答えは全滅以外ありえない

ブルートレインと夜行列車、今後はどうなる?
かつて日本全国で見られた夜行寝台特急ブルートレイン」。今年3月のダイヤ改正では「あけぼの」が定期運行を終了し、残るは「北斗星」のみとなりました。いまや風前の灯となった「ブルートレイン」と夜行列車は、今後どうなってしまうのでしょうか。
■満席に近かった「あけぼの」に乗ってみた
2014年3月5日。定期運転終了まであと10日となった「あけぼの」に筆者は乗車しました。17時50分過ぎ、入換機関車・DE10形に牽引されて青森駅へ入線すると、鉄道ファンはもちろん、一般客も次々と携帯電話のカメラを向けます。「あけぼの」は車内販売がないため、お弁当や飲み物、ビールにおつまみなど、乗客は思い思いの「食糧」を手に乗り込みます。
6割ほどベッドが埋まった状態で、定刻・18時23分に発車すると、途中の弘前・大館・秋田・羽後本荘など、沿線の主要都市にこまめに停車。酒田を出発する頃には満席となりました。青森駅の出発時には鉄道ファンが大半を占めていましたが、途中駅で乗り込んできたのは、出張の足として利用するサラリーマンなど、ほとんどが一般客。それもそのはず、「あけぼの」は廃止が決定された時点でも、乗車率は6割前後だったとのこと。朝一番の新幹線より断然早く東京へ到着でき、また最終の新幹線より遅く東京を出発する「あけぼの」は、奥羽本線羽越線沿線の主要都市にとって、かけがえのない足だったのです。この日は9両編成(電源車を含む)の「あけぼの」は、一般的な開放型B寝台のほかB寝台個室「ソロ」、A寝台個室「シングルデラックス」、そして寝具や浴衣のない「ゴロンとシート」など、多彩なベッドバリエーションが特徴。特に「ゴロンとシート」は寝台料金が不要のため新幹線よりも安く、常に満席に近い状態でした。
■12時間以上の長い旅、夜はふたたび770kmの旅へ
新津までこまめに停車した列車は、長岡で牽引機関車がEF81形からEF64形へとバトンタッチし、上越の山越えに挑みます。屈指の豪雪区間でも知られるこの区間を、EF64形はその力をフルに発揮して乗り越えていきます。高崎を過ぎたあたりで日の出を迎えた車窓には、見事な朝焼けが。まさに「あけぼの」のヘッドマークそのままの風景は、思わず涙が出るほど感動的でした。
通勤電車を待つ通勤客を横目に「あけぼの」はラストスパート。6時58分、多くの鉄道ファンが出迎える中、終着駅・上野へ定刻に到着しました。ほどなく推進運転で尾久の車庫へと向かい、12時間以上に渡る長い旅が終わりました。しかし、車内の清掃・整備が終わった列車は、今夜ふたたび770km余りの旅へと出発するのです。沢山の人とその人生を乗せて。
■夜行列車の「役割」まだまだ終わっていないのでは
かつては日本全国で見られた、夜汽車の旅。しかしながら現在運行されているのは、東京と北海道を結ぶ「北斗星」「カシオペア」と、大阪と北海道を結ぶ「トワイライトエクスプレス」の3列車のみです。これら3列車は、移動手段というよりも旅そのものを楽しむための列車であり、逆に言うと純粋に移動目的としてのブルートレインは「あけぼの」をもって絶滅してしまったと言えます。
新幹線が日本列島を縦断し、また高速道路網も全国に発達した今、寝台列車を移動に使おうという人はほとんどいないでしょう。しかし夜行高速バスの台頭が示すように、夜間の移動需要はむしろ増えています。バスよりも快適で安心・正確な交通手段として、夜行列車の「役割」は、まだまだ終わっていないのではないでしょうか。
そしてもう一つ、夜行列車での移動には、バスでは味わえない「旅情」があります。ベッドから眺めた外の景色、寝台の向かい側に座った人との会話、そういった体験ができなくなるのは、少し残念に思います。効率だけが重視されがちな今の日本に、夜行列車という「ゆとり」があってもいいような気が、筆者にはするのです。
もちろん、夜行列車やそれを運営するJRにも、相応の努力が必要でしょう。高すぎる料金体系・不便なダイヤ・ニーズに合っていない設備を改善することで、利用客の増加へとつながり、そしてそれが収支の改善につながる・・・利用者と鉄道会社がウイン・ウインの関係になるために、ぜひともJRのアクションに期待したいものです。

■伊原薫(いはら・かおる)
大阪府生まれ。京都大学大学院・都市交通政策技術者。(一社)交通環境整備ネットワーク会員。グッズ制作やイベント企画から物書き・監修などに取り組む。都市交通政策や鉄道と地域の活性化にも携わっている。好きなものは103系、キハ30、和田岬線北千住駅の発車メロディ
(THE PAGE 4月27日(日)10時0分)

北斗星も廃止が決まっていて、もともと臨時列車のトワイライトとカシオペアはどーすんの?的状況なわけで、コストだけ考えたら全廃は避けられんわね。
それに、バス隆盛なのはひとえに安いからで、鉄道にそれを要求しても無理でしょ?