ここまできたら

史上空前の“混セ” 抜け出す球団はどこ?
□史上初の全球団借金となったセ・リーグ、CS出場は「阪神、広島、ヤクルト」?
セ・リーグが史上稀に見る大混戦となっている。2日にヤクルトが勝率5割で首位に浮上したが、3日は広島に敗戦。同じく勝率5割だった阪神DeNAに敗れたため、史上初めて全6球団が借金生活となる異常事態となった。首位ヤクルトから5位広島までが0.5ゲーム差にひしめき合い、取り残されている最下位中日も首位とは4ゲーム差となっている。
この前代未聞の“混セ”を抜け出すチームはどこになるのか。ヤクルト、日本ハム阪神、横浜と4球団で捕手として活躍した野球解説者の野口寿浩氏は「クライマックスシリーズ(CS)に進むチームが阪神、広島、ヤクルトというのも、ある話になってきましたよね。ただ、決め手がないのは中日くらいで、どこにでもチャンスはある」と予想する。
では、なぜ現状で中日だけが厳しいと見ているのか。
「上がり目がないと思う理由は、平田が打ててないですし、その上にピッチャーが厳しいので。ルナとエルナンデスはそこそこ打っていて、ナニータが上がってきて、ブレークしたドミニカ共和国出身の3人が揃いました。和田も森野も戻ってきたから、反撃態勢は整ったはずなんです。でも、戻ってきただけでチーム状態が上がってこないですよね」
ここから巻き返すためのポジティブな要素が少ないという。
さらに、野口氏は「DeNAが厳しくなってきた」とも言う。
「これからはいいピッチャーとも当たり始める。(相手の)表ローテがぶつかってくることが増えてくるはずです。そうなってくると、打線も(序盤戦と)同じように点は取れない。あとは、ピッチャーが頑張れるか。今年の感じを見ていると、久保も(いい投球が)続くような感じには見えないので、先発が本当に足りない」
先発投手がゲームを作れなくなってくれば厳しい戦いとなるが、現状で計算できるピッチャーはいない。
同じことは巨人にも言える。勝ちを計算できるはずの菅野が防御率1.93ながら6勝6敗と勝ち運に恵まれず、着実に勝ち星を積み重ねることが出来ていない。野口氏は「もしかしたら、巨人はこのまま落ちてしまう可能性もありますよね。今、マイコラスが頑張ってますから、何とかなってますけど」と分析する。
菅野らに勝ち星がつかないのは、やはり打線に問題があるからだろう。
「阿部のバッティングは何かきっかけを掴めば、グッと上がっていく可能性はあると思います。それだけの実力、実績を持っている選手なので。ただ、長野は状態が上がってこないし、坂本も尻すぼみになってきてしまった。去年は橋本とか若い選手がカバーしたんですけど、それも駄目です。
井端や(高橋)由伸に頼らなくてはいけなくなってくると、ちょっとしんどいですよね。アンダーソンも日本に来たばかりの時はよく打ちましたけど、どうやら研究されたかなという感じがしますからね。元々、器用な方ではないでしょうから、研究されると辛いですよね」
□ヤクルトには「上がり目しかない」、広島は「(打線は)うまく機能している」
これだけ打てない巨人というのも珍しい。なおさら投手陣の奮起が必要になってくるが、捕手出身の野口氏は阿部の一塁転向が響いていると見る。
「阿部がキャッチャーを出来ない以上、巨人に上がり目はないかなと思っているんです。相川も決して悪いキャッチャーではないんですけど、自分が操るピッチャーを完全に把握するのは、1年やそこらじゃ無理ですから。ピッチャーも探りながら(相川の)サインを覗いている感じだと思うので」
リーグ4連覇に向けて、解決しなければならない問題は多いと言えそうだ。
逆に、クライマックスシリーズに進出する可能性があるという3チームは、浮上する要素があるという。ヤクルトは、バレンティンの復帰が8月中旬にずれ込むとされ、ミレッジもいない状況で、ジリジリと順位を上げてきた。
「ヤクルトはこれからは上がり目の一方だと思いますよ。打線が飛車角抜きであれですから。あのメンバーでこれだけやっているのは大したものですし、さらに(バレンティンかミレッジの)1人が帰ってくれば大きい。館山が復帰して、石川もどこかで戻ってくるでしょうし。上がり目しかないんですよ」
野口氏はこう分析する。そして、序盤は低迷していた広島も、上昇気流に乗っている。現時点で、もっとも充実した戦いを見せているチームかもしれない。
