時代はカルピス

アサヒがカルピスを買収飲料業界再編の幕開け
アサヒグループホールディングス(以下アサヒグループHD)が、味の素の100%子会社であるカルピスを約1000億円で買収する方向で交渉していることがわかった。両社とも交渉の事実および交渉が最終段階にあることを認めており、早ければ5月にも合意する見込みだ。
カルピスの売上高は2011年3月期末ベースで1084億円。アサヒグループHD傘下のアサヒ飲料の売上高は11年12月期実績で3109億円。この買収が実現すれば、アサヒ飲料伊藤園を抜き飲料業界単独3位、シェアで約12.4%(ケース数ベース)に躍り出る。
買収の目的はシェアだけではない。カルピスの圧倒的なブランド力と「乳酸菌」という独自財産も魅力だ。「そもそも乳酸菌は、基礎研究の蓄積がないと生み出すことができず、他社がコピーすることが難しい。消費者の健康意識が高まる中で各社が乳酸菌関連商品の開発に血道を上げている」(飲料業界関係者)。
アサヒはこれまでも、有力な飲料ブランドを買収してきた経緯がある。2010年にはハウス食品から「六甲のおいしい水」を買収し、ミネラルウォーター市場でのシェアを3%から10%に伸ばした。また同年には麦茶市場で80%のシェアを持つ「六条麦茶」をカゴメから買収。「海外のみならず、国内飲料分野においても、強いブランドや事業単位の買収により、カテゴリートップクラスの強い事業を作る」と泉谷直木・アサヒグループHD社長は言う。
両社は07年に自動販売機会社のアサヒカルピスビバレッジを設立しており、協業関係にあった。そのような経緯もあり、今回の買収交渉はアサヒグループHD側が半年ほど前に持ち込み、交渉が続いていた模様だ。
飲料市場はここ数年「専業メーカー」への事業集約が進んでいる傾向がある。例えば、ハウス食品は「店舗や自販機営業などの面で他の加工食品と異なる営業陣容が必要になる上、飲料のラインナップが充実していないと小売店での営業活動がやりにくい」(ハウス食品幹部)という理由で六甲のおいしい水を売却している。
味の素は利益の柱である海外食品を強化するという課題を抱えている。飲料として持つのは健康食品のカテゴリーに近いアミノバイタルとカルピス、AGFのコーヒー飲料の一部のみで、食品という主力分野に注力するためにカルピスを売却し、その資金を海外事業の強化に充てるという判断をしてもおかしくない。
今後注目すべきは業界他社の動きだ。業界3位から4位に後退する伊藤園は、もともと看板商品「おーいお茶」の一本足で支えてきた事業を、他の商品カテゴリーの強化などにより補完する意志を強く持っており、現にヨーグルト製品のチチヤス乳業、コーヒーの「タリーズ」を買収している。いい案件さえあれば、動く可能性は十分ある。
さらに、今回のアサヒグループHDの買収で業界5位が確定するキリンビバレッジも、なんらかの手を打つとみられるが、本体のキリンホールディングスがすでに海外事業に大きく投資をしており、あまり大きな身動きはとりにくいだろう。
鍵を握るのは、いわゆる「総合飲料大手」に属さない企業だ。「JT傘下のジャパンビバレッジや、独立系のダイドードリンコなどには、すでに上位メーカーが接触を開始している」(金融筋)という情報もある。
飲料業界は、首位の日本コカ・コーラグループが約30%、2位のサントリー食品が約20%のシェアを確保する2強の状態だ。今回のアサヒグループHDのカルピス買収は、3位以下の勢力図を変えるだけでなく、上位2社にもプレッシャーを与えることは間違いない。乱戦の幕開けだ。
(ダイヤモンド・オンライン - 4月27日(金)19時35分配信)

まだまだ成長が見込める分野だ、と考えているのかな。