酔っ払いと寝ていないのとは近い。

睡眠不足は酔っ払い状態と同じ!? 「コーヒーと昼寝」「帰宅後の運動」で睡眠不足解消!
第一線で活躍する専門家たちに「男のアンチエイジング」の最先端を解説してもらう連載の第9回目は「睡眠障害」について。睡眠不足だと、脳はチューハイ2〜3杯飲んだ後と同じ状態だということをご存知だろうか。寝ることは最も基本的なアンチエイジング! 快眠の方…
年を重ねるごとに失われていく「男らしさ」。いつまでも若い頃の外見・体力・健康は保てない。それを防ぐにはどうすればいいのか? 第一線で活躍する専門家たちに「男のアンチエイジング」の最先端を解説してもらう連載の第9回目は、睡眠障害について、睡眠科学の第一人者として知られる睡眠評価研究機構の白川修一郎代表に解説してもらう。
いつまでも若さと健康をキープするには、正しい食生活と運動の習慣、そして睡眠が大切だ。日本のビジネスマンが24時間働いていたバブルの頃は「忙しくてさ〜、昨日2時間しか寝てないんだよ〜」なんてドヤ顏で話す男性諸君が後を絶たなかったが、今の時代、「寝てない自慢」は仕事が遅いことの告白になりかねない。
ところが、やはり日本人は寝ていない。OECD経済協力開発機構)の2009年の報告では、加盟18カ国中、日本は韓国に続いて2番目に睡眠時間が短かった(下記グラフ参照)。中でも問題は中高年世代だ。2010年にNHKが行った「国民生活時間調査」によると、日本人の平均睡眠時間は7時間14分。他の年代はすべて7時間以上寝ているのに、男女とも40代と50代だけが6時間台で、全体の足を引っ張っている。
「望ましい睡眠時間は6時間半から8時間。5時間を切る日が続くと、脳はチューハイを2〜3杯飲んだときと同じくらい機能が低下する」と指摘するのは、睡眠研究の第一人者として知られる睡眠評価研究機構の白川修一郎代表だ。


●睡眠時間6時間以下の人は7時間以上の人より死亡率が2.4倍高い!
頭の働きが悪くなるだけではない。「睡眠不足は体を壊す」ことは疫学的にも確認されている。45歳以上の5万4269人を調査したところ、睡眠時間が6時間以下の人と、10時間以上の人はともに肥満、糖尿病、心臓病の有病率が高かった(SLEEP 2013;36(10):1421-7)。
睡眠不足になると脂肪や糖の代謝が悪くなり、太りやすくなったり、血糖値が高くなったりする。さらに、「交感神経の緊張が続くため血圧が上がるし、うつ病のリスクも高くなる」と白川代表。テストステロン(主要な男性ホルモン)の数値が低くなるという報告もある(Clin Endocrinol(Oxf).2012 Nov;77(5):749-54)。
「睡眠時間が短い人は早く老ける」というのも、あながち俗説とは言えないようだ。「睡眠中は成長ホルモンが出て細胞を再生する。睡眠不足だと、その分泌が少なくなるので老化が進んでしまう。同じく抗老化ホルモンであるメラトニンも、やはり夜に分泌される」と白川代表は説明する。
4419人の日本人男性を調査した結果、睡眠時間が6時間以下の人は7〜7.9時間の人に比べて「死亡率が2.4倍高くなる」ことも確認されている(自治医科大学の研究結果より、J Epidemiol.2004 Jul;14(4):124-8)。つまり、睡眠不足は老化を進め、寿命を縮めるというワケ。「よく眠る」ことは立派なアンチエイジングなのだ。


●よく眠るための7カ条とは?
では、「よく眠る」ためにはどうすればいいのだろう? 白川代表に聞いた。


1.酒、タバコ、コーヒーを控える  コーヒーや紅茶に含まれているカフェインが眠りを妨げるのは常識。タバコに含まれるニコチンには興奮作用があり、同じく入眠を妨害する。意外なのはお酒だ。「ナイトキャップ」という言葉もあるように、アルコールは眠気を誘うような気がするが、「微量だと興奮作用がある。たくさん飲むと寝つきは良くなるが、夜中に目が覚めやすい。レム睡眠(深い眠り)が減り、交感神経が興奮するので翌日に疲れが残る」と白川代表は話す。


2.寝る直前に食べない  体内時計を正常に動かすためには、朝食を食べることが大切だ。ところが寝る直前に食べると胃に食べ物が残り、朝食が食べられなくなる。「特に脂肪は体内時計を狂わせるので最悪」と白川代表は注意する。夕食は寝る3時間前までにすませよう。どうしても就寝直前になってしまった場合は、糖質や脂肪が少ない低カロリーのものを。


3.夕方から夜にかけて体を動かす  運動は朝よりも夜のほうがいい。白川代表によると、「人間の体温は就寝から19時間後に最も高くなる。よく眠るためには、このタイミングで有酸素運動を30分くらいするのがベスト」という。午前1時に布団に入るなら午後8時前後ということ。どうしても時間が取れない人は、帰宅時に最寄り駅より1駅前で降りてウォーキングを行うのも有効だ。


4.寝る前にPCやスマホを見ない  夜になると、脳の松果体からメラトニンというホルモンが出る。これに覚醒拮抗作用があり、眠くなるというワケ。PCやスマホに使われるLEDが出すブルーライトメラトニンの分泌を抑え、眠気を追い払ってしまう。また、「寝る前は情動的に興奮しやすいので、メールの返信やネットへの投稿はやめたほうがいい」(白川代表)。朝は窓を開けて太陽の光を浴びよう。メラトニンの分泌が抑えられ、体内時計を正常化してくれる。


5.眠りを誘う香りを使う  女性に人気のアロマセラピーは男性にもよい。「ヒマラヤ杉などに含まれる香気成分セドロール(シダーウッド)、バニラに含まれるヘリオトロピンは眠りを誘う効果が確認されている」と白川代表。その他、カモミール、ラベンダー、白檀(サンダルウッド)なども鎮静効果があるので、好みの香りを選んで寝室に置いておくといいだろう。就寝直前よりも2時間ほど前から香らせておくとよい。


6.就寝前の入浴はぬるめのお湯がいい  熱めのお湯が好みという男性は多いと思うが、もし就寝直前に入浴するのであれば、40℃ぐらいのぬるめのお風呂にゆっくりと浸かるのがいい。熱めのお風呂は交感神経が興奮して目が冴えてしまうため、入浴する場合は就寝2時間前までに済ませるとよい。


7.無理に眠ろうとしない  眠くなければ、無理に布団に入らないほうがいい。睡眠不足は良くないが、どうしても眠れないときは「一晩くらい徹夜したって死なん!」と開き直ることも大切だ。翌日どうしても眠かったら、時間を見つけて15分ほど仮眠を取ろう。「直前にコーヒーを飲むといい。カフェインが効いて、すっきり目が覚める」と白川代表はアドバイスする。
「毎日6時間は寝ているから」という人も安心はできない。最近さわやかに目が覚めない、なんだか疲れが抜けない、といった場合、実は充分な睡眠が取れていない「かくれ不眠」の可能性も。白川代表もメンバーに入っている睡眠改善委員会のサイト「かくれ不眠ラボ」でチェックしてみよう。
日経トレンディネット 10月18日(金)9時3分)

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