アペリティフなら要らない
- 作者: 高嶋哲夫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2000/04
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (10件) を見る
そこでワインクーラーなんか頼んで観たのが、間違いの元だった。
なんて重たいストーリーなんだろう。
かつて織田裕二が主演した「WHITEOUT」を観た時は、まだ救いがあった。
いや。
言ってみれば、ファントム・ペインだ。
現実にはこんなストーリーは起きてはいなかっただろうし、人も死んでない。
でも、このFILMは、あまりにも多くの人間が死ぬ。
いや、フィクションであるからこその救いだ。
911はもう要らない。
要らないけれど、いったいいつまで仮想の痛みと悲しみを感じなければ、人間はわずかばかりのジャスティスを保てないんだろうか。
仮想世界で殺戮を繰り返さないと、止まらないものなんだろうか。
極めてヲタク的視点で言えば、主人公はカメラマン。
手にしたニコンF3と、最後に握りしめるコダクロームのリバーサルフィルムが、すべてのように思えた。
元になるシナリオが2000年のものとはいえ、あの極限状態で信用できるのは、クランク巻上げのカメラだけ。
ねーちゃんばっかり撮っていし、それで生計立ててるわけでもないが。
自分も、これでもカメラマンの端くれだと思っている。
あれじゃ、虚構世界のカメラマンに、永遠に自分は勝てない気がした。
ホントは、何を残すべきなんだろうな。
でも、何かを残すために、きっと自分はカメラと出会い、結局今も手放せないでいる。
そうでなきゃ、21世紀になって、30過ぎて、この世界に足を踏み込むことなんてないもの。
いや、「残す」じゃないな。
「写す」ものだから。