意外に面白かったのに

ラジオの「宗教の時間」どこへ 撤退と拡大、宗派で違い
ラジオから戦後64年流れ続けた「お坊さんの教え」が今月下旬で終わる。真宗大谷派京都市下京区)の朝のラジオ番組「東本願寺の時間」。リスナーの多くは高齢者だが、世間のラジオ離れにあらがえなかったという。一方、信徒獲得へ放送網を広げ、若者向けにインターネット配信に力を入れる宗派もある。
8月下旬、京都市内のラジオ収録スタジオ。真宗大谷派の里雄康意(さとおこうい)・宗務総長(66)が法衣姿でマイクの前に座り、番組の歴史や収録の思い出を語った。「長い間よくぞ続いてくれたという感慨深い思いと、一抹の寂しさを感じます」
番組は1951年11月、朝日放送大阪市)の開局時に「布教の一環」で始まった。今ではニッポン放送(東京)など全国13局で週1回、午前4〜7時台に約10分間流れる。「朝一番、新鮮な気持ちで仏法に触れていただいた」。大谷派の三島多聞(たもん)参務(71)は振り返る。
放送回数は約3400回。61年は宗祖・親鸞の700回忌法要を実況中継。87年には、親鸞の生涯を描いた映画を監督した俳優の故・三國連太郎さんが出演。98年は中興の祖・蓮如の500回忌にあわせ、多くの僧侶が法話を披露した。好評だった仏教に関する童話コーナーは2001年にCDで発売された。
聴取率は開始当初6%。だがラジオ離れが進み、近年大きく落ち込んだ。年間千数百万円かかる制作費の負担も重く、幕を下ろすことに。最後の放送は朝日放送が24日午前4時50分から、KBS京都が25日午前5時からの予定だ。
リスナーの多くはシルバー世代。20年来、熱心に聴いてきた富山市の島田高志さん(76)は「いろんな寺の住職の体験談を踏まえた法話が聴きやすかった。毎日の生活の心の糧でした。終わってしまうのは本当に残念です」と惜しむ。
大谷派は「これからは若い世代に伝わる方法を」と、10月からポータルサイト浄土真宗ドットインフォ」(http://jodo-shinshu.info/)で法話の動画配信を始めるという。
「宗教の時間」。宗教団体のラジオ番組は業界でそう呼ばれ、全国で少なくとも数十の放送がある。
今年1月には、半世紀以上続いたPL教団(大阪府富田林市)の番組「PL教団の時間」も終了した。教団担当者も「より時代にマッチした方法を模索することにした」と話す。
一方、浄土真宗本願寺派西本願寺京都市下京区)は、60年以上続く番組「みほとけとともに 西本願寺の時間」を昨夏、全面リニューアル。僧侶らが1人で話すスタイルを改め、住職の妻でプロのジャズ歌手でもあるパーソナリティーがゲストと対談する方式に変えた。担当者は「一般のリスナーがより親しみやすいようにした」。
積極的に動くのは浄土宗(京都市東山区)。番組「法然さまの時間」の放送局を昨春9局から28局に、今春から36局に増やした。「自分の住む地域でも聴きたいという要望に応えた」と担当者。高齢の人にとって、ラジオはまだまだ大切な情報手段とみる。
宗教学者島田裕巳さんは「ラジオの説法はかつて大きな影響力を持っていたが、ネットの求心力がどんどん高まってきた。でも、肉声で語られる教えには温かみや説得力がある。これからも形を変えながら続いていってほしい」と話す。
朝日新聞デジタル 9月23日(水)18時23分)

こんなところにもネット化の波が。