トマトがつぶれた

トマトバブルはじけて、カゴメが足踏み
メタボリック症候群の改善、悪酔い防止など、トマトの健康効果に関する報道が相次ぎ、かつてない盛り上がりを見せた昨年のトマトジュース市場。「トマトブーム」の余韻は残るが、さすがに昨年のような「バブル」に近い状況からは後退したようだ。
トマト加工品の最大手、カゴメ <2811> は10月24日、2013年度上半期(13年4〜9月)の決算を発表した。売上高は前年同期比2%減の1037億円ながら、売り上げ計上方法を一部変更した影響を除けば実質3%の増収を確保。しかし、本業の儲けを示す営業利益は同33%減の50億円と大幅減益に終わった。
■ 定番中の定番「トマトジュース」反落が響く
「今期は反動減となったが、トマトジュースの“ベース”は上がっている」――。25日に都内で開かれた決算説明会で、カゴメの西秀訓社長は、こう力説した。
カゴメの推計によると、国内におけるトマトジュースの年間市場規模は2010年(1〜12月)に123億円、東日本大震災で供給が制約された11年に116億円だったのに対し、トマトブームが沸き起こった12年は250億円と一気に倍増。今13年も220億円と高水準が続くものと見込まれる。西社長の言うとおり、ベースは確かに上がっている。カゴメはこのトマトジュース市場で、断トツのシェアを誇る。
トマトジュースはカゴメにとって、定番中の定番商品。それだけに、開発費や宣伝広告費など初期コストの掛かりがちな新商品に比べれば採算もよく、上半期にトマトジュースの売り上げが反落したことによる利益への影響は小さくなかったと見られる。
カゴメの上半期の売上高1037億円のうち、売り上げ全体の5割前後を占めるのがトマトジュースを含む日本国内での飲料事業。飲料事業の内訳を見ると、「野菜生活」シリーズや「野菜一日これ一本」シリーズなど野菜ミックスジュースのカテゴリーが7割前後と大きいが、トマトジュースも1割前後を占める。
今上半期の飲料事業では、「野菜生活」が「沖縄シークヮーサーミックス」「北海道ハスカップミックス」など地産全消(地域の産物を全国で消費してもらう)を掲げた季節限定商品の牽引で順調に伸びたものの、トマトジュースはPETボトルや缶入りを中心に反落した。「今年の夏は、猛暑で他の清涼飲料などに食われたのかもしれない」と西社長は説明する。
上半期は、他にも飲料事業で季節限定の新商品が増えたことで初期費用がかかったこと、国内の飲料・食品事業をテコ入れするために、販売促進費が当初の想定より拡大したことも、営業利益を圧迫する結果となった。
■ 下半期は食品事業でも新商品を連打
昨年ほどの「バブル」は期待にしにくいとはいえ、トマトの需要拡大に取り組むカゴメの姿勢に変わりはない。トマトジュースについても、上半期はPETボトルや缶入りの定番品は反落したものの、今夏の新物トマトを使った「国産トマトとれたてストレート」はチルド商品を中心に好評を博している。
飲料の消費が伸びる上半期に比べて、下半期(13年10月〜14年3月)は、食品事業でトマト関連の新商品が目立つ。瓶入りパスタソース「アンナマンマ」シリーズでは「トマト&チーズ」など3品目を追加。「トマトのおかず」シリーズでも「なす豚肉みそ」など4品目を新発売した。
新商品以外では、2012年後半に火が付いた「ナポリタンブーム」が注目材料だ。ナポリタンは、スパゲティをゆでた後にトマトケチャップやトマトソースとともに具材を炒めて調理する日本独特の人気メニュー。カゴメナポリタン発祥の地・横浜で、11月2〜4日に、全国の人気店のナポリタン16種類を集めて「ナポリタンスタジアム」を開催し、ナポリタン人気を後押しする。
■ 次はナポリタンブームでケチャップ拡大狙う
そのナポリタンに欠かせないトマトケチャップもまた、カゴメの食品事業での定番中の定番商品だ。
スパゲティの人気メニューの中でも、ミートソースやアラビアータ、カルボナーラなどは、ゆでた麺に具材入りソースを掛ければ作れるため、レトルトパック入りなどの手軽な商品が出回っている。だが、ナポリタンでは麺をゆでた後にさらに炒めるという調理工程が必要なため、カゴメは自社で保有するナポリタンの“秘伝”の調理レシピを公開することで、ケチャップの需要を掘り起こしていく構えだ。
カゴメの推計によると、国内トマトケチャップ市場は今2013年で187億円と、トマトジュースの同220億円に匹敵する。カゴメはケチャップ市場でも断トツのシェアを占めており、ナポリタンブームがさらに盛り上がった場合の恩恵は意外に大きくなる可能性もありうる。
実は昨年のトマトブームは、キッコーマン <2801> 傘下で同業の日本デルモンテ京都大学などの共同研究で火が着き、結果的に市場シェアトップのカゴメが最大のメリットを享受することができたというもの。今回のナポリタンブームで、カゴメは自ら、秘伝のレシピ公開やナポリタンスタジアム開催などに打って出ている。 今2013年度は雌伏を余儀なくされそうなカゴメの業績だが、来期以降ははたして回復に向かうのか。その成否は、ナポリタンブームの取り込みにも懸かっていそうだ。
東洋経済オンライン 10月27日(日)6時00分)

全体の底上げがされたのはたぶんホントでしょう。
逆に今トマトものを購入するのは狙い目と言えるかもしれない。