小泉と野田とは違う

消費増税「政府案」決定の舞台裏 首相を覆う孤立の影
30日夕、公邸前で珍しく記者団の取材に応じた野田佳彦首相の言葉は、これまた珍しく高揚していた。
「前進があったと思っている。党内で反対意見もあったが、一致してまとめることができた」
この直前、「政治家としての集大成」とまで言い切った消費税率の引き上げ問題で、「平成26年4月に8%、27年10月に10%」とする政府案に何とかたどりつくことができた。しかし、そこに至る道のりは、政治生命すら絶たれかねない綱渡りの連続だった。
◆自らの甘さ実感
26日夜、民主党藤井裕久税制調査会長が官邸の首相執務室に駆け込んだ。
藤井氏「八ツ場(やんば)ダムの工事再開決定で、増税反対派が勢いづいています。それでも(消費税をめぐる)年内の意見集約という意志は変えませんか」
首相「曲げません」
藤井氏「首相ご自身の意志を直接示したほうがいいかもしれません」
2人は、首相がインドから帰国する29日を“勝負の日”とにらんだ。そして、この日予定される党の税制、社会保障と税の一体改革両調査会の合同総会に首相自ら乗り込み、反対派を説得する腹を固めた。
首相には自信があった。総会直前には、前原誠司政調会長や藤井氏らを公邸に集め、「30分は演説したい」と意気込みを示した。
しかし、いざ総会に出席してみると、自らの甘さを悟ることになる。「離党者に冷たい」「今内閣不信任案が出たら賛成するぞ」…。首相を待っていたのは、増税反対派からの激しい言葉。党内融和どころか、現実は党内分裂だ。
最終的には当初想定した消費税率の引き上げ時期を、半年先送りする妥協案を示すことで、総会を乗り切った。念願の消費税増税へ一歩前進−。大きな達成感を感じる首相だが、党執行部の多くは冷ややかだ。
首相が総会で奮闘していた頃、小沢一郎元代表増税反対派とのパイプ役を期待された輿石東幹事長はすでに、地元・山梨県に帰省していた。長く日教組という「組織」に身を置いてきた輿石氏は、消費税増税のためなら「たとえ離党者が出ても」と気色ばむ首相のことが理解できない。
前原氏は、経済成長を重視する「上げ潮派」に近く、財政再建派の首相とはそもそも路線が異なる。
今後、消費税問題の主戦場は与野党協議の場に移る。しかし、自民、公明両党は早期の衆院解散を求め、応じる気配はない。首相は両党の説得を誰に委ねようというのか。
◆小泉流を警戒
「首相は、『郵政民営化』を旗印に衆院解散に打って出た小泉純一郎元首相をまねようとしている」
消費税問題に執念を燃やす首相に対し、党内でこんな声が出始めている。議員たちは、「増税」を旗印にした衆院解散の可能性を敏感に嗅ぎ取っている。
増税反対派の対応にも微妙な変化が起こっている。
執行部の運営に腹を立て総会を途中退席した山田正彦農林水産相は、30日未明まで数人の議員と官邸近くの居酒屋で飲みまくり、「本来の民主党に戻そう!」と叫んだ。出席者の一人は「分党」の可能性もちらつかせ、従来通り首相との対決姿勢を示した。
かたや、「首相一人のためにこの国や政権があるわけでない」と断言していた川内博史衆院議員は、総会後に藤井氏とガッチリ握手した。党の「増税を慎重に考える会」の田中慶秋会長も「首相が政治生命を懸ける思いなら、協力していかねばならない」と述べた。2人は首相に理解を示してるのではない。首相の“暴発”を警戒しているのだ。
首相の孤立感は徐々に深まっている。
産経新聞 - 12月31日(土)7時55分)

小泉元首相の手口は、ほぼ財務省官僚の考えと似てるんじゃないかと思うが、決定的に違うのは、まかりなりにも一時的に効果を上げたこと。
そして、まったくブレがなかったこと。
なにより、彼の時は消費税増はなかった。
あげたところで、おそらくは再建できる状態になどない以上、今はどーよ・・・と思ってしまうのだが。