、アジアでの主要なマラリア媒介生物だ。
研究チームによると、子孫への遺伝子伝達率で99.5%を達成したという。
論文主執筆者の一人、米カリフォルニア大学アーバイン校(University of California, Irvine)のアンソニー・ジェームズ(Anthony James)教授(生物学・分子遺伝学)は「今回の成果は、この技術をマラリア撲滅のために適用できるという現実的な見通しを開くものだ」と語る。
■「大きな意義ある一歩」
研究チームは、マラリア抑制抗体を運んでいる遺伝子編集ツールがDNAの適切な部位に到達したことを確認するために、子孫の目が赤色に蛍光するように作用する酵素を組み込んだ。
子孫のほぼ全部(99.5%)がこの特性を示したことにより、遺伝子編集が目的通りに機能したことが証明された。
マラリア抗体の有効性を確認するには、さらに実験を重ねる必要があり、実験の積み重ねは最終的に現地調査の実施につながる可能性があるとジェームズ氏は指摘した。
「これは大きな意義のある第一歩だ」とジェームズ氏は話している。
「遺伝子が正常に機能することが、今回の研究で分かった。今回作製した蚊は完成形ではないが、この技術によって大型の個体群を効率的に形成できることが判明した」
マラリアは、罹患(りかん)リスクのある地域に世界人口の40%あまりが居住しているため、世界の重大な健康問題の一つになっている。
疾病対策センター(CDC)によると、マラリアの新規感染診断数は年間3億〜5億件、死者数は年間100万人近くに上っている。感染者と死者の大部分は乳児や小さな子どもや妊婦で、うち大半がサハラ以南アフリカ地域で発生しているという。

もしかしたら、蚊そのものを絶滅させるプログラムを埋め込んだら、できるんじゃ?