名勝負

センターコートに響いたキミコ・コール クルム伊達、ビーナスに惜敗
ウィンブルドンテニス第3日

■飽くなき執念と軽快なプレー
テニスのウィンブルドン選手権第3日が22日、英国・ロンドン郊外のオールイングランドクラブで行われ、女子シングルス2回戦ではクルム伊達公子エステティックTBC)が第23シードのビーナス・ウィリアムズ(米国)相手に善戦したものの、惜しくもセットカウント1−2(7−6、3−6、6−8)で敗退した。
この日は雨。閉じられた屋根の下で、本場テニスファンがクルム伊達のクラッシックなプレーを堪能した。5度の優勝を誇るビーナスと大会最年長40歳の日本人の対戦は、恐らく、おおかたの予想とは違う展開になった。
クルム伊達が第1セットの第1ゲームをいきなりサービスブレークすると、得意のレシーブゲームで本領を発揮。相手のビッグパワーにしっかり対応しながら、巧みにコースを打ち分けて主導権を握った。第3、第5ゲームと3連続ブレークして5−1。ビーナスも徐々に態勢を整えてきた。時速120マイル(約193キロ)のサーブから始まるラリーで追い上げ、第7ゲームから5ゲーム連取で一時は6−5と逆転。
それでもこの日の伊達はゲームによく集中して粘り強く、サービスゲームが良かった。セットポイントを1本切り抜けてのタイブレークで先手を奪い、6−2からの3本のセットポイントは防がれたものの、そこから再び反撃して第1セットを奪った。飽くなき執念、パワーをかわす軽快なプレーの数々。ウインブルドンの芝にふさわしいプレースタイルに、場内からしきりにキミコ・コールがわき上がった。
■今大会屈指の名勝負に
クルム伊達自身、果たしてこんな対戦を考えたことがあったか。ビーナスとセリーナのウィリアムズ姉妹は、クルム伊達が引退した1996年以降に登場し、パワーテニスの新時代を築いた主役。ある意味で、クルム伊達の早い引退を呼び込んだ一因ともいえる存在だった。そのパワー時代の象徴的プレーヤーと、96年のシュティフィ・グラフ(ドイツ)との伝説の準決勝以来になるセンターコートで打ち合うことになろうとは……。その辺りにも、この試合が熱を帯び、喝采を浴びる背景があったはずだ。
第2セット、クルム伊達にやや疲れが見え始め、ボレー、スマッシュの凡ミスが続く。ゲームがやや単調になり、セットオールに追い付かれた。エンジンがかかり始めれば手のつけられない相手だが、先にブレークされても、クルム伊達は食らいついた。第3ゲームをブレークバックしてからの第4ゲームが大きな鍵だ。7度のジュースを繰り返し、5本のブレークポイントを覆してサービスキープ。懸命のサービスキープでぴったりと追走し、一発のチャンスをうかがう。
そんなクルム伊達にビーナスも大きなプレッシャーを感じたはずだ。5−5からの第11ゲーム、6−6からの第13ゲーム、いずれも30−30まで行ったが、次の1ポイントが遠かった。グランドスラムで7度優勝という実績の壁は厚かったが、今大会屈指の名勝負に数えられることになるだろう。
そのほか日本勢では、ウィンブルドン初出場の土居美咲ミキハウス)が世界ランク31位のベサニー・マテック・サンズ(米国)を倒してグランドスラム初勝利を挙げた。また、シングルスで逆転負けした森田あゆみキヤノン)も気持ちを切り替え、ダブルスで2回戦に勝ち進んでいる。
男子はラファエル・ナダル(スペイン)、アンディ・マレー(英国)、アンディ・ロディック(米国)らが危なげなく2回戦を突破し、女子は第2シードのベラ・ズボナレワ(ロシア)らとともに、ドイツ期待のジュリア ゴージェス、サビーン・リシッキといった若手も順当に勝ち上がっている。
スポーツナビ - 2011年6月23日(木))

この対戦が実現したことに一番驚いているのは当事者同士だろうし、結果にも驚いているだろうし・・・