エルドレッドが戻ってきた途端に良くなりましたよね。エルドレッドが戻ってきたから、新井の負担が減って、さらに打ち始めた。そうすると乗っていくだろうと思っていた丸、菊池もやっぱり打ち始めた。(序盤戦は)新井がまず警戒されて、そこから次は丸・菊池が徹底的にマークされていた。でも、シアーホルツが入ってきて、エルドレッドが戻ってきて、マークが分散されたわけですよね。そうすると、(打線は)うまく機能してきますよ」
確かに、エルドレッドは勝負どころでの一発で勝利を呼び込むなど、存在感を見せている。元々、パワーは図抜けているだけに、右方向へのホームランが増え始めたら、相手チームにとっては間違いなく怖い存在だ。
「強引さが消えたら本当に嫌なバッターですからね。あの力があれば、どこに打っても入るんですから。そこに早く気がつくべきだったんですよね。ホームランを打つには、フェンスを1メートル超えればいいんです。そうすれば、どこでも入ってしまうわけですよ。エルドレッドの場合は、引っ張らきゃ飛ばないわけじゃない。それでバカバカ打っていたのが(横浜、中日で活躍した)タイロン・ウッズでした。エルドレッドもああいうバッティングが出来れば、何の問題もありません」
打線が機能し始めた今、唯一の不安材料はブルペン。ここさえクリアできれば、悲願のリーグ制覇の可能性も十分にあると、野口氏は見ている。
「ヒースがコケたのが一番痛いんですよね。彼をクローザーにすると言っていて、駄目だったから中崎になった。ただ、ザガースキーを抑えにしても面白いと思うんですけどね。先発は前田、ジョンソン、黒田、福井の4枚がしっかりした。これに加えて、去年のようにヒースを先発に戻しても面白いかもしれない」
先発から配置転換された大瀬良がブルペンで機能するようになれば、広島が抱える問題は大幅に改善されるかもしれない。
阪神は戦力充実、中日がコケれば次はDeNA、巨人が危ない?
そして、野口氏が「一番バランスは取れてる気がします」と表現するのは阪神だ。
「(投手陣では)メッセンジャーが復活して、先発は藤浪、能見、岩田といる。呉昇桓、福原と後ろは問題ない。欲を言えば、左が1人欲しい気がしますけどね。そこは榎田が復活してくれるか。今年は加藤康介が故障したのもいけないんです。でも、『(加藤が)絶対に必要とされるときは来る』と和田監督は言ってましたから。それは今からになると思いますよ。榎田か康介がなんとなってくれれば」
打線も好調の福留が3番に入ってから、機能している。
「福留は元々、力はありますから、このまま行ってくれますよ。ただ、和田さんの中では、福留の3番はあまり好ましくないらしいんですよ。福留、ゴメス、マートンと置いた時に、6番に打てる打者がいないと避けられてしまうので。それがもったいない。和田監督は『だから、福留はあの2人の後を任せたいんだ』と言っていました。
今年は福留の状態がいいみたいなので、なおさら(外国人)2人のあとを打たせたいみたいです。福留が駄目で6番というわけではなくて、全員を生かすための6番だと。それが3番に入って打ち始めたっていうのは、和田さんはちょっと複雑な感じはしてると思います。ただ、今成とか新井良太が(6番に入って)もうちょっと結果が出てくるんだったら、問題ないですね。鳥谷が1番を打って、上本が2番に入れば、1〜6番くらいまでは全く穴のない打線になりますから」
戦力的に見ても、阪神が抜けていくという状況は十分に考えられる。ただ、仮にそうなったとしても、それは他チームがあまりに厳しい状況だからこそ起こる現象になると野口氏は見ている。
阪神が走るのではなく、周りが落ちていきそうな気がします。1つ落ち、2つ落ちとなっていく。中日がここで歯止めをかけないと、まさにそうなってしまいますよね」
序盤戦で首位争いを繰り広げていた巨人、DeNAが落ちていく可能性も「十分にありえます」という。
「中日が完全に落ちてしまったら、次の(落第)候補はその2球団かもしれないですね。クライマックスシリーズに進むチームが阪神、広島、ヤクルトというのも、ある話になってきましたよね」。
今年のセ・リーグは何が起こってもおかしくないと言えそうだ。
DeNAが快進撃を見せ、巨人がそれを追う展開となった序盤戦には誰も予想できなかった結果に終わる可能性もあるのか。史上空前の混戦となったセ・リーグから目が離せない。
(Full-Count 7月4日(土)11時35分)

史上初、全球団勝率5割以下で終わるなんて珍事がみれないかな。