結核は絶滅していない

結核「過去の病ではない」 目立つ医療従事者の感染
結核を発病した医師や看護師らが長期間にわたって患者と接触していたケースが全国で相次いでいる。感染しただけでは他人にうつらず、感染者全員が発病するわけではないが、発病の危険性が高いとされる感染者のうち約4割が医療職というデータも。免疫力が低下した患者への二次感染の危険性もあるだけに、専門家は「長引く呼吸器症状がある場合は結核の可能性を考え、早めに専門機関で受診を」と呼びかけている。
◆年間2万人超発病
10月22日、滋賀医大病院で新生児の治療室に勤務する30代看護師が結核を発病していたことが分かった。発病から数カ月経過していた可能性もあり、同病院は看護師と接触した820人の検査を実施した。
結核は現在も年間2万人以上が発病し、うち約1割にあたる2千人が死亡。集団感染も年に40〜60件程度確認されている。結核研究所疫学情報センター(東京都)によると、平成24年に全国の保健所で新規登録された発病の可能性が高い感染者8771人のうち医療職は38・7%を占める。
同センター長の大角晃弘医師は「医療従事者はもともと感染リスクが高いが、免疫不全の患者や子供、妊婦と接する機会も多いので、より注意が必要だ」と強調。そのうえで「一般の人だけでなく、医療従事者の中にもある『結核は過去の病気』という意識が感染を拡大させる要因の一つ」と分析する。
◆難しい診断
結核の初期症状は咳(せき)や微熱が続くなど風邪とよく似ているうえ、数週間、数カ月単位で病状が進行し、症状にも起伏があることから診断が難しい。静岡県伊東市の50代の医師は、咳の症状が出た8月から結核と診断されて入院する10月まで患者を診察し続けたが、「風邪だと思っていた」と説明したという。
結核の発見には肺のエックス線検査と血液や痰(たん)の検査が有効だが、医療職であっても定期健診でのエックス線撮影以外は特に義務付けはない。大阪府立公衆衛生研究所の田丸亜貴主任研究員は「CTではごく初期の病巣でも分かるが、エックス線では分かりにくいケースがある」と指摘する。
滋賀医大病院の看護師の場合、咳などの症状が出始めた6月と9月にエックス線検査を受けたが異常は見つからず、最終的に結核と診断されたのは10月に入ってCT検査を受けてからだった。
このケースでは幸い二次感染は確認されなかったが、結核に対する免疫のない若い世代が増えていることから、大角医師は集団感染が発生しやすい状況にあると警鐘を鳴らす。「結核のことが念頭にあれば、ある程度感染拡大は防げるはず。咳などが長引いたら、早めに専門機関で受診してほしい」と話している。
■免疫ない若い世代の発病も 大阪市罹患率トップ
明治時代から昭和20年代までは年間十数万人が亡くなり「国民病」と恐れられた結核。医療や生活水準の向上で完治できるようになったが、先進国の中で日本の罹患(りかん)率は依然高い。
結核研究所疫学情報センターなどによると、国内の患者は昭和26年の約59万人をピークに年々減少し、平成24年は2万1283人(うち死亡は2110人)だった。ただ人口10万人当たりの罹患率は16.7で、米国(3.4)やドイツ(4.3)など欧米諸国を大幅に上回っている。
理由として、かつて大流行した時期に感染した高齢者の“休眠状態”だった結核菌が、免疫力の低下などで発病した可能性があげられる。
また、大阪や東京といった都市部では、結核の免疫がない若い世代の患者も少なくない。結核に対する意識の低下による発見の遅れが深刻な問題となっており、特に罹患率が全国で最も高い大阪市(42.7)は、自覚症状から診断までに要した期間が3カ月以上の患者が24年で24.2%と、全国平均(19.6%)を上回っている。
産経新聞 11月19日(火)15時46分)

結核菌検査は受けるべきです!!