本音

JTたばこ広告めぐり波紋 特賞「1000万円相当の金塊」はやりすぎ?!
日本たばこ産業(JT)が11月末まで実施しているキャンペーンが波紋を呼んでいる。「抽選で総計2013名様にお年賀を。」と称し、特賞として1人に1000万円相当金塊、2012人に現金1万円、先着30万人に好きなたばこ1箱をプレゼントするというもの。この販売戦略が、あらゆるたばこ広告を禁じた「たばこ規制枠組み条約」の趣旨に反しているという指摘が、禁煙を推進する医師や、法律の専門家から上がっているのだ。JTの販売戦略は妥当なのか。
「1000万円相当の金塊が、当たる!」 10月中旬、書店に並んだ週刊誌の表紙裏見開きページに、こんなカラー広告が掲載された。金色の背景に、縦5・6センチ、横12センチの光り輝く金塊の写真が目を引く。金塊の下には「原寸大」の文字がある。
JTによると、この広告は今年秋ごろから週刊誌などに掲載。JT広報部は目的について、「たばこを吸っている方にお年賀をということです」と説明する。毎年、愛煙者を対象にした販売促進キャンペーンは行っているが、1000万円相当といった高額なプレゼントは初めてという。
応募には、JTが成人のみに発行している「スモーカーズID」が必要だが、商品購入の必要はない。このIDを持つ人だけが閲覧できるキャンペーンページにアクセスすれば、1人1回応募できる。JT広報部は「たばこ事業法財務省の指針、日本たばこ協会の自主規準をすべて満たしている適法な広告。未成年者への配慮もしており、何の問題もない」と説明する。これに対し、「こうした販売促進は禁止されるべきだ」と訴えているのが、たばこの健康被害を訴える医師らでつくる「日本タバコフリー学会」(事務局・大阪府豊中市)だ。
同学会が根拠とするのは、世界保健機関(WHO)の総会で採択され、2005年2月に発効した「たばこ規制枠組み条約(FCTC)」。全世界で年間600万人が死亡しているという被害を減らすため、たばこ税の大幅値上げやたばこパッケージの50%以上に写真入り警告を入れること、たばこ自販機をなくすことなどを規定しており、日本も署名している。
FCTC第5条第3項には「締約国はたばこ産業の商業上及び他の既存の利益からそのような政策を擁護するために行動する」と規定。また、第13条第3項には「締約国はあらゆるたばこの広告、販売促進及び後援に制限を課する」と書かれ、健康を害するたばこの販売促進を国が規制することを促しているのだ。
同学会は10月、厚生労働大臣宛に「FCTC遵守と高額景品付きタバコ販売促進禁止の要望」を提出し、JTに対する強い働きかけを求めた。同学会理事の薗はじめ医師(52)は「世界的にたばこをなくしていく方向で、日本も条約に加盟しているにもかかわらず、喫煙のイメージアップや射幸心をあおる高額なキャンペーンは許されない」と強調する。
「1000万円相当の金塊が当たる」キャンペーンによる販売促進は適法なのか、それとも違法なのか。近畿大学法学部の三柴丈典教授(産業保健法学)は「今回のキャンペーンが販売促進の規制を定めたFCTCの趣旨に反するのは明らかだ」と指摘する。一方で、「条約などの条文は一部を見るのではなく、全文を見なければならない。この条約が日本でどういう法的効力があるのかも考える必要がある」という。
三柴教授によると、締結された条約は国内法と同等か、それよりも上の存在。国内裁判所が、そのような条約の条文に基づいて判断を下すこともできるが、憲法との関係では条約の方が下回るというのが通説だ。FCTCの条文にも「憲法又は憲法上の原則に従い」という文言が含まれており、広告規制には、憲法で認められた「事業活動や表現の自由」との関係が問題になる可能性があるという。
また、日本にはたばこ産業の発展と税収の安定的確保を目的とした「たばこ事業法」がある。三柴教授は「国民の合意がたばこの販売を認める法律として結実していると考えられるため、適切な範囲内での広告は国内法的に認められると解釈される」としている。
日本タバコフリー学会からの要望を受けた厚生労働省健康増進課は「たばこの広告に関しては財務省の管轄」との立場。財務省たばこ塩事業室は「わが国ではFCTCへの加盟を受けて平成16年3月に定めた『製造たばこに係る広告を行う際の指針』によって、広告に規制をかけている。JTの広告は指針に抵触しておらず、問題はない」としている。
ただ、三柴教授はこうくぎを刺す。「たばこ事業法に基づく一般的な広告は現在の国内法上認められる可能性が高いが、『特賞1000万円相当金塊』というのはやりすぎだ。具体的な被害との因果関係が明確にならない限り、ただちに裁判になってJTや国が負けるかは微妙だが、守られるべき法的な利益の間のバランスを壊す行為であることは確かだ。」
FCTCに加盟しているにもかかわらず、日本の政策が不十分だとの批判は、国内外の専門家から根強い。日本タバコフリー学会は「企業はあらゆる手段を使って自社製品の顧客を増やそうとしている。注意してほしい」と警鐘を鳴らしている。
産経新聞 - 11月23日(金)11時0分)

派手にやったけど、政府の本音が透けて見えたり、むしろそっちのほうが面白い。
昔に比べたら、それだけでタバコには流れない土壌はできているだろうし、心配するほどの効果はないでしょうけど。