向かう先

なぜスカイマークJALと組みたいのか
11月21日、スカイマーク(SKY/BC、9204)が日本航空JAL/JL、9201)に対し、経営支援を要請したことを明らかにした。具体的な内容は今後詰めていくが、旅客や貨物分野でのコードシェア(共同運航)を両社で検討していく。
しかし、なぜ国内航空会社で売上高首位の全日本空輸ANA/NH)ではなく、JALなのか。なぜJALはSKYに出資しないのか。「シリーズ・航空業界素朴な疑問」第3回は、提携を検討する両社の意図を探る。
◆独立にこだわる西久保社長
SKYの歴史的経緯を見ると、必ずしもJALと密接な関係にあったわけではない。会社設立翌年の1997年7月、ANAと技術指導などの契約を結んでいる。その後、2000年9月には空港のグランドハンドリングや整備を自前でこなすようになった。人的な面では、ANA出身者は役員も含め、現在も一定数いる。しかし、SKY以外の新規航空会社3社がすべてANA傘下にある状況と比べると、両社は特段深い間柄ではない。
一方、JALとの関係も似たようなものだ。2005年4月、前月に運航を始めた羽田−関西線でコードシェアを実施。しかし、翌年3月末には運休している。JALの経営破綻後の2010年12月には、JALの退職者の大量採用を決めているが、前月にSKYがエアバスと総2階建ての超大型機A380導入の基本合意を締結したことを受けたもので、人材確保以上の意味は持たない。
それは何よりも、西久保愼一社長が経営の独立に対して、強いこだわりがあるからだ。
「今までお騒がせすることの多かったスカイマークだが、日本の航空業界に価格競争を持ち込んだ自負がある。自立した経営を維持したい。今回ばかりは応援していただくよう、お願いしたい」。
今年7月29日、エアバスA380全6機の購入契約を解除したことについて会見した西久保社長は、報道陣に対してこう訴えた。
ANAともJALとも距離を置き、独立した経営にこだわってきたSKY。ではなぜ、ANAではなくJALと組むのか。これは現在の国内線シェアと大きく関係がある。
◆羽田国内線はANA過半数
弊紙が21日に報じた(関連記事)とおり、羽田空港の国内線シェアを発着枠数で見ると、JALが184.5枠で40.0%、ANAが172.5枠で37.4%、SKYが36枠で7.8%。ANAはSKYを除く新規航空会社3社(ソラシド エアエア・ドゥスターフライヤー)とコードシェアを実施しており、ANAと新規3社を合算すると52.2%と過半数を占める。
JALとSKYがコードシェアを実施した場合、ANA系の52.2%に対して2社は47.8%で、SKYとANAが組むとANA系が60%、JALは40%となる。
西久保社長はJALの再上場が目前に迫った2012年7月、再上場を歓迎する意見書を羽田雄一郎国交相(当時)に提出している。
意見書の中で西久保社長は、空運業の事業計画は景気変動に耐えられる資金計画が必要だとし、市場からの資金調達は経営上不可欠だとしている。そして、JALの再上場により空運業界全体が安定することが、SKYの経営にも安定をもたらすとの考えを示した。
一方、再上場に反対していたANAに対しては、「単なる企業間競争の中での論理であり、業界全体の安定を考慮しているものではない」と批判。「業界の安定という錦の御旗を、自社の損得で使い分けることは、品性に欠けるものではないか」。
かつて新規航空会社のエア・ドゥ(ADO/HD)やスカイネットアジア航空ソラシド エア、SNJ/6J)の経営が悪化した際、ANAが「業界の安定」を掲げて事実上傘下に収めたことで、新規参入した航空会社の自由競争が歪められたと指摘している。
SKYの幹部は、今回JALとの提携を検討することについて、「(SKYとJALが組めば)ANAJALの比率は半々に近くなり、価格競争は続く。それがなくなれば、(価格競争を持ち込んだ)うちの存在価値はない」と打ち明ける。
国交省監視下のJAL
では、なぜJALはSKYに出資せず、コードシェアにとどまるのか。
ひとつはSKYの財務体質だ。今年7月にエアバスが契約を解除したA380全6機の違約金は7億ドル(約826億円)にのぼる。2015年3月期通期単体の業績予想も、純損失が過去最大の136億7600万円の赤字(2014年3月期は18億4500万円の赤字)となる見通しで、JALが火中の栗を拾うメリットはない。
もう一つは、国土交通省航空局(JCAB)がJALに対して2012年8月10日に示した文書「日本航空への企業再生への対応について」(いわゆる8.10ペーパー)の存在だ。JALの中期経営計画の最終年度となる2016年度までの投資や路線計画について、同局が監視することになっている。
今回のSKYとJALの提携について、JCABが難色を示す根拠は、8.10ペーパーが存在するからだ。国交省幹部は「まだ具体的な提携内容の説明はない」と語るものの、8.10ペーパーに抵触する内容であれば、首を縦には振れないという。SKYは月内にも説明する見通しだ。
西久保社長が報道陣に対して明らかにした、2015年2月から羽田−福岡線などでコードシェアを実施するという内容については、SKY幹部は「何も決まっていない。目標だ」と語っており、提携が実現する時期や内容は流動的と言える。
福岡線はシートピッチがJALのクラスJと同等の広さの「グリーンシート」を備えたエアバスA330-300型機(271席)で運航しており、12月からは全便がA330での運航になる。羽田−札幌線も一部便にA330を投入しており、SKYの主力であるボーイング737-800型機(177席)と比べて、A330の運航便は1便あたりの座席供給量が1.53倍となっている。福岡線のロードファクター(座席利用率)を見ると、必ずしも座席供給量の増加に比例した伸び率にはなっておらず、コードシェアが実現すれば、JALとSKYは競争が激しい同路線でウィン−ウィンの関係を築ける。
完全な独立経営に行き詰まったSKYと、これ以上ANAに羽田の国内線シェアを取られると苦しいJAL。ハイリスクなSKYの財務体質と、8.10ペーパーの存在が、両社をコードシェアという「落としどころ」に向かわせている。
(Aviation Wire 11月23日(日)11時39分)

まあ、そういうところくらいしか方法ないよなー。