進化が止まらない

【オランダ】宮市亮、覚悟の2ゴール2アシスト。「チームの絶対的な存在になりたい」
これほどの活躍をした試合の後くらい、大目に見てやろう――。
フェイエノールトの広報担当者がそんなふうに考えたのだとしたら、我々は宮市亮の活躍に感謝しなければならない。
4月17日、エールディビジ第31節。フェイエノールトがウィレムIIを相手に6対1の大勝を収めた試合後、宮市はうれしそうにシャンパンのボトルを抱え、取材エリアに姿を現わした。
出場2戦目にして初ゴール。以来、宮市への加熱報道を予防すべく、フェイエノールトは彼への取材のすべてをシャットアウトしてきた。個別のインタビューはおろか、試合後の取材さえも。
だが、この日の宮市はフェイエノールト加入後、初となる1試合2ゴール。加えて、宮市がキッカーを任されている左CKからも、2ゴールが生まれた。つまり、実に6ゴール中4ゴールに宮市が絡んだことになる。
フェイエノールトとしても、さすがにこれだけの活躍をしてもなお、宮市に無言を貫かせるわけにはいかなかったのだろう。「5分だけですよ」。念押しする広報担当者の傍(かたわ)らで、宮市は久しぶりに報道陣の前で口を開いた。
このところの試合について宮市は、「自分でも(相手DFに)抑えられているなっていう感覚はあった。ここは何とかしないといけないなっていうか、一皮むけないといけないところだった」と振り返る。
「研究されてくるだろうなとは思っていました。ただ、そういうときにどうできるかっていうのは、自分が成長していくひとつの過程というか、そういうところだと思っていたので、覚悟はしていました」
そんなとき、マリオ・ビーン監督からのアドバイスは「とにかく1対1は(勝負に)行け。自分を信じろ。信じていれば結果はついてくる」。
だからこそ、宮市はこの日の試合に臨むにあたり、「(最近の抑えられている状況を)自分で打開していかないとダメだと思ったので、いろいろ考えてやりました」。
自身1点目のゴールは、右サイドからのクロスを左からペナルティエリア内に走り込んで合わせたものだったが、そうした動きは「ここ最近、より意識をするようになった」ものだという。
「ああいう形はゴールに結び付きやすいですし、(ゴール前に)いいスペースが空いていたので、あそこに入っていかないと点は取れなかった。前までは、(右サイドからのクロスに対して)ちょっとファー気味にいる感じでしたけど、積極的に中に入って行けば、点も取れると思うので。やっぱり得点というものをどんどん意識していきたいので、それはよかったと思います」
また、「(出場2試合目で)1点取ってから遠ざかっていたので、何とか1点取れたのも大きいです」とも語った宮市。実際には1点どころか、2点を取っているのだが、ウィナルダムのシュートのこぼれ球を押し込んだ2点目については、「あれを外していたら、ちょっとって感じですけど、決められてよかったです」と照れ笑いであしらった。
華々しい活躍をすればするほど、マークが厳しくなるのは、勝負の世界の常。だが、宮市はその厳しい世界で、最初の壁を乗り越えたように見える。少なくとも宮市の表情や言葉からは、そんな手応えをうかがわせた。
「1日1日成長できているし、成長させてもらっているので、いい経験ができています。まだまだですけど、もっともっと成長できると思うので、もっともっと上を目指してやっていきたいと思います」
そして、宮市は高らかに目標を掲げた。
「どんどん結果を出して、チームの中心になっていって、もう絶対的な存在になって、自分がチームを動かせるくらいの選手になれるように、頑張りたいと思います」
堂々たる受け答えとは裏腹に、彼を囲んだ記者一人ひとりに会釈してから取材エリアを離れた宮市。腕に抱えられたシャンパンは、この試合で彼が、マンオブザマッチに選ばれた証である。
浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
スポルティーバ - 4月18日(月)19時43分)

センターフォワードとは違うけど、日本にずっと欠けていたピース「9番」が、いよいよ埋まる時が近いのかも・・・。