呼吸

琵琶湖の深呼吸やっと確認 全循環、07年以来の遅さ
京都新聞 3月14日(月)23時10分)


滋賀県は14日、琵琶湖で表層の水と湖底の水が完全に混ざり合う「全循環」を確認したと発表した。深い湖底まで酸素が行き届く年に一度の貴重な現象で、例年1〜2月に確認できていたが、今年は暖冬の影響で遅れていた。
この日、琵琶湖環境科学研究センター(大津市)が、高島市今津沖の「第一湖盆」と呼ばれる北湖の最も深い一帯を調査。水深約90メートルの2地点で、湖底付近の溶存酸素濃度が湖水1リットルあたり10・1〜10・3ミリグラムを記録し、表層の濃度とほぼ同じ値となったことから判断した。
全循環の大幅な遅れは2007年以来。同年の秋から冬にかけて同湖盆の湖底が低酸素化し、イサザやスジエビの大量死が見つかっている。同センター環境監視部門の田中明夫部門長は「台風なども湖中に大きな影響を与えるので、全循環の遅れと低酸素化の関係は明らかになっていないが、今後も継続して調べたい」と話した。

やっと一巡り。

食えない理由

ウナギ完全養殖の実験成功から6年、いまだ市場に出回らない理由とは
(THE PAGE 3月9日(水)11時42分)


ニホンウナギの稚魚であるシラスウナギの不漁が続いている。いまから6年前の2010年4月には、独立行政法人水産総合研究センター」が、ウナギの完全養殖の実験に成功したと発表。「天然資源に依存しないウナギの生産に道を開く」のだと、この成果を「悲願」とまで表現していたのだが、いまだ完全養殖ウナギは市場に出回っていない。実用化に向けた研究は今、どこまで進んでいるのだろうか?
◆時間がかかるウナギ完全養殖の研究
「完全養殖」とは、(1)受精卵を人工的にふ化、(2)仔魚(しぎょ)から稚魚のシラスウナギを経て、成魚のウナギに育成、(3)オスとメスから精子と卵を採取して人工授精、(4)ふたたび受精卵を人工的にふ化、というサイクルを人工飼育で完結させることを意味する。
現在のウナギ養殖は、天然のシラスウナギを捕獲して養殖場で育てているので、完全養殖ではない。したがって、シラスウナギの漁獲量が減ってしまうと、市場に十分な量を供給できず、ウナギの価格も高くなってしまう。
同センターの資料によると、日本ではかつて年間漁獲量が200トンを超える年もあったシラスウナギだが、1960年代以降より減少、1987年〜2011年は5〜27トンで推移している。もし、完全養殖が実現すれば、不安定な天然資源に頼ることなく、いまよりも養殖ウナギを安定的かつ安価に供給できる可能性がある。6年前、ウナギ完全養殖の研究成果が注目された背景には、そうした期待感があった。
しかし現在、完全養殖のウナギはまだ市場にでまわっていない。一体、どうなっているのだろうか。同センター増養殖研究所資源生産部の桑田博部長は、こう説明する。「6年も経っているのに何をしているのか、とお叱りを受けることもあるが、ウナギの研究は結果が得られるまで時間がかかるのです」。
同研究所では、シラスウナギを大量に育てる技術の研究に取り組んでいるが、桑田部長によると、ウナギは卵から稚魚に育つまで半年から1年半もかかる。ちなみに、すでに養殖技術が確立されているマダイだと、卵のふ化から大体1〜2か月で稚魚に育つという。
また、ウナギの仔魚(しぎょ:稚魚の前の段階)の飼育にはマダイ養殖などで培った従来技術があまり応用できず、生態にあわせた独自の養殖技術を新たに確立しなければならない。たとえば、ウナギの仔魚を育てる場合は水槽を毎日交換しなければならないが、マダイやヒラメは3週間くらい水槽を変えなくても済む。ウナギの仔魚は水槽内に発生する細菌に弱いためだ。
エサも、水槽の底に置くなど独特の手法で与えている。桑田部長は「近海魚の養殖は、卵さえとれればマダイとほぼ同じだが、ウナギについては世界のどこにも前例はなくまったく未知の世界」と説明。実用化の時期は、現時点ではわからないという。
◆大量のシラスウナギを育てる技術の確立へ
ウナギ完全養殖の実用化に向けて、同研究所では(1)受精卵、(2)エサ、(3)飼育方法、の3テーマの研究を通じて、シラスウナギを大量に育てる技術の確立に取り組む。「まずはコストがかかろうがとにかく大量に作り、次にコストダウンを図る、というステップで研究を進める方針」と桑田部長。
このうち、(1)では、大人のウナギを成熟させて、良質な受精卵を産ませるためのホルモン剤を開発。これにより、卵のふ化率が従来に比べて向上したという。
(2)のエサは現在、絶滅の恐れも指摘されるアブラツノザメの卵を使っていることから、鶏卵や魚粉を用いた代替エサの開発に着手。実際にシラスウナギが食べ、生育するところまでは到達しており、今後はアブラツノザメの卵を使ったエサと同程度の生残率・成長率の実現をめざす。
(3)では、容量10リットルという小規模な水槽を使って水温やエサの与え方などといった基本的な飼育技術の確立に取り組むほか、大量飼育の実現に向けて同1000リットルの大型水槽の開発も進めている。
桑田部長は「前例がない分野は、研究でトライアルアンドエラーを重ねても成果に結び付くのはほんの一部。技術開発とはそういうものだが、それでも、いつかは必ずわれわれの手でウナギの完全養殖を実現したい」と力を込める。
天然シラスウナギの漁獲量が回復するか否かは、現時点で不透明な状況にある。実用化が当分先になろうとも、ウナギ完全養殖の研究動向には、今後も熱い視線と期待が注がれることだろう。

まだ技術的に完成していないのか。