実質的には名鉄百貨店つぶし
＜三越伊勢丹＞名古屋駅前出店へ 激戦区さらに競争激化
三越伊勢丹ホールディングスが２０１５年秋、「大名古屋ビルヂング」に出店し、名古屋駅前に進出する。２７年のリニア中央新幹線開業を控えて再開発が進む名駅前は、ジェイアール名古屋タカシマヤや名鉄百貨店がひしめく激戦区で一段の競争激化が予想される。一方、名駅前の台頭で名古屋の繁華街・栄地区は地盤沈下が懸念されており、両地区の明暗がさらに鮮明になる可能性もありそうだ。
名駅前は以前、地元の名鉄百貨店が主力だったが、高層ビル「ＪＲセントラルタワーズ」が開業し、ジェイアール名古屋タカシマヤが００年にオープンすると様相が一変した。ターミナル駅の集客力を生かし、タカシマヤの売上高は今年１月まで３４カ月連続で前年実績を超えた。１７年２月に完成予定の高層ビル「ＪＲゲートタワー」にも新店舗を開業する。
三越伊勢丹も、高層ビルの建設ラッシュに沸く名駅前のにぎわいを取り込む狙い。三越伊勢丹は名古屋市内で既に３店舗を構えるが、主力の栄店が「三越」を看板にしてシニア世代を得意客としてきたのに対し、大名古屋ビルの店舗はファッションにほぼ特化。伊勢丹のブランド力も加味して、駅前のオフィスで働き、最新の流行に関心を持つ層をターゲットに新たな顧客を開拓したい考えだ。
高額商品を扱う百貨店は「アベノミクス」効果で売上高が伸びている。さらに業績好調なトヨタ自動車など自動車産業が集積する中部地方は景気回復に勢いがあり、三越伊勢丹はリニア効果も併せて集客が期待できると判断したようだ。
一方、大型開発の具体的な話題に乏しい栄地区の地盤沈下はかねて指摘されてきた。ジェイアール名古屋タカシマヤの開業後、「地域一番店」として君臨してきた松坂屋名古屋店は、その地位を脅かされつつある。
松坂屋は昨年、食品売り場の改装や親会社のＪ・フロントリテイリングが買収したパルコとの協業に着手したが、守勢から抜け出せていない。栄地区の老舗の丸栄も売り上げ減が続いており、戦略の練り直しを迫られそうだ。
（毎日新聞 2月24日(月)23時42分）
