戦略の勝利

学習塾、少子化でも最高益ラッシュのなぜ
大詰めを迎えてきた受験シーズン。新年度も近づき、にわかに沸き立つのが学習塾・予備校業界だ。「わが子を志望校に」と願う親から選ばれるべく、あの手この手を講じる。
日本では、長引く不景気のうえに子どもの数が年々減り、子ども向けビジネスの競争は厳しくなるばかりだが、塾業界では景気の良い話も聞こえてきている。株式を公開する上場約20社のうち、なんと半数近くが過去最高益を更新する成長を見せているのである。「明光義塾」を展開する東証1部上場の明光ネットワークジャパン、完全マンツーマンの個別指導「TOMAS(トーマス)」を展開するリソー教育、東京西部地区を中心に「ena」を展開する学究社、神奈川県に集中するステップなどだ。
少子化というハンデがある厳しい環境下で、なぜ業績を伸ばせるのか――。キーワードは「個別指導」「難関校」「地元志向」である。
■ 「受験=集団指導」の定石に風穴
「個別指導」で光るのが明光ネットワークジャパンリソー教育だ。明光は全国2000教室、生徒数で13万人以上と他社を圧倒する教室数を有する。早くからFC(フランチャイズチェーン)化に着手し、過去10年間で倍増した。2013年8月期は売上高が前期比10%増の159億円、営業利益も同8.6%増の38億円と連続最高益を掲げ、配当は15期連続で増配予定だ。
リソー教育は、「受験=集団指導」という定石に風穴を開け、同じく過去最高益を更新し続けている。「難関校」を目指す成績上位層を中心に完全マンツーマンの個別指導「TOMAS(トーマス)」を展開。教室数は70弱と小規模、年間新設数も4程度と少ないが、首都圏でのお受験ママ達には知られた存在だ。
直営による個別指導のためコストもかかるが、客単価は明光の2倍以上の年間80万円以上と高額。売上高営業利益率は約15%と好採算だ。最近は老舗の幼児教育「伸芽会」の運営ノウハウをもとに、朝から夜まで長時間預かる英才託児もスタートした。年間200万円弱という破格の料金ながら、名門幼稚園や小学校に入学させたい医者や弁護士、外資系金融に勤める親からの引き合いは強いという。
かつて学習塾といえば、学校と同じ集団クラス指導が主流だった。だが、01年頃から学力に応じたきめ細かい対応が求められ、教師1人につき生徒1〜3人程度を教える個別指導のニーズが急速に増加。市場全体が減少する中、個別指導は右肩上がりで、矢野経済研究所によると、学習塾の全体市場が9200億円程度となる中で、個別指導はシェア4割以上の4000億円にまで拡大している。
■ 「脱ゆとり」も追い風
さらに09年度から新学習指導要領が順次実施されたことも追い風だ。小学校では11年度から、中学校では12年度から全面実施されている。小・中学校では授業数や学習内容が増加。いわゆる「脱ゆとり」だ。これに伴い、学校の授業やテストについていくための補習ニーズが一段と増加。補習塾を主力とする明光は今期95教室の大量新設を予定するなど意欲的だ。
一方、私立「難関校」の受験者数は、不景気の影響で毎年減少傾向にあるのも事実。代わって成績上位層に人気が出ているのが公立トップ校や中高一貫校など「地元志向」だ。こうした成績上位層をうまく取り込んでいるのが学究社とステップである。
学究社は1985年に学習塾業界で初めて株式上場した先駆者。13年3月期の業績見通しは売上高が前期比23%増の80億円、営業益が2.4倍の12億円と大幅増益で過去最高を予定している。
学究社の強みは、東京都下で屈指の塾激戦区である国立市を中心にドミナント展開し、多摩地区では都立上位中学校の合格シェアで5割を握るなど圧倒的な合格実績だ。08年に最大のライバルだった進学舎を買収したことで一段と飛躍。来年度からは授業料を値下げし、東京東部へ戦線拡大するなど野心的だ。
同じく神奈川県で過去最高益をたたき出しているのが東証1部上場のステップだ。県中西部を地盤に約120教室を展開。県外に進出する予定はなく、徹底したドミナント展開を貫いている。神奈川県は13年春から推薦入試を廃止し、一般入試を全受験生に義務付ける方針に転換。加えて、記述式問題の比重を増やしたことで学習塾への関心が一段と高まっている。
■ 全国区ブランドでなくとも存在感
個別指導が追い風にある中、学究社、ステップともに集団指導で実績を上げていることが特徴だ。全国区のブランドではなくても、地元密着での信頼度の高い受験指導がまさに強みとなっている。
文部科学省の調査によると、学習塾への出費は中学生で18万円程度と過去10年で減っていない。一方、帝国データバンクによると、収入高上位20社が主要110社の収入高合計の半分以上を占めるなど寡占化が顕著だ。少子化、不景気に加え、大学全入時代による学習塾離れなどに伴い、大半の小規模業者は厳しい状況にあり、倒産件数は毎年20〜30社と高止まりしている。今後はますます優勝劣敗が進むことになるだろう。
東洋経済オンライン 2月25日(月)6時00分)

まあ、結局は「かゆいところに手が届く」ところが勝ってるってことでしょうか。