強者連合?

セブンは、なぜ大阪のスーパーと組むのか
コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパン、総合スーパー(GMS)のイトーヨーカ堂を傘下に抱える、セブン&アイ・ホールディングス。この巨大な小売企業がじわじわと地方スーパーとの提携を増やし、全国を手中に収めようとしている。この3月10日には大阪府でトップシェアを誇る「万代(まんだい)」(大阪府)との業務提携を発表した。資本提携の締結に向けても協議を開始する。なぜ今、セブングループがスーパーの拡大に力を入れるのだろうか。
■ 過去の提携の成果は? 
2013年以降、セブングループは、北海道が地盤のダイイチ(30%出資)、岡山の天満屋ストア(同20%)と、それぞれ資本提携をしてきた。ダイイチではセブンのプライベートブランド(PB)商品が全店に、セブン銀行のATM(現金自動出入機)も一部店舗に、導入が完了している。菓子などの仕入れもイトーヨーカ堂と一本化し、コスト削減を進めてきた。また天満屋ストアでも、イトーヨーカ堂が開発した衣料ブランドや食品を2014年11月から取り扱い始めるなど、少しずつ協業の範囲を広げている。
提携先の企業が展開する地区は、いずれもセブングループのスーパーが少ない地域にあたる。イトーヨーカ堂は3月現在、国内に184店舗を展開しているが、うち6割以上が関東1都3県に集中。グループ内ではほかに、北関東や東北に店舗を持つ、ヨークベニマルなどがある。
今回の万代との提携でも、セブングループとしては、手薄な関西地区を強化したい考えだ。万代は大阪府を中心に兵庫県奈良県京都府などに、約150店舗を展開しており、大阪府では食品売上高で12%強のトップシェアを誇る。万代の不破栄副社長によると、およそ1年前から情報交換を始め、2014年8月ごろから具体的な提携の検討に入ったという。今後は資本提携も予定しており、具体的な協業内容はこれから詰めていく。
「提携はしたけれど、何の要望も言ってこない。自由にやってくださいという雰囲気」と、ある提携先企業が拍子抜けするくらい、束縛はしないセブングループ。そのセブン側からすると、いったい何を求めて提携を進めているのだろうか。
重要視しているのは「地域性の強化」だ。セブングループでは昨春ごろから、セブン-イレブンとイトーヨーカ堂を中心に、各地域ならではの食材や商品、味付けを取り入れることを戦略の一つにしている。たとえばPB商品「セブンプレミアム」の肉じゃがは、全国版では豚肉を使用しているが、関西では牛肉を使用し、味付けも変えたところ、売上げが伸びたという。このほかメーカー商品に関しても、たとえばイトーヨーカ堂であれば、その地域に根付いた調味料を拡充するといった具合だ。
■ 万代は2014年度決算も増収増益見通し
万代は大阪トップというだけでなく、この厳しい競争環境下にあって、業績を伸ばしている優良企業だ。2013年度の売上高は2793億円と、業界内でも小さくはない。
2014年度決算も増収増益が見込まれており、既存店売上高は前年度比103%を記録。「もともと低価格の強いイメージだったが、最近は鮮度など質も重視している印象。こうした企業と組むことで、セブン側は店作りのノウハウや、そこにしかない商材とその仕入れルートの発掘を期待できる。特にイトーヨーカ堂は2014年度の営業減益がほぼ確実という厳しい状態で、第3四半期(2014年3〜11月)時点で、既存店売上高は前年同期比4%以上のマイナスだった。消費者を引き付ける商品開発ができておらず、改革が急務となっている。
実際、イトーヨーカ堂の帯広店では、ダイイチが食品売り場作りに参加し、助言を始めている。「私たちの場合、現場の担当者からほしい商品の情報をあげるが、イトーヨーカ堂は上層部が品ぞろえを決めるという意識がまだ強いように感じている」(ダイイチ)。
セブンにとって提携は、「規模拡大ではなく、質を上げていくことが目的」(セブン&アイ・ホールディングス)。共同仕入れや物流の共有によるコスト削減といったメリットの追求はそのあとになる。
■ 関西では苦い過去もあり
実は苦い過去もある。セブンは関西で以前、近畿日本鉄道傘下の近商ストア(大阪府)と資本提携を行っていた。2011年に提携を開始し、人事交流を行うなどしていた。さらに、近鉄駅構内の売店セブン-イレブンに切り替えるべく、交渉にも臨んでいた。が、フタを開けてみれば、近鉄はセブンのライバルであるファミリーマートと業務提携、売店はファミマになってしまったことで、関係が悪化。2014年6月に近鉄とセブンは提携を解消している。
万代とセブンが手を組んだことについて、近畿圏のライバルスーパー各社は今のところ冷静だ。「現時点では相乗効果がよくわからない。『ナナコ』(セブングループの電子マネー)が導入されると、囲い込みの効果が出てくるかもしれないが、今は動向を注視するしかない」(ある競合スーパー)。だが、安穏としてはいられない。最近は万代のような提携案が、セブングループに持ち込まれることが増えているという。
激しい競争環境の中で、地方スーパーが単独で生き残るには限界がある。今後も大なり小なり、業界再編が進むのは間違いない。将来的にはヨークベニマルのように子会社化される企業が出てくる可能性もある。セブンの拡大は今後も続きそうだ。
(東洋経済オンライン 3月22日(日)4時55分)

セブン帝国の構築?