塗る

塗るとクルマで発電ができる日本発の太陽電池
(ニュースイッチ 11月23日(月)9時15分)

■「ペロブスカイト」世界各地で効率更新。現在は東大がトップ
再生可能エネルギーが新境地に入ろうとしている。日本発の新型太陽電池の研究成果が世界で次々に発表されている。発明から10年もたたないうちに主流のシリコン系太陽電池に迫るまでに性能が向上しており、将来の太陽光発電産業を背負って立つ“大型新人“となりそうだ。
日本生まれの新しい太陽電池は「ペロブスカイト太陽電池」。「ペロブスカイト」という特殊な結晶構造を持つ太陽電池の総称だ。目新しい構造ではなかったが、桐蔭横浜大学の宮坂力教授が太陽電池として作動することを見いだした。
宮坂教授は特徴としてまず「光発電の特性に優れる」ことをあげる。太陽光エネルギーを電気に変える変換効率が太陽電池の性能を示す指標だ。数値が高いほど少ない面積で多くの電力を生み出せる。シリコン系ではセルベースで24%超が量産されている。
宮坂教授が09年に製作したペロブスカイト太陽電池は3%台だった。それが12年に10%を突破すると世界中で研究に火がついた。14年には米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のチームが19・3%の成果を発表。そして15年、韓国化学研究所が20・1%をたたきだし、20%台へ突入した。
そして先日、東京大学先端科学技術研究センターの瀬川浩司教授らが、エネルギー変換効率21・5%と世界最高値を達成した。今後、太陽電池セルの性能向上などを進め、2020年頃までに同25%超を目指すという。
理論上は30%が可能とされている。実際の製作可能性を考えると25%は十分にいけると見られている。それも「あと1年で25%に届くと言われている」(宮坂教授)という。研究室レベルではあるがペロブスカイト太陽電池は短期間に半世紀の歴史があるシリコン系と並ぶという驚異的な成長ぶりだ。
「圧倒的な低コストで製造できる」(宮坂教授)のも大きな特徴であり、世界中の研究者を引きつける魅力だ。材料そのものが安い。その材料を基板に塗って製作できるためシリコン系ほど高温を必要する製造プロセスがなく安価だ。
皿のような器にペロブスカイト太陽電池の材料を載せて高速で回す実験映像がある。回転するうちに材料が均一に広がり発光が始まる。照射された光に反応して生み出された電子が発光した。電子を電気として取り出す配線を施しておくと発電する。この映像でも簡単に作れることがわかる。
■シリコン系が苦手な場所で普及する可能性
ペロブスカイト太陽電池はデビュー前でありながら、従来の太陽電池を変えるような研究成果が次々に公表されている。まさに「未完の大器」だ。宮坂教授は実用化されると「シリコン系と競合しない」と話す。屋根の上や地面はシリコン系が使われ、ペロブスカイト太陽電池はシリコン系が苦手な場所に普及すると見通す。
例えば軽さを生かし、ビル壁面に貼り付ける太陽電池をつくれる。フィルムのような柔らかい基板にも塗布できるので曲げ伸ばし可能な太陽電池を製作して曲面にも取り付けができる。窓を太陽電池にすることも可能だ。
現在でも「窓発電」はあるが、太陽電池に光が透過する切り込みを入れている。室内に光を届けられるが、切った部分は発電しないので無駄だ。ペロブスカイト太陽電池は色を薄くして半透明にもできるので、窓全体を発電に使える。自動車に塗ると車体を太陽電池にできる。
課題は耐久性だ。有機材料を使うため高温に弱い。空気や湿気による劣化も進むため、適切な封止剤を見つけて密閉する必要がある。「劣化の原因はわかっている。犯人の物質を他の物質に置き換えればよい」とするように、課題克服の道筋ははっきりしている。世界の研究者が競い合うように開発を加速させており、実用化の日は近い。

太陽電池って、どれも同じってわけではないんですね。