悩ましい

初期のがん、治療すべきか―議論促す日米の研究結果
ウォール・ストリート・ジャーナル 10月21日(水)15時7分)
がんを治療すべきか、すべきでないかについて、議論が白熱しつつある。
ごく小さな甲状腺がんにさえ積極的な治療を施す状況が何年も続いているが、米国と日本の有名な研究者たちは論文で、古い慣行を見直すよう勧め、多くの早期がん患者は経過をみながら待つのが効果的かもしれないと述べている。
米国甲状腺協会の専門誌「Thyroid(甲状腺)」掲載の二つの論文によると、小さな甲状腺がんを持つ患者を検査・診察しながら見守るこの方法は「活発な監視療法」とも呼ばれ、成長したり転移したりしそうにないがんの摘出手術に代わる可能性がある。
米国がん協会のオーティス・ブローリー最高医療責任者(CMO)は「いつも、がんは恐れる対象であり、全てのがんは悪だと教わってきた。全てのがんは手術すべきだとも教わった」と述べた。だが、今では、前立腺がん、乳がん甲状腺がんなどいくつかのがんの初期段階に対する治療に対し、かつてないほどの疑問が持たれているという。
内分泌学を専門とするスローン・ケタリング記念がんセンターのR・マイケル・タトル博士は、甲状腺がんと診断される人の数が米国で「非常に増えている」と述べた。タトル氏は、二つの論文の一方の主執筆者だ。
新たな症例が年間6万件を超える状況にあって、タトル氏は早期の甲状腺がんについて、「従来の手法では、直ちに甲状腺手術を受けるよう当たり前のように勧めているが、これを見直すことが重要だ」と話す。電子版に掲載されている日本の研究結果によれば、注意しながら待つことを選んだ患者の経過は、手術を受けた患者と同程度に良好だったという。
大半の甲状腺がんは症状がなく、無関連の検査で偶発的に判明する。通常、首の付け根の甲状腺に小塊の形で表れ、その後に生体検査と手術が続くことが多い。
だが、一部の手術には正当な理由がないとの声も聞かれそうだ。甲状腺を切除すると疲労や体重増加といった副作用が出ることもある。そのため、手術はもっと慎重にすべきだとタトル氏は主張。「私たちは、技術が自分たちの先を行っていることに気づき始めた」と述べ、「20年前なら見つけられなかっただろう甲状腺がんが見つかっている」とした。
タトル氏がスローン・ケタリングで数年前に設置したプログラムでは、綿密な超音波検査や医師の定期訪問を伴う経過観察という選択肢を患者に提供している。初期には医師と患者から強い抵抗もあったが、次第に受け入れられて250人の患者が参加しているという。
甲状腺がん患者のための協会ThyCaは、観察を選択肢に入れることを支持している。だが、経過観察しながら待つことを嫌い、切除を希望する患者もいるという。
甲状腺がんを注意深く見守るという手法は、より広範な議論の一端だ。米国では、悪影響を受けるリスクがほとんどない、がん以前の病変や初期のがんに対する治療が過剰かどうかが議論されている。
ダートマス大学医学部のH・ギルバート・ウェルチ教授は、今年出版した著書で、害のない小さな病変の治療ついて、「私たちは行きすぎており、解決する以上に多くの問題を生み出す結果になっている」と書いている。
一方、観察支持派も含め、一部の医師は過剰治療への反対が行きすぎることを警戒している。前立腺を専門とするカリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部内分泌科のピーター・キャロル博士は「『診断からがんという言葉を除外しよう』という人がいた。それは少し危険だと思う」と述べた。初期の患者は、がんという言葉がなければ警戒しないだろうという。
がん協会のブローリー氏は、非浸潤性乳管がん(DCIS)が危険な侵襲性乳がんに発展しうる時期についてのデータが不足しているため、正式な実験をしたいとの意向を示した。ダナ・ファーバーがん研究所のアン・パートリッジ医師も同意見で、他機関のスタッフと実験の準備をしているという。

これが正解って、確立されていないからなぁ。