赤潮が消えるかもしれない

赤潮 「海の悪役」一転、アサリのエサに 山口
山口県水産研究センター(山口市)が、赤潮を用いたアサリの稚貝育成に取り組んでいる。漁業被害をもたらす「海の悪役」をエサにしてアサリを育てるという大胆な発想で、全国でも初の試みだ。各地でアサリの人工種苗の研究が進められているが、エサが少なくなる梅雨時期の成長鈍化が長年の課題だった。センターは「今回の研究で光明がさした。資源回復につなげたい」としている。
稚貝育成に用いられるのは、県内で発生する赤潮の主要な原因である「ヘテロシグマ・アカシオ」。九州南部で被害が相次ぐ「シャットネラ」よりも毒性が比較的弱く、梅雨期でも培養できる。県内では真夏を除いた5〜11月に発生しやすく、1ミリリットルあたり5000個以上で注意報が発令される。今シーズンはヘテロシグマによる警報、注意報が県内の瀬戸内海側で計3回発令された。
赤潮は養殖魚が死ぬといった被害を出すが、アサリなどの二枚貝はむしろよく肥えるといった通説があり、センターが着目した。
◇グリコーゲン3倍に
昨年8〜11月、センターは科学技術振興機構の助成を受け、九州大大学院と共同試験を実施。1ミリリットルあたり3000〜7000個を含む赤潮を施設の稚貝に与えると、自然の海で育てるのと同程度のたんぱく質を含有するようになり、活力を示すグリコーゲンは従来の飼料を使った場合より約3倍高いことも確認された。
県によると、アサリの全国の漁獲量は、ピークだった83年の16万トンから08年は4万トンまで減少。山口県ではさらに深刻で、08年は全盛期のわずか0.1%の10トンに落ち込んだ。過去の乱獲や天敵ナルトビエイの出現などが原因という。
センターの多賀茂・専門研究員(40)は「1種類のエサでこれだけ元気に成長するとは驚いた。赤潮でアサリが十分に育つことを確認できた」と話す。
エサとして活用するには、定期的に十分な量を確保するため、赤潮を濃縮し、粉末化することが欠かせない。有毒な排水の処理も必要だが、試験ではムール貝を使った排水の無害化にも成功しており、実用化に向け段階的に研究を進めている。
毎日新聞 - 10月31日(日)11時35分)

物事の両面性をあらわす象徴的な出来事にも思えるのだけど、技術の進歩は本当にすごいねぇ。