前の日のニュースに意味はない

稼ぐ人はなぜ月曜日だけ2倍の時間をかけて新聞をチェックするのか
■「景気指標欄」の数字をメモせよ
仕事で成果を出せない人は、自分の関心事やすぐ役に立ちそうな情報ばかり求めます。それに対して成果を出す人は、自分の関心事を社会の関心事に合わせます。つまり、未来を想像し、長期的な視点で自分の力となる情報を仕入れ、成長することができるのです。
自分の関心のある記事ばかり読んでいると、それについては深掘りできますが、多くの場合、社会はあなたの関心に興味がありません。また、すぐに役立ちそうな情報は、ほかの誰もが手に入れようとするものです。
では、ほかの人と差をつけるためには、新聞をどのように読めばいいのでしょうか。
重要なのは、自分が経営者になったつもりで新聞を読むことです。経営者には企業が進むべき方向を定める役割があります。そのためには、データを論理的に組み立て、戦略を描く能力が必要です。その材料として、自社の属する業界の情報はもちろん、他業界や政治の動向、世界経済の情勢まで、頭にインプットしなければならないのです。
わかっているけど、なかなか頭に入ってこない……。多くの人の悩みはこうでしょう。私がおすすめするのは、次の3つのステップです。
1番目は、日本経済新聞月曜朝刊の「景気指標欄」に目を通すこと。いつもより時間をかけて読んでみましょう。私は、これを隅から隅までチェックする作業を20年ほど続けていて、経営コンサルタントという仕事にも大いに役立っています。
景気指標欄に書かれている膨大なデータを暗記するのは無理でしょうから、まずは「GDP」「円相場」「日経平均」「消費者物価指数」「企業倒産件数」などといった基本的な指標を押さえましょう。私は、重要な指標を手帳にメモ書きし、いつでも見返せるようにしています。
■読めなくても翌日に持ち越さない
2つ目のステップは「記事の関連づけ」です。
新聞を継続して読んでいると、頻繁に取り上げられる話題に気がつくはずです。たとえば最近なら石油価格の上昇などで、それは大きな社会の関心事だとわかります。一方で米国がQE3(量的緩和第3弾)に踏み切るかどうかが焦点になっています。これと石油価格上昇を関連づけて考えると、どうなるでしょう。
通常、量的緩和を行うと物価が上昇しがちです。ですから、物価上昇が進む局面では、量的緩和をなかなか行うことができません。そのため、QE3はしばらく行われないだろうと推測できます。
さらに、金価格に目を向けると、3月2日の日経には「金急落、1時1700ドル割れ」とあり、米の量的緩和への期待が遠のいた影響であることが解説されています。このように各記事の関連がわかるようになると、世の中の動きが立体的に見えてくるのです。
3つ目のステップは、データを定点観測することです。
たとえば、日本の名目GDPは現在、約470兆円。これは1991年とほぼ同じ水準です。一方で中国は毎年10%前後の成長を続け、2010年、日本と中国のGDPは逆転しました。
推移を押さえていれば、中国と日本の差は今後ますます広がるだろう、と仮説を立てられます。「消費者物価指数」や「新車販売台数」など、他のデータの推移からこの仮説を検証することもできるでしょう。
私は、企業幹部向けの研修で「1カ月後の株価と為替レートを予測してください」というトレーニングをよく行います。そのためには、日本の金利が上がれば円相場が上がるだろう、企業業績が上向けば株価が上がるだろう、といった仮説を立てる力が求められます。
予測を当てることはたいした問題ではありません。仮説を立て、ストーリーを考えながら予測するというプロセスが重要なのです。こうしたトレーニングを繰り返せば、同じ時間でもはるかに深い情報を掴むことができるようになるでしょう。
マクロ経済は一見、多くの人にとって直接の関係はないように思えるかもしれません。しかしそれぞれの仕事の周りには業界があり、その周りにはマクロ経済が存在しています。
まずは日経の「景気指標欄」に登場する主要数字をメモし、それと照らし合わせながら、自分の業界に関する記事や関心のある記事を読むことから始めてみてください。次第に内容の本質が見えてくるようになるはずです。そうすれば、おのずと関心の幅も広がっていくでしょう。
深い読み方を身につけるには、習慣化しかありません。私は毎朝、通勤電車のなかで日経を読んでいます。時間にすると22分。読む時間が足りない場合はオフィスで読んだり、カバンに入れて移動中に読んだりします。
新聞一面のトップ記事は必ず読む。政治面や国際面の記事は、中身は読まなくとも必ず見出しにはすべて目を通す。忙しくてどうしても読めなかったら、潔く諦め、翌日に持ち越さない。これが継続する鉄則です。

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小宮コンサルタンツ代表
小宮一慶
宮内 健=構成
市来朋久=撮影
(プレジデント - 4月23日(月)10時30分)

この手法がすべてだとは思いませんが、お金を動かせる人の違いみたいなものかな。
それは感じます。