鶏白湯ラーメンは好きですか?

「鶏白湯ラーメン」ブームの意外な仕掛け
東京都内の鉄道某駅至近に最近オープンしたラーメン店。看板メニューは「鶏白湯(とりぱいたん)ラーメン」だ。
ラーメンは明治時代の文明開化とともに中国から流入してきた麺料理がもとになっているが、もはや日本の国民食といっても過言ではないほど浸透し、人気を博している。東京ではここ1年で約500軒もの新店が誕生。同じ期間に東京でオープンした飲食店は約5000店。実に約1割がラーメン店なのだ。
■「鶏白湯ラーメン」の新店が続々とオープン
ラーメンには醤油、味噌、塩、とんこつなど幅広い味のバリエーションがあるが、中でも最近、増加傾向にあるジャンルが鶏白湯。「雨後のタケノコ」のように鶏白湯ラーメンの店があちらこちらでオープンしている。
鶏白湯ラーメンとは、いわば、とんこつラーメンの鶏バージョンで丸鶏や鶏ガラなど、鶏をメインに用いてじっくりと煮込んで白濁させたスープを用いる。鶏の旨みが前面に出て、マイルドでコクのある風味が特徴だ。筆者が取材で訪れた店も、まるでポタージュスープのようなまろやかさが楽しめた。
「さぞ、煮込むのに時間がかかって大変でしょう? 」。筆者が店員に聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「いえ、このスープ、ここでは煮込んでないんですよ」
スープを店内で煮込んでいない? いったいどういうことなのか? さらに詳しく聞いてみると、どうやら「スープは外部から購入している」という。
そんな鶏白湯ラーメンのスープをつくっているのが、東京都足立区に本社を構えるクックピット。フード業界で「鶏白湯スープのパイオニア」といわれ、スープ、タレ、麺、その他業務用食材の販売、ラーメン店独立支援・経営支援、ラーメン法人向けの飲食新業態開発コンサルティングを行う会社だ。全国172店舗に導入実績があり、またみずからも直営で本郷三丁目にラーメン店「麺や福十八」を運営している。
「鶏白湯スープは、桜島鶏を使用しています」。クックピットの本間義広社長氏は明かす。鹿児島の工場で親鶏の中抜きや若鶏のガラと地場産のとんこつを5トンの常圧釜にて下処理し、蒸らしを入れて2日間。強沸時間8時間で煮出してつくる。完成したスープは冷凍された状態で、各店舗へ配送されるという仕組みだ。
鶏白湯ラーメンを出す店の中にはもちろん店舗でじっくりと鶏を煮込んでスープをつくっているところも多いが、最近ではスープを外部から購入して提供しているラーメン店が目立っている。そういう店は、購入した冷凍の鶏白湯スープを店内で温め直して来店客に提供しているというワケだ。
■従来の主流は濃縮還元型
もっともラーメン店では従来から、店舗内でゼロからつくらずにスープを購入するという手法は珍しくはない。これまで主流だったのは濃縮還元型といわれるタイプ。工場でつくったスープが濃縮されて店舗に届き、厨房の寸胴内で大量の水と合わせて沸騰させてスープを元通りの量に戻すという手法だ。
濃縮還元型の長所は、輸送コストが抑制できるという点、体積が小さいので保管場所も狭くても可能という点が大きい。ただ、肝心の「味」という部分で相当のハンデを背負ってしまう。味をしっかりとつけたタレを仕入れて、単に熱湯で戻すだけというチェーン系ラーメン店も存在するが、もちろんレベル的に相当低い完成度だ。
一方、冷凍タイプのスープだと、店舗の厨房の寸胴内に冷凍スープを入れて沸騰させるだけで、元通りの鶏白湯のおいしさが再現できる。さらにはコスト面の利点もある。一般的に人気のラーメン店の原価は35%強と言われ、冷凍型スープを購入しても原価的には、さほど変わらない。
みずからつくるのと比較しても、一見、メリットがないように思えるが、実は光熱費、特にガス代が相当、抑制される。「長時間煮込むラーメン店ですと、月に10万円を超えるガス代の店舗も珍しくないですね。それが、冷凍スープを購入すれば、3分の1から5分の1程度で済みます」とクックピットの本間社長は指摘する。
店主が煮込みをスタッフに任せている店舗であれば、煮込み時間が長時間になればなるほど、その人件費も相当な額になるため、冷凍スープの導入は人件費ベースでのコスト抑制効果もある。店主みずからが煮込んでいる店舗であっても、仕込み時間の短縮によって時間にゆとりができる。「家族と一緒にいられる時間が増えたと喜ぶ店主も多いんですよ」と本間社長は語る。
そんな冷凍タイプの鶏白湯スープは、ラーメン専門店のみならず、様々な飲食店が導入を図っている。ある居酒屋ではメニューの一部に取り入れ、「〆ラーメン」として好評だとか。また、料理専門店でなくても、仕入れて温めればメニューとして提供が可能だ。
■ライブハウスが鶏白湯スープを活用する例も
例えば六本木のライブハウス「六本木Beehive」では、冷凍型のとんこつスープや鶏白湯スープを仕入れて、とんこつラーメンと鶏白湯ラーメンを、ライブのない平日ランチタイムに「ラーメン店」として提供している。スープはラーメン以外にも使用できる。例えばもつ鍋店での汁に利用されたり、野菜炒めの隠し味に使用したりと、汎用性があるのも特徴のひとつである。
もっとも、100%冷凍鶏白湯スープを導入して繁盛しているラーメン店は、単に仕入れたものを再沸騰させて提供しているわけではなく、各店舗とも工夫を凝らしている。スープにミルクやバターなどを合わせることで、よりクリーミーとしたり、トリュフオイルをかけてトリュフ風味を加えたり――。
アイテム自体も画一ではなく、ブリックス(いわゆる濃度)5や、ブリックス8、ブリックス10と3種類の濃さのものがあり、ニーズにこたえている。中にはいくつかをブレンドして使用する店舗も。そのため、同じスープを使用しても、様々な店舗で個性が出るのも、鶏白湯がブームになっている秘密かもしれない。
東洋経済オンライン 11月30日(日)6時0分)

手抜き感満載に見える記事・・・。